ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-4

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 跪いたままのスパイダマグは、ハクサンの中に「底の見えない闇」を見た気がし、
(いったい、この方は……いったい何を考えていらっしゃるのだ……)
 息を呑んだが、元老院に至誠な彼は、
(然るに今は!)
 思い新たに、
 
「でしたら尚の事ぉ! 其方の御人(ラディッシュ)と共に元老院へ御出でいただかねば!」

 しかしハクサンはいつも通りの「普通レベルのイケメンスマイル」で、
「無用だよぉ♪」
「ですが地世の影響を!」
「その為に、ぼくぁ同行して「聖具集め」に回っているだろぅ?」
「「「「「「…………」」」」」」
 黙るしかない白装束の一団。

 彼の言っている事は、表の意味で全て正論であったから。
 裏の意味で、元老院への忖度を欠いている物ではあるが。

 反撃の一手さえなく無言で跪く彼らを前に、ハクサンは特段勝ち誇った様子もなく、

「じゃあ、ぼくぁは行くねぇ。御歴歴によろしくね」

 先陣切って歩き始め、
「それじゃ、みんな行こうかぁ♪」
 未だ剣を構えたままであったドロプウォートも、
「…………」
 残心しつつ、中型マッチョの首元から静かに刃を引いたが、

『まだ終わってないよぉ!』

 ラディッシュが声を荒げた。
 日頃は争いを好まぬ彼が、怒りを以てスパイダマグを見下ろし、

「謝って!」
「「「「「「?」」」」」」

 理解出来ていない様子に苛立ちを露わ、

「何を謝るべきかも分からないの!」

 それでも彼らは「百人の天世人候補様に怒られている」といった認識らしく、何を謝れば良いのか戸惑いを見せ合っていると、ラディッシュの怒りは堰を切り、

『彼女は「兵器」なんかじゃなァい!』
「「「「「「!」」」」」」

 気弱そうに見えた少年の「怒り処」にマッチョ集団は驚きを隠せず、「兵器と言われる自分」を受け入れてしまっていた感が少なからずあったドロプウォートが、
(ラディ……)
 感動し、心を震わせ、彼の熱い言葉にパストリス達も笑顔を見せ合うと、マッチョの一人が逆ギレするが如くに、

「事実を言って何が悪いぃ!」

 それは「自分たちに否がある」と知った上でなお、隊長を庇っての発言であるのは明らかであった。
 しかし、その様な気遣いは押し付けでしかなく、それを受け入れてしまっては、武人として、リーダーとして、恥の上塗りにしかならないのをスパイダマグも重々承知し、

「構わぬ」
「!」

 彼の二の句を制すると、跪いたままドロプウォートに向き直り、
「不穏当な発言、大変失礼した。改めて発言を撤回させていただく」
 深々と頭を下げると、後ろに控える隊員たちも苦渋を以て頭を下げ、ラディッシュはその姿を黙って見ていたが、当のドロプウォートはよほど照れ臭かったのか、

「もっ、もぅ結構ですわぁ! 十分ですわぁ!」

 羞恥の赤面顔で、
「いっ、行きましょうでぇすでぇすわぁ!」
 促されたラディッシュも、気持ちを切り替える様に小さく息を吐き、
「うん!」
 笑顔で頷き、顔を上げたスパイダマグ達に、

「僕は元老院って人達の所に行く気も無いし、「百人の天世人」になる気も無いから、新しい人を募集して」

 笑顔をだけ残し、ドロプウォート達と共に去って行った。
 次第に遠ざかって行く六つの背を、立ち上がり、静かに見つめるスパイダマグ。

 そんな彼の下に、隊員の一人が歩み寄り、
「百人の天世人は、百人のみ。チカラの受け渡しでしかなれない事を、彼は知らないのでしょうか?」
「…………」
 返らぬ返事に、
 
「隊長?」

 不思議に思い、見上げた隊員は恐怖で顔を引きつらせた。
 一枚布の隙間から見えた彼の顔は、堪えた憤怒で、血の様に赤黒く染まっていたのであった。
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