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第三章
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森から駆け出るラディッシュ達――
町に等しい規模の村を一望できる「街道の峠」に出た六人の目に飛び込んで来た物、それは、
「「「「「「ッ!!!」」」」」」
眼を覆うばかり惨劇であった。
アチラこちらの家々から激しい火柱が上がる中、悲鳴を上げ、必死に逃げ惑うあまたの人々と、その様な人々を容赦なく追い立てまわし命を奪う、例の鎧と盾を装備した無数の人狼、そして複数のミノタウロスとサイクロプス。
そればかりか幾本も立ち昇る火柱は、互いに引き寄せ合い、融合し合い、巨大な炎の竜巻である「火災旋風」となり、猛る炎龍が如く人々を吸い込み燃やし尽くし、そこにあったのは、正に地獄絵図。
警備隊と思しき屈強な兵士たちも応戦するが、天法、天技を無効化する防具を纏った人狼たちにより攻撃は阻まれ、返り討ちに遭い、次々命を落とし、圧倒的、絶望的惨状を目の当たりにしたラディッシュは恐怖のあまり、息を呑んだ。
しかし今は、一分、一秒、尻込みしている場合ではない。
その間にも村の人々は命を落とし、元々手強いにも関わらず、更に武装強化された合成獣と渡り合えるのは、ラディッシュ達だけなのだから。
(に、逃げ腰になってる場合じゃない!)
引けた心を奮い立たせると、
≪世は理不尽……理不尽の全てを斬り払え……≫
(ッ!)
ラディッシュの内に湧き上がり、心を闇へと導く、あの文言が。
(まただ!)
抗う様に胸を押さえ、
(黙れぇ!)
言い聞かせると、それを雑念として振り払うが如く、
『みんな行こう!』
険しい表情で頷く仲間たちと共に、死地に向かって走り出した。
一方その頃――
扉を「バァン」と激しく跳ね開け、
『ヤベェぞ陛下ァ!』
血相を変えて駆け込んで来たのは、カルニヴァ国国王直属騎士団団長四人衆の一人「クルシュ」。
しかし、
「なぁんだぁクルシュ、騒々しい」
相談役のじぃやと、玉座で打ち合わせ中であった現王カルニヴァは、彼が騒がしいのはいつもの事と捉え、冗談交じりの辟易顔で、
「また「ルサンデュ(※もう一人の団長)」との賭けにでも負、」
『冗談言ってる場合じゃねぇ!』
二の句を激しい口調で遮り、
「実験棟の倉庫が襲われて、試験的実戦配備予定だった「例の盾と鎧」が、ごっそり持ち出されてたんだ!」
「何だと! 幾つだ!」
「ハッキリとは把握出来てないらしいが、二百式らし!」
「に、二百ッ!? 一個中隊分だとぉ! その辺んで出来る戦(いくさ)の二回分じゃねぇかァ!」
(都市部の諜報活動を恐れて過疎地に実験棟を作ったのが、裏目に出やがったかぁ!)
苦々しく思うカルニヴァ王であったが、
「何故に今日まで気付けなかった!」
責める物言いに、
「(実験棟の)連中の話だと倉庫の扉は強引にこじ開けられた訳じゃなく、破損が無かったから気付けなかったらしい! 気付けたのも、部屋に小動物が入り込むのを偶然目撃してと言っていた!」
「なっ!?」
それは「とある事実」を物語る話であった。
(実験棟の倉庫の扉は「王家の血筋の者」にしか開けられない……それはつまり……)
ある人物の顔が脳裏をよぎると、再び謁見の間の扉が激しく跳ね開き、
『大変です陛下ァ!』
飛び込んで来たのは、もう一人の騎士団団長ヴェズィクローザ。
冷静沈着を信条とする彼が血相を変えて取り乱し、
「南の村の教会から水晶球(※伝達装置の様な物)を使っての救援要請です! 武装した合成獣たちの襲撃を受けているとこ事ォ!」
(((武装した合成獣!)))
タイミング的に最悪の事態を想像するカルニヴァ王、じぃや、そして団長クルシュ。
(アルブリソにそそのかされているとは言え、そこまでするのかァ!?)
カルニヴァ王は「思い浮かべた人物」への対応の甘さを今更ながらに猛省しつつ、団長二人に、
『クルシュ! ヴェズィ! 城下で今すぐ動ける騎士を片っ端からかき集め、攻城戦級の装備を持たせて直ちに出陣しろォ!』
『『直ちにィ!』』
謁見の間から飛び出して行く二人の背を見送る事も無く、
『トムフォルは居るかァ!』
「ハッ。ココにィ!」
物陰から姿を現した騎士に、
「国内全ての町や村に常駐する全ての兵に戒厳令をォ! それと!」
奥歯をギリッと噛み鳴らし、
『草の根わけても「ビフィーダ」を探し出し、我の前に連れ出せぇ!』
怒髪冠を衝くが如き怒りの表情に、
「御意ィ! 急ぎ部下に指示を、」
早急なる復唱しようとすると、
『その必要はない』
続く言葉は遮られ、
「「「!」」」
振り返った三人の視線の先に立っていたのは「ビフィーダ」本人であった。
罰せられる覚悟を以て登城したのか、落ち着き払った様子さえ見える彼を、カルニヴァ王は玉座から鬼の形相で見下ろし睨み、
『逃げも隠れもせず顔を出した、その「腹の座りダケ」は褒めてやるッ!』
気弱なラディッシュが向けられていたら卒倒しそうな「鬼気迫る気迫」を向けたが、その様相とは裏腹に、怒れる目の奥には「極刑が不可避である彼」に対する、微かな悲しみが滲んでいた。
町に等しい規模の村を一望できる「街道の峠」に出た六人の目に飛び込んで来た物、それは、
「「「「「「ッ!!!」」」」」」
眼を覆うばかり惨劇であった。
アチラこちらの家々から激しい火柱が上がる中、悲鳴を上げ、必死に逃げ惑うあまたの人々と、その様な人々を容赦なく追い立てまわし命を奪う、例の鎧と盾を装備した無数の人狼、そして複数のミノタウロスとサイクロプス。
そればかりか幾本も立ち昇る火柱は、互いに引き寄せ合い、融合し合い、巨大な炎の竜巻である「火災旋風」となり、猛る炎龍が如く人々を吸い込み燃やし尽くし、そこにあったのは、正に地獄絵図。
警備隊と思しき屈強な兵士たちも応戦するが、天法、天技を無効化する防具を纏った人狼たちにより攻撃は阻まれ、返り討ちに遭い、次々命を落とし、圧倒的、絶望的惨状を目の当たりにしたラディッシュは恐怖のあまり、息を呑んだ。
しかし今は、一分、一秒、尻込みしている場合ではない。
その間にも村の人々は命を落とし、元々手強いにも関わらず、更に武装強化された合成獣と渡り合えるのは、ラディッシュ達だけなのだから。
(に、逃げ腰になってる場合じゃない!)
引けた心を奮い立たせると、
≪世は理不尽……理不尽の全てを斬り払え……≫
(ッ!)
ラディッシュの内に湧き上がり、心を闇へと導く、あの文言が。
(まただ!)
抗う様に胸を押さえ、
(黙れぇ!)
言い聞かせると、それを雑念として振り払うが如く、
『みんな行こう!』
険しい表情で頷く仲間たちと共に、死地に向かって走り出した。
一方その頃――
扉を「バァン」と激しく跳ね開け、
『ヤベェぞ陛下ァ!』
血相を変えて駆け込んで来たのは、カルニヴァ国国王直属騎士団団長四人衆の一人「クルシュ」。
しかし、
「なぁんだぁクルシュ、騒々しい」
相談役のじぃやと、玉座で打ち合わせ中であった現王カルニヴァは、彼が騒がしいのはいつもの事と捉え、冗談交じりの辟易顔で、
「また「ルサンデュ(※もう一人の団長)」との賭けにでも負、」
『冗談言ってる場合じゃねぇ!』
二の句を激しい口調で遮り、
「実験棟の倉庫が襲われて、試験的実戦配備予定だった「例の盾と鎧」が、ごっそり持ち出されてたんだ!」
「何だと! 幾つだ!」
「ハッキリとは把握出来てないらしいが、二百式らし!」
「に、二百ッ!? 一個中隊分だとぉ! その辺んで出来る戦(いくさ)の二回分じゃねぇかァ!」
(都市部の諜報活動を恐れて過疎地に実験棟を作ったのが、裏目に出やがったかぁ!)
苦々しく思うカルニヴァ王であったが、
「何故に今日まで気付けなかった!」
責める物言いに、
「(実験棟の)連中の話だと倉庫の扉は強引にこじ開けられた訳じゃなく、破損が無かったから気付けなかったらしい! 気付けたのも、部屋に小動物が入り込むのを偶然目撃してと言っていた!」
「なっ!?」
それは「とある事実」を物語る話であった。
(実験棟の倉庫の扉は「王家の血筋の者」にしか開けられない……それはつまり……)
ある人物の顔が脳裏をよぎると、再び謁見の間の扉が激しく跳ね開き、
『大変です陛下ァ!』
飛び込んで来たのは、もう一人の騎士団団長ヴェズィクローザ。
冷静沈着を信条とする彼が血相を変えて取り乱し、
「南の村の教会から水晶球(※伝達装置の様な物)を使っての救援要請です! 武装した合成獣たちの襲撃を受けているとこ事ォ!」
(((武装した合成獣!)))
タイミング的に最悪の事態を想像するカルニヴァ王、じぃや、そして団長クルシュ。
(アルブリソにそそのかされているとは言え、そこまでするのかァ!?)
カルニヴァ王は「思い浮かべた人物」への対応の甘さを今更ながらに猛省しつつ、団長二人に、
『クルシュ! ヴェズィ! 城下で今すぐ動ける騎士を片っ端からかき集め、攻城戦級の装備を持たせて直ちに出陣しろォ!』
『『直ちにィ!』』
謁見の間から飛び出して行く二人の背を見送る事も無く、
『トムフォルは居るかァ!』
「ハッ。ココにィ!」
物陰から姿を現した騎士に、
「国内全ての町や村に常駐する全ての兵に戒厳令をォ! それと!」
奥歯をギリッと噛み鳴らし、
『草の根わけても「ビフィーダ」を探し出し、我の前に連れ出せぇ!』
怒髪冠を衝くが如き怒りの表情に、
「御意ィ! 急ぎ部下に指示を、」
早急なる復唱しようとすると、
『その必要はない』
続く言葉は遮られ、
「「「!」」」
振り返った三人の視線の先に立っていたのは「ビフィーダ」本人であった。
罰せられる覚悟を以て登城したのか、落ち着き払った様子さえ見える彼を、カルニヴァ王は玉座から鬼の形相で見下ろし睨み、
『逃げも隠れもせず顔を出した、その「腹の座りダケ」は褒めてやるッ!』
気弱なラディッシュが向けられていたら卒倒しそうな「鬼気迫る気迫」を向けたが、その様相とは裏腹に、怒れる目の奥には「極刑が不可避である彼」に対する、微かな悲しみが滲んでいた。
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