ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第二章

2-23

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 しかし占い師の男は、彼ら、彼女らの戸惑いなどお構いなしに、
「ラディだけじゃなくて、キミ達にも強くなってもらわないと困るんだよねぇ、天世人の同行者、守護者としてぇさぁ」
 五人が離れ離れになる事の無い「お墨付き」を、「天世人から直々」に貰えた形ではあったが、嬉しい反面、
「しかし、俺には村での「司祭の務め」が……」
「ウチも陛下から賜った「任」が……」
「私も四大として、世情が落ち着くまで国を離れる訳には……」
 するとパストリスだけポッと顔を赤らめ、
「ぼ、ボクはぁ、そのぉ、ラディさんさえ良ければ全然……」
「え?!」
 突然の同行の申し出に慄くラディッシュと、
 
(((!)))

 それぞれの意味合いの「嫉妬の目」を向ける女子二人+男子一人。
 五人の想いが交錯し、混沌とする中、
 
『あぁ~もぅウルサイねぇ~』

 占い師の男は辟易口調で、
 
「ぼくぁ天世人なんだよぉ、個人の都合なんて関係なく、これは「確定事項」なんだよぉ」

(((((!)))))

 横柄な言動と「彼が不在であった期間」が、脳内で結びつくラディッシュ達。
 ターナップは得心がいった笑みを浮かべ、
「そうか、そう言う事かよぉ。村に居なかった間に「関係各所に根回しをしてた」って、そう言う訳かよぉ。ガラにもねぇ事をするじゃねぇかぁ♪」
 占い師の男の意外な気遣いに、ドロプウォート達も感心していると、
 
「何が?」

「「「「「へ?」」」」」

「え?」

「「え」じゃねぇよぉ。五人揃って各国を回れるように手配を、」
「ナンパの修行してたダケだけど???」
「「「「「な、ナンパ……」」」」」
 思わぬ答えに絶句する五人。
 
 言葉を失う五人を前に男は、
 
『(失った)自信を取り戻す旅をしてたんだよぉーーーっ!』

 突然の逆ギレ、
 
「この村の「女の子」達はキミのせいで「イケメンに耐性」が出来てお茶に誘っても見向きもしてくれない! イケメンとしての自信を喪失しちゃったんだよぉ! だから自信を取り戻そうと他の村や町を巡ってぇ!」

「「「「「…………」」」」」

 ドロプウォート、パストリス、ターナップ、ニプルの四人は無言でサングラスを装着。
 未装着のラディッシュの耳元に、
 
『『『『『ラミィが』』』』』
「ラミィがぁあぁ!?」

 ラディッシュ固有スキル【イケメンスマイルフラッシュ】発動。
 すかさずドロプウォートは光輝くラディッシュの笑顔を「占い男」に強制照射し、
 
「い、いやぁああっぁぁああぁヤメテェ~「新しい扉」を開いちゃうぅぅううぅぅぅ!」
 悶絶。
 
 光が収まると、
 
『本当に「新しい扉」を開いちゃったらどうしてくれるんだぁい!』

 憤慨する男に、
「「「「チッ」」」」
 意地悪く舌打ちするドロプウォートたち。
 ラディッシュだけが、何が起きたか分からず、
「?」
 キョトン顔。

 そんな中、ドロプウォートはサングラスを外しながら、
「まぁ、冗談はさて置きですわぁ」
(本当に冗談?)
 占い師の「疑惑の視線」を尻目に、真剣な眼差しで、
「先の「地世の導師との戦い」の折り、我が国エルブは、隣国からの侵攻の可能性があったと聞きました。その様な中にあっては国を離れる訳には……」
(ラディッシュの下を一旦離れ、気持ちの整理をつける為にも、丁度よい機会と理由ですわ……)
 秘めた思いを抱えていると、自称「天世人」の占い師の男は、そんな事かと言わんばかりのヤレヤレ笑いで、
 
「ちょっとみんな、ぼくぅについて来てぇ」

「「「「「…………」」」」」

 仕方なく後に続く五人。
 
 ゴネられると余計に面倒と思い後に続いたのだが、そんな渋々の五人を教会の外に連れ立ち、何事かと見守る前で、
 
≪我がチカラァ! 天世のチカラを以て我は訴える!≫

 突如、真剣な眼差しと共に、その身から強烈な白き輝きを放ち、
 
「「「「「ッ!!!」」」」」

 その輝きの強さはラミウム以上。
 
「こっ、これはどう言う事ですのぉおぉ!」
 慄くドロプウォート達を尻目に、その髪は、瞳は、彼女を彷彿とさせる薄紫色へと変わり、
 
≪我が名はハクサァン! 『天啓』ぇえぇーーーッ!≫

 大きく叫ぶと、曇り空の幾つもの切れ間から斜光が地上に降り注ぐ「薄明光線」が。
 俗に「天使の梯子」や「天使の階段」などと呼ばれる、今にも天使が舞い降りて来そうな神々しい光景が繰り広げられた。
 
 中世の人々が、天孫降臨を思わせる光景を目の当たりに慄いていた時、古代ギリシア風の神殿を思わせる、とある白亜の宮殿の中で、
 
『何事じゃ!』
『我らの許可なく、誰が「天啓」を発動させたのじゃ!』

 右往左往しながら喚く、彼らと同じ「髪の色と瞳」を持った白いローブ姿の年配者集団に、
「ハクサン様です!」
 同様の着こなしをした若い一人が声を上げると、
 
「またしてぇも、あの若造かぁ!」
「元老院をナメくさりおってぇ!」
「今に覚えておれぇ!」

 腹立たし気に歯ぎしりした。
 
 高貴な身分と思われる何者か達が激昂するさ中、中世では「目も眩む白き輝き」に包まれたハクサン(占い師の男)が、
 
≪聞けぇ、中世の民よ! 我はハクサン! 百人の天世人なりぃ!≫

 その声は、中世の世界中に響き渡り、当然、フルールやアルブル、カルニヴァにも。
 
 全ての中世の人々が恐れ戦き、彼の声に耳を傾ける。

≪我は命ず! 同志ラミウムが命を賭して守った国エルブを侵略せしこと、断じて許さぬと! 誓いをたがえしその国は「地から消える」と知れぇ!≫

『何だとォ!』

 ドガァ!
 
 激昂して玉座の肘掛けを殴りつけたのは、カルニヴァ国の若き王。
 
 折を見て攻め入る準備を着々と進めていた彼は、堪え切れぬ怒りを以て、
 
「変わり者であったラミウム様ならともかく! 百人の天世人が、こうも中世の一国に肩入れするなど聞いた事がなァい!」

 ギリギリと奥歯を噛み鳴らし、
 
「じぃ! エルブを落とす「良き口実」は無いのかァ! 攻め入る好機はそうは無いのだぞォ!」

 すると「じぃ」と呼ばれた燕尾服の男性は、血気に逸る「若き王」の心を鎮めようと思ってか、対極の如くに静々と、恭しく頭を下げ、
「誠に残念ながら新王よ。此度は戦わずして「我々の負け」にございます」
「クッ! 何故だァ! ラミウム様といい何故に天世様方は、それほどエルブに味方する!」
「恐れ乍ら、ハクサン様は「お隠れになられたラミウム様」と、縁が深いと伺った事がございます」

「……天世人なれど「人」と言う事かァ」

「左様にございます」
「く……」
 うなだれる新王に再び恭しく頭を下げると、カルニヴァは下を向いたまま、
「なぁ、じぃ……」
「何で御座いましょう」
「俺達は……いつまで「エルブの盾」でいねぇといけねぇんだ……」
「…………」
 男性は一瞬黙った後、
「申し訳御座いません……心中、お察し致します……」
 三度、頭を下げるばかりであった。


 徐々に白き輝きを弱めて行く百人の天世人ハクサン――

 日常の曇りに戻って行く空。
 やがて世界が何事も無かったかのような元に戻ると、茶髪とブラウンアイに戻ったハクサンは額にかいてもいない汗を拭う仕草を見せながら、

「これで問題無いでしょう?」

 普通レベルのイケメンスマイルで振り返った。
 唖然とした様子を見せるターナップ。
「は、ハクサンって、まさか、あの……」
 言葉少なに呟き、ドロプウォート達も驚きを隠せない様子の中、ハクサンはさも自慢げなドヤ顔で、

『そうだよぉ♪ ぼくぁあの「序列一位の天世人ハクサン」様さぁ♪』

 言ってのけたが、返って来たリアクションは驚嘆や歓喜からは程遠い、

『『『『なるほど……』』』』

 冷めた得心。
 ラディッシュだけが「冷めきった反応」の意味が分からず、
「え? 何? どう言う事ぉ?」
 狼狽する中、

『リアクション薄っうぅ! って言うか「なるほど」って何ソレぇ!』

 憤慨するハクサンは、
「ぼくぁ序列一位の、」
 重ねて「気高い身分である事」を主張しようとしたが、彼は「百人の天世人」でありながら「とある二つ名」で有名らしく、

『『『『女たらしの序列一位』』』』

 四人揃っての「軽蔑」と「納得」のジト目。
「ちょ、ヒドくなぁい! ぼくぅの扱いヒドくなぁい! ぼくぁ天世の序列一位だよぉ!」
 半泣きで訴えるハクサンの姿に、苦笑のラディッシュは、
(もしかして「百人の天世人」って……変な人の集まり?)
 疑惑を抱いてしまうのであった。

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