ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第二章

2-27

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 数時間後の森の中――

 純粋無垢な容姿であった無数の少女たちは見る影もなく、鬼の顔して周囲を見回し、
「チッ! 逃げやがったかァ!」
「次に会ったらぜってぇ、コロォスゥ!」
 不愉快そうに毒づくと、手にした包丁で素振りしながら各々の家がある村や町へ雲散霧消、ぞろぞろと帰って行った。
 
 静けさを取り戻す森。

 小鳥がさえずり、小動物たちが茂みの中から顔を出し始めると、巨大な倒木の陰で、
 
『『『『『『助かったぁあぁぁぁっぁぁあぁぁ……』』』』』』

 大きな安堵のため息を吐くラディッシュ達。
 すると、互いの無事を喜び合う間もなくターナップが、
「オメェのせいでコッチまでヤバかったじゃねぇか! この「種まきヤロー」がァ!」
 並び座る残念イケメンに食ってかかると、
「いやぁ~失った自信を取り戻すために頑張り過ぎちゃってねぇ~~~」
 先程までの「死にそうな形相」が嘘のようにケラケラ笑い、
「あっ、でも心配しないでね。天法でも使わない限り、いくらやっても天世人と中世人の間に子供は出来ないからぁ♪」

「「…………」」

 呆れて声が出ないラディッシュとターナップ。

 そして、
(((最低(ですわぁ・だぁ・でぇすぅ)……)))
 女子三人から向けられる、汚らわしいモノでも見るジト目。
 相手が一応「序列一位の百人の天世人」なだけに、口にこそ出さなかったが。

 しかしハクサンは、向けられた五つの嫌悪の眼差しに、
「う~ん、この扱われ方にも「新たな悦び」を覚えそうになって来たヨ♪」
 ドコ吹く風で、
「「「「「…………」」」」」
 もはやツッコム言葉さえ思いつかないラディッシュ達。
 
 そんな中、ニプルがため息交じり、
「それよかさぁ……」
 前後左右同じに見える森を見回し、
「これからどぅすんのさぁ? 向かう予定だった村には(コイツのせいで)行けなくなっちまったしさぁ」
「行こうとしてた村の先にも、村はあるけど?」
 すかさずハクサンが声を上げたが、

(((((…………)))))
 
 嫌な予感しかない五人。
 とは言え、ターナップの村で貰った食料などの消耗品は無限ではなく、何処かで調達しなければフルールに着く事など叶わない。
 故に辟易顔のドロプウォートは仕方なく、
「でしたら「行く筈であった村」は、このまま森を使って迂回して避け、一先ず「その村」を目指しましょう……多少時間は掛かりますが、私が道案内いたしますわ……」
「と、言う事は、今日は「この辺り」で野営だね♪」
「でぇすでぇすねぇ♪」
 笑顔で頷き合うラディッシュとパストリス。
 ドロプウォートも荷物を降ろし始め、そんな三人に、
「「「?」」」
 キョトン顔のターナップ、ニプル、ハクサン。

 ターナップは木々の隙間から覗く、未だ陽の高い青空を見上げ、
「ドロプの姉さん、その……陽はまだ高ぇのに、もぅ野営を決め込むんスかぁい?」
 同じ疑問を持ったニプルも、
「目的地を伸ばすならさぁ、もっと距離を稼いでおかないとさぁ」
 ハクサンは、
「そっ、そうだよ。もっと進んでおかないと、女の子たちに見つかっちゃうかも知れないよ」
 別の意味の不安を口にしたが、ドロプウォートの持つ「ナビの技術」を知らない三人の疑問はもっともで、ラディッシュとパストリスは荷物を降ろしながら、
「ドロプさんは、どんなに深い森の中でも、星の位置で方角を知る事が出来るんだ♪」
「闇雲に森の中を逃げたからぁ現在地も分からないでぇすぅ♪」
 実績があるだけに、二人が自信を以て説明すると、
「さっすが、ドロプの姉さん!」
 感心しきりのターナップに、
「せっ、誓約者候補生として学んだ知識を用いたダケですわぁ」
 ドロプウォートが謙遜しつつも、照れ臭そうにすると、
「自称の「首席誓約者」って肩書きは、伊達じゃないって訳ねぇ~」
ニプルがからかい、
「自称だけ余分でぇすわぁ!」
笑いが起こった。
すると、

『そもぉそもぉ、何で歩き難い森の中を行かなきゃいけないのさぁ?』

 反対の声を上げたのはハクサン。

「「「「「…………」」」」」
 黙る五人に、
「街道を進めば楽じゃないかぁ。星を読む必要もないし、キミ達は「お馬鹿」だねぇ~」
 呆れ笑うと、爆発寸前の引きつり笑いのターナップが、
「街道を歩けないのは、いったい「誰のせい」だと思ってやがるぅ?」
「へ?」
 キョトン顔のハクサンに、ニプルも笑顔を引きつらせながら、
「待ち伏せしてる女子たちに「刺されて本望」ってんなら、幾らでも放り出してやるけどねぇ?」
(!)
 流石に「自分のせいだ」と気付いたハクサンが、
「あは、あは、あはははは♪ ぼくぉ為ぇかぁ♪」
 浅い思慮を笑って誤魔化すと、ドロプウォートが、

『貴方の為などでは決してありませんわぁ』

 静かな口調の中にも鋭い眼光を差し向け、
「貴方の「被害」に遭った女子たちを「加害者」にしない為の措置ですわ」
 殺意すら感じる眼差しに、
「……反省してますぅ」
 小さくなるハクサン。
 見る影もないが、一応、彼は天世の天世人すら崇める「百人の天世人の最高位」である。
 
 自業自得の四面楚歌とは言え、憐れに思ったラディッシュが話の矛先を変えようと、
「そ、そこで僕から提案があるんだけど」
「「「「「?」」」」」
 集まる視線の中、
「こ、この先も、フルール国に着くまで何があるか分からないし、タープさんの村でもらった保存食を温存する為にも、できる限り狩りをして進んだ方が良いと思うんだ。その時に余った食材も加工したりして、保存食の足しにしたりして」
「良いでぇすわねぇ♪」
「良いと思うでぇすぅ♪」
「イイっスねぇ♪」
「イイじゃないさぁ♪」
 好反応を見せる四人は笑顔ながらも、

『『『『(この先の村でも)何が起こるか分からないし』』』』

 とある意図(怒り)を以て、ハクサンを見た。
 助け舟を出したつもりが助け舟にならず、
(やっぱり矛先はそっちに行っちゃうんだぁ)
 苦笑するラディッシュ。

 そんな中、ドロプウォートが人員配置を決めようと、
「では「狩り」は……」
 五人を見回し、
 一番ラディッシュ:両手でバツ印。
「貴方、まだ動物たちの血がダメですの?」
「ご、ごめんね、ドロプさぁん……」
 二番ターナップ:両手でバツ印。
「すまねぇっス、ドロプの姉さん。汚染獣は構わねぇんスが、宗教上の理由で普通の動物を、俺が殺生する訳には……」
「では……」
 三番ハクサンは、
「まぁ貴方には聞かずともイイですわ」
 プイッと横向き、
 
『ヒドくなぁい?! ねぇぼくぉ扱いヒドくなぁい??!』

 逆ギレのハクサン。
 放置すると余計に面倒と思った彼女は、ため息交じりの辟易顔して、
「でしたら貴方は「狩り」が出来ますのぉ?」

「え?」

 態度が急変し、
「無理無理無理無理ぃ! だって中世の動物の血には「地世」のチカラが混じってるんだよぉ!」

『ならぁ、何故に「問い直させた」のでぇすぅ?!』

 冷徹な視線に、
「ひぃ! ゴメンナサァイ!」
 ハクサンはターナップの背に隠れ、その姿に一同が困惑笑いを浮かべる中、
(なんかドロプさんて、ハクさんにはやたらと厳しいような……)
 ラディッシュが不思議に思っていると、怒れるドロプウォートの口元が何やらブツブツと。
(?)
 そっと聞き耳を立てて見ると、
(まったく……純真で、無垢で、あんなに可愛い女の子たちを、二人も三人も四人も五人も……なんて羨ま……いえ、なんてケシカランですの……)
 彼女の抱いた「怒り」とは、多分に私怨の籠もったモノであった。
(まぁ、そんな気はしたけど……)
 苦笑していると、

『それにしてもさぁ』

 ニプルが呆れ顔して男子三人の顔を見回し、
「ウチの男どもはぁ「狩り」も出来ないとはさぁ」

「「「!」」」

 男子としてのプライドを刺激された三人。
「ぼっ、僕は調理が出来るよぉ!」
「おっ、俺だって竈を作ったり、寝床を作ったり、チカラ仕事ならぁ!」
「ぼくぁ!」
 ハクサンも勢い任せに何か反論しようとしたが、
「ぼくぁ……」
 何も思い浮かばず、口から出た答えは、
「こ、子作りなら……」

『ッ!』

 ニプルが鬼の形相で見下ろすと、
「あっ、味見係とかぁ?!」
 すかさずフォローを入れたつもが余計に怒りを買い、

『浄化してない料理を食わせてぇ街道沿いに放り投げてやろぅかぁ? あぁ!』

「すびばせん(済みません)役立たずでぇ!」
 残念イケメンは隅っこで小さくなった。

 一先ずドロプウォートが決めたパーティーの形としては、ドロプウォートとニプルが狩りに行って血抜きと加工までを終わらせ、パストリスとラディッシュは野草の採取と調理を担当し、ターナップは竈などの力仕事全般を受け持ち、ハクサンは…………荷物番。聖具も無しにどう戦うのか「見もの」ではあるが。
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