ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-3

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 聞き慣れない言葉を耳にしたドロプウォートは刃を収めず、

『それは何ですのォ!』

 凄みを増して問うと、刃を向けられたままの彼らは、
「そっ、それは……」
 口籠り、言い逃れの言葉を探したが、ハクサンは「うろたえる同胞たちの姿」を愉快そうに「フフン♪」と一笑いし、
「まったく酷い話だよねぇ~純然たる中世の人は、天世人に逆らえない仕込みを、生まれながらにされているんだからねぇ~」
「何ですってぇ!」
 驚きを隠せないドロプウォート達を前に、ヘラヘラと笑いながら、
「それを発動させるのが「天威」なのさぁ~」
「「「「「「…………」」」」」」
 押し黙ったまま跪くスパイダマグ達を、陰りを持った笑みで見下ろし、

「でも残念だったねぇ~スパイダぁ」

 小馬鹿にニヤリと小さく笑い、
「そぅ言う空威張りはさ、彼女たちを「良く見てから」するべきだったよねぇ~」

(なに?!)

 皮肉を込めた指摘を受けた彼は、素顔を隠した一枚布の下から苛立ちを以てドロプウォートの容姿を見直し、

「そっ、その髪ぃに眼の色ぉ! きっ、貴様は「先祖返り」かァ!」

 侮蔑呼称を交えた驚愕の声に、
「ッ!」
 不快を滲ませるドロプウォート。
 斬り掛かりそうな鋭い視線だけスパイダマグに飛ばすと、向けられた彼は逆上するが如く、

「我ら天世を護る生体兵器のキサマがァ、いったいどちらに刃を向けているかァアァ!」

 更なる蔑称に、

『ドロプの姉さんがぁ何だとぉ!』

 ターナップが「天世の司祭の身」でありながら即ギレした。
 彼女が「生体兵器」と呼ばれる由縁を知るだけに。
 相手が天世人であろうと仲間を悪し様に言われては黙っておれず、怒りで怒髪天。
(この肉ダルマ野郎ォが、言うに事を欠いて姐さんをォオォォ!)
 殴り掛かろうとした刹那、
 
『『『『『!?』』』』』
『『『『『『!?』』』』』』

 居合わせた全員が、一瞬にして動きを停止した。
 いや、正確には動かす事が出来なくなった。
 
 その場を瞬時に支配した、得も言われぬ圧倒的存在感に。

 物音一つ、指先一つ動かさせば、即座に命を持って行かれそうな緊迫感の中、それはゆっくり口を開き始めた。

≪僕の事は、どぅ悪く言ったって構わない≫

 それは、ラディッシュ。
 うつむき加減の、見えない表情からこぼれる声は単に仄暗いだけでなく、敵対する者に「恐怖」を抱かせる程の「圧(あつ)」があり、
(なっ、何なのだ、この男は……単なる「数合わせ勇者の生き残り」ではなかったのか?!)
 かつて感じた事の無い、寒気を覚えるスパイダマグ達。
 それは彼らが初めて知る「畏怖」であった。

 元老院の実働部隊である彼らは、中世で起きる荒事処理に度々あたってはいたが、その都度、比較にならない力量差と、天世人が持つ天威を笠に、反抗の意のある中世人を全てチカラでねじ伏せて来た。
 しかし今、彼らの前に立っているのは「天威が効かない」どころか、圧倒的力量をも兼ね備えた者たち。
 借りていた「虎の威」に、何の意味も持たない「未経験の現実」を前に狼狽する中、ニヤつくハクサンが追い打ちをかけるように、
「キミ達ぃ~彼(ラディッシュ)に対する言動には、十分注意するんだねぇ~。特に、序列一位のぼくぁが見ている前ではさぁ~♪」
「「「「「「?」」」」」」

 素顔は見えずとも、キョトン顔であるのが分かる白装束の一団。
 先の発言に見え隠れしていたように、異世界勇者を下に見ていたのだが、そんな彼らを前にハクサンは、

「彼は、もぅ異世界勇者じゃないんだよぉ?」
「「「「「「ッ!」」」」」」

 言い回しこそ「小馬鹿にした物」であったが、彼らはその言動から全てを悟った。
 ≪彼(ラディッシュ)が、ラミウムのチカラの全てを譲渡された者である事を≫
 信じ難い事実を突き付けられたスパイダマグ達は乱心したかの様に、
 
「一位様ぁあぁ! この様な事実をぉ何故に元老院の方々にぃいぃ!?」

 報告しないのか問い詰めようとすると、ハクサンは動じた様子も見せずに平然と、さも当たり前の事のように、

「元老院は「タダの御意見番」であって、天世の行く末を決めるのは、現役世代の「百人の天世人」だよ?」
「「「「「「なっ!!!?」」」」」」

 衝撃を受ける親衛隊の面々。
 それは、天世において実質的、絶対的な権力を有する「元老院への宣戦布告」とも取れる発言であり、スパイダマグは目の前に立つ人物が「百人の天世人の序列一位ハクサンである」と理解しながら思わず、

「しょ……正気の沙汰とは……」

 暴言を口にしかけ、
「!」
 慌てて両手で塞いだが、ハクサンは責める様子も見せずにニヤリと笑い、
「正気の沙汰とは思えないってぇ?」
(!)
 その笑みは、背筋に冷たいものを感じさせる物であった。
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