ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第二章

2-43

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 花咲き誇るフルール国にも雪が降り始め――

『最後の追い込みでゴザルよォ!』
 
 赤ジャージ姿で頭にねじり鉢巻き、■眼鏡を掛けたBL作家オトコエシ先生バージョンのフルールが発破をかけ、
「「「「はぁ~~~いぃ……」」」」
 お疲れ気味の声を返したのは、

『ミナさぁん、返事が小さいでゴジャルよぉ!』

 アシスタント筆頭の証である「青ジャージ」を纏う「元気いっぱいパストリス」と相反する、緑ジャージ姿のラディッシュ、ドロプウォート、ターナップ、ニプル。
 五人は、女帝フルール直々の「天法教育」を受けられる代わりに、同人誌活動の時間が減る彼女のアシスタントを務める事になっていたのであった。
 加えてパストリスには喜ばしい事も。
彼女が「妖人」であるのを知るフルールが、事情を未だ知らないターナップとニプルに話を伏せた上で、
≪天法を鍛えれば、より強固な地法を使えるようになる≫
 背中を後押し、個別で修業を付けてくれたのである。

 同人誌作成活動と天法修行に明け暮れる日々は瞬く間に過ぎ、やがて数週間が経過した頃、

『では皆さま、よろしくお願いします』

 謁見の間で、変わらぬ事務的口調で丁重に頭を下げるのはリブロン。
 そんな彼女の前には、

「「「「「…………」」」」」

 困惑顔を浮かべたラディッシュ達の姿が。
 各々複数の段ボールを抱え、
「あ、あのぉ……リブロンさん。朝一に呼び出されて来てみれば……これはいったい?」
 戸惑うラディッシュの問いに対し、彼女は毅然と、
「即売会で使う横断幕や旗、文具などです」

(((((?!)))))

「え、えぇと……それは、つまり、僕たちに「売り子をやって来い」とぉ?」
 遠回しに「本気で言っているのか」尋ねたが、彼女は寸分ブレる事なく、

「端的に申しまして「そう言う事」です」

 言い切った。
 その、あまりの堂々たる様に、
(((((…………)))))
 ツッコミを忘れる五人。

 真っ先に我に返ったラディッシュが「豊富なツッコミどころ」の中から、最も差し障りの無い、無難な一つをチョイスし、
「ぼ、僕たち、城下町に出て良いんですか?」
 城から出る事さえ、固く禁じられていたが故に恐る恐る尋ねると、彼女はラディッシュの眼差しに、ほんのり顔を赤くしながらも毅然と、
「最もの懸念材料であった、あの「女たらし」……コホン、失礼。ハクサン様は、」
 言葉遣いを、皮肉を込めて言い直し、
「行方をくらましましたし、ラディッシュ様の御業(女性を主に魅了するスキル)も、心が落ち着いている時には発動しないようですので」
「み、みわざ???」
 受けた相手の性癖を変えてしまうほどの、ある意味最強(最悪)スキルでありながら、無自覚ゆえのキョトン顔に、

((((((て、天然って怖い……))))))

 背筋が冷えるターナップ達。それと同時に、ハクサンに対する新たな怒りも。
 町に出られなかった最大の理由は「彼の方にあった」と今更ながらに知り、

『『『『ハクサンめぇ!』』』』

 両目に憤怒の炎を宿す、ドロプウォート、パストリス、ターナップ、そしてニプルであった。
 そしてラディッシュは、禁じられていた理由の一部が「無自覚なれど自身にもある」と改めて知り、同行する事で掛けてしまう「迷惑可能性」を危惧し、
「あ、あの……」
「何でしょう?」
「リブロンさんは、(監視役として)来てくれないんですか……?」
 好意を寄せるイケメン男子が見せる「困惑と不安」が入り混じった視線に、

(はぅ……)

 内心で、乙女心をキュンとさせるリブロン。
 毅然を見せつつも、先程より顔の赤みを強め、思わず、
「き、気持ちは行きたいのですが……」
 本音が漏れ出た途端、慌てて誤魔化しの咳払いを一つし、

「へ、陛下の側近である私が「陛下の下」を離れる訳にはいきませぇん」

 平然を装い、
「か、彼女が居れば問題ないでしょう」
 チラリとニプルを見るなり、
「分かっているとは思いますが、」
 注意を促そうとすると、

「わぁ~てるわぁ~てるさぁ~。手順は耳にタコが出来るほど聞かされたからねぇ」

 辟易顔で「もぅ聞きたくない」と言わんばかりに手を振ったが、そんな彼女にリブロンは注意を重ねるが如く、
「この即売会は「中世じゅうの同志」が集まる、言わば「国家の威信をかけた催し」なのです。例の団体の活動が活発化していると言う話も聞きますし、警備は厳にしてありますが、内側からの監視の任も、」

「わぁ~てるってばぁ!」

 延々続きそうな小言を強制的に打ち切り、

「では陛下、行って参ります!」

 頭を下げた先には、
「…………」
 真っ白に燃え尽き、横長玉座にしな垂れかかるフルールの姿が。

 即売会に向け全力を出し切り、精も根も尽き果て、そのあまりの「枯れ果てぶり」に、思わず苦笑するラディッシュ達。

 五人は、声なく、チカラ無く、手を振るだけのフルールに見送られ城を出ると、ニプルの先導で即売会が行われる城下町に、初めて足を踏み入れた。
 正確には二度目であるが、一度目は「ハクサンが原因」で、鉄格子付きの荷馬車に揺られて通過しただけなのでノーカン、ノーカウントである。
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