ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-30

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 やがて彼女はゆっくりと、現王カルニヴァの「異母の弟ビフィーダ」について語り始めた。

「あの方の本意は……「この国の玉座」などではないんだ……」

「「「「「え?」」」」」

 玉座を狙っていると、以前に語ったのはプルプレア。
 一致しない話に、
(((((?)))))
 意味が分からず思いを巡らせていると、
「王となられたカルニヴァ様に……子供の頃の様に、振り向いて欲しいだけなんだ……」
 突然の「代理告白」に、

(((((えぇ?!)))))

 驚愕の表情で惑うラディッシュ達。

 同人誌作業で「イレギュラーな恋愛」に染まった「五人中の四人」は、
((((そっ、それはぁどっちの意味ぃ?!!!))))
 純粋な「家族愛」なのか、それとも。
 頭の中は混沌と化していた。

 しかし「五人中の一人」だけ、明確に違った反応を示す人物が。

 それは、ニプルウォート。

 思い悩む一人(プルプレア)と、悩める四人(ラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ターナップ)を尻目に、話が、
≪人目(ひともく)BL科(びーえるか)ブラコン属(ぶらこんぞく)≫
 ともなれば黙っておられず、両目をキラキラと輝かせ、

『それでぇ王様の方は、どぅなのさぁ!』

 彼女の邪な問い掛けに、プルプレアは純粋に、
「それは……」
 答え方に悩み、ニプルの嗜好を把握しているラディッシュ達は、

((((また悪い病気(癖)が……))))

 苦笑を浮かべ、そんな中、プルプレアはうつむき加減で、
「気付いてはおられる……おられるが……どう応えれば良いか分からず……」
 悲しさ、悔しさ、憂慮、様々な感情が入り混じった物言いで、
「御二人とも……不器用なのだ……」
(((((それって両想いぃ!?)))))
 そう考えると、ラディッシュ達はとんでもない事実に思い至った。

(((((もしかしてぇこの国の人達と(僕たち・私たち・ボクたち・俺らぁ、ウチたち)は、盛大な痴話ゲンカに巻き込まれてるだけぇ?!!!))))))

 慄いたが、ニプルの頭の中では、

(「受け」が二人ぃ!?)

 いつまでも始まらない、恋愛模様(※自分勝手な妄想)。
(ッ!!!)
 過度な苛立ちを(身勝手に)覚え、

『まどろっこしぃねぇ!』

 突如憤慨し、他国の王族相手の話でありながら、

「んなぁモン! どっちかがサッサと掘っ、」
『『『『うわぁあぁっぁあぁ!』』』』

 とんでもない事を口走ろうとした彼女の口を、ラディッシュ達は慌てて塞ぎ、
「&%$#*+$%&%ッ!」
 それでも何か喚き散らすニプルに、焦り笑いのターナップが、

『オメェは、ちょっとは自重しろぉおぉ!』

 堪らず入れたツッコミに、傍らで話に置いてけぼりのプルプレアは、
「?」
 キョトン顔。
 ラディッシュ、ドロプウォート、パストリスの三人も、もがくニプルをターナップと懸命に押さえながら、
「なっ、何でもなぁいからぁ♪」
「そっ、そぅ! 何でもなぁいのでぇすわぁ♪」
「でぇすでぇす! 何でもなぁいのでぇす♪」
 必死の愛想笑い。

 そしてラディッシュ達は改めて知る。
 現王カルニヴァ、弟ビフィーダ、側近プルプレアの三人は、やはり単なる幼馴染みではなく、微妙な距離の三角関係であるのを。
 しかし彼女の口振りから想像するに、現王カルニヴァとビフィーダは両想い。
 言い方は悪いが、そこにプルプレアが横槍を入れている構図となっていた。

 皮肉な話で、二人(現王カルニヴァとビフィーダ)の関係がこじれればこじれるほど、彼女の「わんちゃん成功率」は格段に上がるのだが、プルプレアが「その様な漁夫の利」で喜ぶ人物でないのは、短い付き合いながらもラディッシュ達の知る所。
「「「「…………」」」」
 ラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ターナップが、友情と愛情の狭間で苦悩する彼女の心中をおもんぱかっていると、その間隙を縫って、

『ちょーっと待てぇえぇぇ!』

 ニプルが、口を押える四つの手を強引に振りほどき、
「王様はぁ本命を二人も持つぅ、二刀流の、ガチの二股って事なのかぁ!?」
「…………」
(何言ってるんだ、この人……)
 色々な意味で「答えあぐねるプルプレア」と、大切な仲間(ニプル)の重症に、
「「「「…………」」」」
((((この人、どうしよう……))))
 制止する言葉が見い出せないラディッシュ達。

 そんな中、真顔のニプルは、
『それでイイのかぁプレアぁあぁ!』
 両肩をガシリと掴んで声を上げ、「彼女なりの仲間想い」から出た問い掛けではあったが、
「いや、待てぇよぉ!」
 自問自答する様に、
「それだとウチが考える「兄×弟」の黄金比率がぁ?!」
 激しく思い悩み、友情と嗜好の狭間で、

『ウチはプレアに、どぅなって欲しいんだぁあぁっぁあぁ!』

 当人(プルプレア)を置き去りに咆哮し、
「「「「「…………」」」」」
 掛ける言葉(※薬)が、見つけられない仲間たち。

 恋愛話と縁遠い、元イケテナイ男子でもあるラディッシュは理解が及ばず、
(恋って、ムズカシイなぁ……)
 しみじみ思うのであった。



 色々起きた朝食も終わり――

 再び移動を開始するラディッシュ達。
 伐採された後の切り株があり、間伐材が手に入ったと言う事は、人の生活圏が近いのを意味し、ラディッシュはまだ見ぬ村への思いを馳せ、
(この国の人達は排他的、よそ者を嫌うって、プレアさんは言ってたけど……)
 その土地土地でしか出会えない光景に、食せない料理たちに、

(見てみたかったなぁ~食べて見たかったなぁ~)

 未練たらたらな顔をしていると、並び歩くドロプウォートがおもむろに、
「少々残念ですわねぇ」
「え?」
「こうして「新たな土地に足を踏み入れる」と言うのに、森の中を歩くしかないと言うのがですわぁ」
「!?」
(あれ? 僕、口に出してないよねぇ?!)
 奇しくも同じ思いで居たのを知り、思わずクスリと小さく笑うと、

「な、なぁんでぇすの、ラディ? その笑いはぁ」

 心外そうな顔にラディッシュは、
「ごめぇんごめぇん♪」
 笑顔で笑いながら、
「ドロプさんが僕と同じ事を、同じ瞬間に考えてたのが、なんか可笑しくてぇ♪」
「!?」
 ボッと赤くなるドロプウォート。
 同じ思いを、同じタイミングに抱いた事を嬉しく思いつつ、照れ臭くもあり、

「そっ、その様な事で笑われるなんてぇ、何か納得いきませんでぇすわぁ!」

 ソッポを向いて憤慨をアピール。
 するとそこには、
「「…………」」
 物言いたげなジト目で見つめる、パストリスとニプルの顔が。

 その二つの顔は「抜け駆けするな」と言わんばかりであり、
「な、なななな何でぇすぅのぉ二人でぇ!」
 照れ隠しのツッコミに、
「別ぅにぃ~」
「でぇすでぇすぅにぃ~」
 二人は不服そうな声を返し、
(?)
 女子三人のやり取りの、意味が分からない「元否モテ男子ラディッシュ」と、意味が分かって「あはは」と苦笑するターナップ。
 恋愛レベルに関しては、彼の方が若干上になったようである。

 そんな中、五人を先導していたプルプレアが、

『みんな止まれぇ!』

 唐突に緊張感を纏った声を上げて歩みを止め、森を抜けた先を凝視、
「あ……アレは……」
 木々の間に見える、幾本も立ち昇る「黒炎」を指差し、

「!?」

 ラディッシュは「まさか」と思いつつ、「予想が外れれば良い」との思いから、
「あ、あっちの方って……」
 言葉尻をあえて濁したが、その思いは、顔色を真っ青に、唇を震わせる彼女の言葉によって無残に打ち砕かれる。

「む、村のある方角……だ……」

(((((ッ!)))))

 ラディッシュ達は驚愕の表情と共に、一斉に走り出した。
 迂回する筈であった村に向かって。
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