ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
131 / 895
第二章

2-14

しおりを挟む
 朝食後の片付けも終わり――
 
 テーブルを囲み一息つく、ラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ターナップ、ニプルの五人。
 お茶をすする「まったりモード」の中、
 
『さぁてぇ』

  ターナップが、のそりと立ち上がり、
「俺ぁ、そろそろ行きあすぁ」
「お勤め、ですの?」
「そんな所でさぁあ、ドロプの姉さん。信者が待ってるんで」
 笑みを残してダイニングから出て行こうとすると、
「なぁター坊ぅ、この村に本屋は無いのかぁ?」
 まるで昔馴染みなニプルの物言いに、

「オイ、ちょっと待てぇ」

 苦笑のターナップ。
「俺ぁ、オマエより年上なんだがぁ」
  呆れ笑いで苦言を呈したが、
「細かいことを気にすんなよぉター坊ぉ、底が知れるよぉ」
「オメェは気にしろ」
  困惑笑いですかさずツッコミもしたが、彼女はどこ吹く風で、
「家から本を持って来忘れちまってさぁ~」
「俺の話を聞いちゃいねぇ」
 言うだけ無駄の虚脱を感じる中、
 
『『『読書ぉお?!』』』

  驚愕したのはラディッシュ、ドロプウォート、パストリスの三人。
  彼女の風貌、言動からは、決して結びつかない趣味なダケに。

  自ら話を切り出しておいての、三人の意外そうな反応に、
「う、ウチが読書好きで、な、何が悪いのさぁ!」
 ニプルが照れ臭そうに憤慨すると、ドロプウォートが戸惑いを露わに、
「あっ、「暗殺術の指南書」ぉとかぁ、でぇすのぉ?」
 パストリスも動揺を隠せず、
「たっ、食べ物のぉが、「画集」ぅとかぁでぇすぅ?」
 ラディッシュも何か言おうとしたが、怒られそうだったので口にしかけた言葉を呑むと、
 
「オマエ達が、ウチを「どう言う目で見てたか」よぉ~く分かったさ」

 訝し気なジト目を返すニプル。
 
 しかしすぐさま、困惑顔したドロプウォート達を小馬鹿にした笑みで見下ろし、
「まぁ「お子ちゃま」なオマエ達には、良さが分からない部類の本だろぅけどねぇ~」
「「「「?」」」」
 疑問形の四人を前に、ニプルはドヤ顔で、
 
「「大人の恋愛小説」ってヤツさぁ」

 真っ先に反応したのは「むっつりパストリス」。
 
『おっ、大人な恋愛小説ぅう!』

 鼻息荒く、脳内に「良からぬ妄想(十八禁)」を描きながら、
 
「すっ、スゴイでぇす!!!」

 何が「スゴイ」なのかは分からなかったが、凄いと言われたニプルも、
 
「だろぅ?」

 自慢げな笑みを見せた。
 しかし、
(本当は「乙女な恋愛小説(※白馬に乗った王子様的な内容)」なんだけど……)
 後ろめたさも感じていた。
 その場の勢いで嘘をついてしまった以上に「好きなジャンルを(若干)偽った」のが、愛読書たちに対する「裏切り行為」に思えて。
 するとここで、
 
『ワタクシを差し置いて「愛読書が恋愛小説」などと聞き捨てなりませんわ!』

 強い意志を持った眼差しで一歩前にドンと歩み出たのは、ドロプウォート。
 その言動から、
 
『!』

 とある事実に気付くニプルウォート。
 
 向けられたライバル的眼差しに、
「へぇ~ウチと同類だったとは意外だねぇ~」
 より強い「意志を持った眼差し」で以て跳ね返すと、返されたドロプウォートも負けじと、
「貴方の「荒い言動」を見ていれば、大した作家先生を贔屓にしていると思えませんでぇすわ♪」
「ほぉ~言ってくれるじゃない……ウチがァ崇敬する先生をつかまえてぇ!」

 互いに引き下がる訳にはいかない。
 
 引き下がる事、それすなわち「自身の推し作家の負けを認める」と同意であったから。
「「!」」
 毅然と対峙する二人。推し作家の名前を胸に。
 
 得も言われぬ緊張感が漂う中、
(だ、大丈夫なのでぇすぅ?!)
(と、取っ組み合いになったりしないよねぇ?!)
 ハラハラしながら見守るラディッシュとパストリス。
 
 すると女子二人は、
((ッ!))
 何かを以心伝心、声を揃えて、
 
『『マツムシソウ先生ぇ!』』

「「・・・・・・へ?」」
 キョトン顔のラディッシュとパストリス。
 何が起きたのか理解出ない。

 そんな二人を尻目に、
『『…………』』
 無言で睨み合ったドロプウォートとニプルウォートは、
 
 ガシリッ!
 
 熱く、そして固い握手を交わした。
 
 それは二人の関係が「同類」から、「同志」に変わった瞬間であった。
 
 恋愛脳女子二人の茶番劇を見せつけられ、
「なぁ、俺ぁもぅ行って良いスかぁ~?」
 呆れ交じりのターナップ。
「ソレっぽい店の場所は紙に書いといたスから、俺はもぅ行くっスよぉ」
 テーブルの上にメモ紙を一枚残すと辟易顔で部屋から出て行き、置かれたメモ紙をおもむろに取り上げたニプルは、
 
「神(作家)の創りたもぅ経典(小説)と出会い(買い)に、行くか「同志ドロプ」よ!」

 両目を星の様に輝かせ、
 
「信者(ファン)として無論ですわ「同志ニプル」よ!」

 正気を疑うような物言いで、女子二人は部屋から出て行った。
 
 日頃の彼女たちからは、想像も出来ない変わり様に、
「「…………」」
 しばし呆気にとられる二人であったが、
「ぼ、ボク、心配だから付き添ってくるでぇすぅ」
 苦笑するパストリスに、
「う、うん、お願い。僕は、まだ家事が残ってるから」
 困惑笑いを返すラディッシュであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

処理中です...