ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第四章

4-35

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 ラディッシュとドロプウォートの足にしがみ付き泣きじゃくる小さな背を、温かく見守るパストリス達。

 その一方で心を通わせ合う仲間たちの姿に、
「…………」
 微かな苛立ちを覚えるハクサン。

 感じていたのは「疎外感」に端を発する「嫉妬」であったが、とあるプライドが邪魔をしてそれと気付かぬ彼は、仄暗い感情に支配されたまま、傍らで怯え固まるアルブリソに、
「良かったじゃないか、キミ。命が、少しは長らえる事になったようで、さぁ♪」
 チラリと視線を送ると、

『ハクさぁん!』
「?」

 ラディッシュの強めの呼び声が。
「何だい、ラディ?」
「説明は、して、貰えるんだよねぇ?!」
 強めなれど、窺う様な声色に、
(弱腰な所は変わらないねぇ~)
 ヤレヤレ笑いを浮かべながら、ことさらイケメン風スマイルを強調して前髪をたなびかせ、
「モチロンさぁ♪」
 爽やか口調で頷くと、溜を作って満を持し、

『ぼくぁ、この国の「王様」なのさぁ♪』
「「「「「「「なァつ?!」」」」」」」

 驚く仲間たち。
 彼は、その姿に満足げに、
「でも、正確に言うと「なっちゃった」かなぁ~」
 話題の中心に戻れた事に内心で悦びを感じながら、
「あぁ~と、誤解はしないで欲しいんだけどぉ、強引に玉座を奪ったりはしてないよぉ~」
 玉座の左傍らで突っ立ったまま、瞬き一つしない幼王アルブルの頬を突きながら、
「この子の精神がさぁ、王様と言う職責の重圧に耐え兼ねて壊れちゃってねぇ、世継ぎが居ないアルブルを他国から守るついでに、天世と戦う為にぃぼくぁ、」

『ちょっ、ちょっと待ってよぉハクさぁん!』
「ん?」

 サラッと放り込まれる爆弾発言にラディッシュ達は慌て、
「天世と戦う為って、何を言ってるのぉ!」
「貴方は何を言い出してますの!」
「でぇすでぇす!」
「何の話をしてんのさァ!」
「テメェ何をとち狂ってやがるゥ! ついに頭のネジが飛びやがったのかァ!」
「自分が何を言っているか分かっているのか、もとい、分かっているのぉ!」
 仲間たちからの一斉批判に、

「酷い言われようだなぁ~♪」

 ヘラっと笑うハクサンであったが、
「あのさぁ」
 大きなため息を一つ吐くと、
「キミ達も散々見て来たでしょ、天世の不遜をさ? 天世は熱心な信仰を要求するだけで、何も返してはくれない。例え多くの命が犠牲になろうともさぁ。そんな連中を相手に、いつまで「媚び」、いつまで「へつらう」気なのぉ?」
「「「「「「「…………」」」」」」」
 論破されたか如く、押し黙るラディッシュ達。

 何もしてくれなかった結果の惨状を、この世界の民ではないラディッシュでさえ、数多く目の当たりにし、募り始めていた不信のど真ん中を射抜かれ気がしたから。
 安易に反論する事が出来ない様子の仲間たち。
 その様子に、
(当然そう言う反応になるよねぇ? だって「事実」なんだからぁ♪)
 ハクサンは人知れずほくそ笑んだが、彼が次に語った「自慢げな一言」が、期せずして惑う七人の心を正気に戻した。

「その為の秘密兵器も、この地下で準備しているしねぇん♪」
(((((((ヘイキィ!?)))))))

 天世に対する蜂起が、口先だけで無いのを悟るラディッシュ達。
 再び流されるであろう多くの血を、これまでの惨事から連想し、

『沢山の人の命を奪う気なのぉ、ハクさぁん!』

 ラディッシュは責めるような物言いで身を乗り出したが、彼は半ば呆れたように、
「当然でしょ? だって戦争なんだよぉ?」
 そしてむしろ失望交じりに、

「だからこそ、ぼくぁ「天世の七草」に対抗する為にキミ達を集めて、」
(((((((え?!)))))))

「試練まで与えて、鍛えもしたんだよぉ?」
(((((((シレン!?)))))))

 平然とした問い掛けは、驚愕を隠せない七人を前に、
「お陰で強くなれたでしょ♪」
 彼の笑顔で締め括られ、
(((((((…………)))))))
 いったい何時から、何処から何処までが、彼の手による試練であったのか。
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