ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-6

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 特別扱いの新人に嫌がらせのつもりで、「研修先」としての受け入れを承諾した筈のキャシート・フィリィフォーム。

 しかし、その浅はかとしか言えない短慮は、ミトラを精神的に成長させ、密かに子供たちを守ろうと画策する彼の前で「思うままの実験」がやり辛くなり、自らの首を絞める結果となった。

 両者は事ある毎に意見を衝突。

 対立の構図は日増しに深まったそんな折、青天の霹靂が。
 A四サイズ程の紙を手に、
「そ、そんな……」
 わななくのは、ミトラ。

 そんな彼の姿を目にしたキャシート・フィリィフォームは「グシッシッシッシッ」と下卑た笑いを一つすると、
「軍上層部からの「直々の命」では、流石のチュウイも逆らえまぁい?」
 あえての疑問形の質問に、彼は苛立ちを以て睨んだが、キャシート・フィリィフォームは「日頃のうっぷん晴らし」とでも言わんばかりの余裕の笑みで、

「さぁどうするねぇ、チュウイ殿ぉ?」
「クッ!」

 堪え切れぬ怒りが、声となって短く漏れ出、
「こんな「無謀な作戦」に二人を推薦したのは、所長なのかァ!」
「さぁ~てぇ?」
 卑しい笑みを睨み付けたが、キャシート・フィリィフォームは変わらぬ余裕の半笑いで、

「口を慎みなさぁい、チュウイ」

 苦言を呈し、
「新人如きが、上層部が立てた作戦を「こんなモノ」呼ばわりして、タダで済むと思うのかねぇ~?」
(!)
 軍属の身、故に反論できず、悔し気に視線を落とすと彼は満足げに、
「まぁ心優しき吾が輩は「聞かなかった事」にしてやるがぁ、」
 皮肉を多分に含んだ前置きをしてから、
「この二体の使用を許可したのは吾が輩だが……逆に問うが中尉」
「…………」
「この作戦を成功させ、無事に帰還を果たせる可能性のある実験体二体が、他に居ると思うのかねぇ?」

(ッ!)

 即答の否定は出来なかった。
 キャシート・フィリィフォームが使用を許可した二人とは、厳しい訓練を受ける幼子たちの中にあって、歴戦の兵士並みの突出した戦闘センスを見せる双子であり、現時点においての成績順位、不動の一位と二位の二人であったから。

(他の子供たちを守る為に、二人を犠牲にするのか?!)

 幼い命の天秤に眉をひそめつつ、
(だからと言って上層部の意に逆らい異動させられたら、いったい誰があの子達を守ると言うんだ!)
 そのジレンマは苦悶に満ちた表情以上に、指令書を裂けんばかりに握り震える手からも窺え、ミトラは声を絞り出す様に、

(じ……自分も……了承……します……)

 返答に、勝ち誇った笑みを浮かべるキャシート・フィリィフォームであったが、優位に立ったダケでは飽き足らず、
「はぁ? 聞こえませんなぁチュウイ殿ぉ?!」
 底意地の悪い、嫌味なダメ押しで答えを迫ったが、自身の無力さに打ちひしがれるミトラは反骨を見せる事無く、
「…………」
 手の中でシワくちゃになった指令書を、机の上で整え直す様に伸ばし広げながら、
「……了承します……」

『グゥシッシッシッシィ!!!』

 満足気な下卑た高笑いを背に、彼は部屋から出て行った。
 机に残された指令書に書かれた作戦名、それは、

≪カデュフィーユ暗殺計画≫

 カリスマ的国王が病に急逝して国全体が浮足立つアルブル国の、精神的支柱で、国民的英雄である彼の暗殺計画は、それによって生じる混乱に乗じて攻め入ろうとする「国盗りの企て」の初手である。
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