ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

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 謁見の間まで同行して来た、男児か女児か性別不明な容姿を持つ幼児は、美しい薄緑色の瞳に涙をいっぱい湛えながら、悔し気にアルブリソを睨み、その年端もいかぬ子が放ったとは思えない殺気の鋭さに、

「ひぃ!」

 怯む、大国の宰相アルブリソ。
(なっ、何なのだぁこのガキはぁ!?)
 気圧され数歩後退ると、ハクサンは「今、思い出した」かのように、少々わざとらしくも大袈裟に、
「そぅそぅ言い忘れてたけどねぇ。チィックウィードちゃぁんは、カデュフィーユ団長の双子だからぁ♪」

「はっ?!」

 言われた意味が理解出来ず、鳩が豆鉄砲を食ったような顔。
 この子こそ、ハクサンが天法を用い、命の炎が消えかけたキーメとスプライツの魂を重ねて生まれた幼子である。
 しかしそれと知らぬアルブリソは意味不明なあまり、
「な……双子はコニフェールに命じて殺し……」
 自らが主犯であるのを暴露しかけ、

「!」

 慌てて自身の口を塞いだが、時すでに遅し。

(((((((ッ!)))))))

 ラディッシュ達は怒りを新た、ハクサンは悪党(アルブリソ)の凋落ぶりに呆れ笑い三行半(みくだりはん)を突き付けるが如く、
「こんな人はもぅ要らないから、煮るなり焼くなり、チィックちゃんの好きにしてイイよぉん♪」
 ケラケラと笑った。
 相手が「討つべき仇敵」とは言え、命の重さを軽んじた物言いに、
(ハクサン!)
 ドロプウォートがキレようかと言う刹那、

『ハクサァアァアァアァンッ!』

 先に、怒りの咆哮を上げたのはラディッシュ。
「色々と説明してもらう前にィ!」
「?」

『こんな小さな子に「人殺し」を平然と勧めるなァアァアァァ!』

 向けた怒り顔は、悲し気であったが、
「心外だなぁ~~~♪」
 ハクサンはへらへら笑い、
「育ての親の「仇討ちをさせてあげる」って言ってるんだよ? ラディは敵に対しても、変わらずお優しいねぇ~。それにさ、その子の生い立ち(キーメとスプライツ時代)は、治療の後で本人の口から聞いたでしょ? その子は純真、無垢な普通の子じゃない♪」
「…………」
「任務に従い、いったい今まで何人をその手に掛けて、」
 今さら「一人も二人も変わらない」とでも言いたげな素振りに、

『望んでした事ではありませんですわァ!』

 ドロプウォートが話に割って入ったが、

『強制された事なら? 年端がいかなければ? 何をやっても許されるってぇ?!』

 皮肉を多分に含んだ笑みに、二人は、
「許されるなんて、僕は思ってないよ……」
「私も、ですわ……」
 悲痛な眼差しを、しがみつ幼子に落とし、
「だから……」
「ですから……」
 会話を何処まで理解出来ているのか、見上げる小さなエメラルドグリーンの涙目を真っ直ぐ見据え、
「どんな行いが償いになるのか……」
「共に歩み……」
 穏やかな微笑みを揃え、

「「共に考えようと思っています(わ)」」

 その思いが伝わってか、
「!」
 大泣きしそうになった顔を二人の足に埋め、懸命に涙を堪えるチィックウィード。
 二人の足にしがみ付いたまま、パストリスを、ニプルを、ターナップを、カドウィードを見回し、

「!?」

 皆の表情から、想いが一つであるのを幼いながらに悟ると、
「う、ううっ、」
 小さい嗚咽の後、

『うわぁああぁぁぁぁああぁ~~~ん!』

 ついに大声で、堰を切ったように堪らず泣き出した。
 同年代の幼子たちと、何ら変わらぬ泣き声で。
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