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第五章
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眠り始めたチィックウィードを横目に、努めた真顔のスパイダマグは満を持し、
「彼は、古(いにしえ)の魔王軍との戦いの中で、肉体と魂に癒せぬ程の損傷を負った、元「百人の勇者の一人」なのです」
「「「「「「元勇者ぁ!?」」」」」」
「はい。天世と中世を守る為に戦い、そして深手を負い、戦う術の全て失った彼には、英霊として「穏やかな眠り」が約束されていたのです。しかし彼は戦友であり、重篤であった自身を中世にまで抱え、連れ帰ってくれたサジタリア殿の役に立ちたいと、眠りを拒み、再生不可能な傷を負った肉体を捨て、ペンギンの姿である千本刀として生きる道を選んだのです」
「「「「「「…………」」」」」」
「その様な千本刀殿をサーシアム殿は「罪人呼ばわり」したのですから、サジタリア殿の怒り様も、最もかと……」
ドロプウォートは今にも寝落ちしそうなチィックウィードを自身の膝の上に移し、胸で寝かせながら、声を抑え気味に、
「静かなれど激しい、あの怒りようも、それならば納得ですわ……」
ラディッシュも得心が行き、
(そう言う事か……)
小さく頷いたが、それと同時に新たな疑問も。
「それならサーシアムさんは、どうしてあそこまでしたんですか?」
「ラディ? それはどう言う意味ですの?」
「だってドロプ、「天世の七草」にまで選ばれるような人だよ? そんな人が無意に、他人のキズに塩を塗りこむ様な事は言わないと思うんだ」
(((((確かに!)))))
仲間たちも気付きを見せると、
「だからサーシアムさんにも、何か言い分があるんじゃないかと思って」
集まる視線にスパイダマグは一枚布で隠した素顔の下で、慎重に言葉を探している様子を窺わせながら、やがて何かしらの決意を感じさせる重々しい口調で、
「サーシアム殿は……「地世の七草グラン・ディフロイス」と同期の、元「百人の勇者の一人」なのです」
((((((え?))))))
ラディッシュは託された双刀の柄を握り締め、
「そ、それってグラン・ディフロイスさんも、元「百人の勇者」って言ってる様に聞こえるんですけど?!」
仲間たちも固唾を呑んで答えを待つ中、
「詳細は、自分には分かりません。関連資料は既に封印され、自分が親衛隊に入る前の話でもありますので……」
申し訳なさげに首を横に振って前置きした上で、
「当時の魔王討伐に際し、抜きんでた実力を発揮した一人だったと言う事くらいしか……」
((((((!))))))
まだ何か、事情を隠した「歯切れの悪い物言い」ではあったが、勇者側の人間が「魔王側に寝返った」と言う事実は、
「「「「「「…………」」」」」」
六人から言葉を奪うほど驚かせるに十分であった。
そしてラディッシュ達は理解する。
サーシアムの怒りが、嫉妬や妬みと言った、単純なマイナス感情から生じた物では無かった事を。
かつて同じ国の、同じ隊の仲間たち全てから疎まれた経験を持つニプルウォートは、両者の立ち位置が他人事と思えず、
(仲間を「裏切った方」と「裏切られた方」……どっちも、どんな気持ちなんだろうさ……ウチも、ラディとの出会いがあと少し遅かったら……)
闇に身をゆだねていたかも知れない自身を想像すると、今の仲間たちとの付き合いが楽しいが故に背筋が寒くなる思いがし、手元の湯のみに視線を落とした。
彼女がその様な思いに囚われていた傍ら、ラディッシュにはとある懸念が。
「スパイダマグさん」
「な、何でしょう?」
改まった口調に心で身構えたところに、
「「プエラリア」と「パトリニア」と言う名前に聞き覚えはありませんか」
「ッ!」
明らかな動揺を見せてしまうスパイダマグ。
その一方で、
(((((地世の七草の名前ぇ!?)))))
驚くドロプウォート達。
このタイミングで彼が名前を出したと言う事は、エルブ国を襲撃した主犯、実行犯の彼らもまた「元百人の勇者の一人」である可能性が高いとの考えに聞こえたから。
ラディッシュはいつもの弱腰からほど遠く、
「知っているなら教えて下さい。彼らは、いったい何者なんですか? そして……」
射貫く様な眼差しで、
「ラミィとの関係も」
(!)
内心で最も衝撃を受けたのは、ドロプウォート。
(ラディ……誓約まで交わし「誰より近づけた」と思っていましたのに……貴方の心の多くは未だ彼女に……)
真に囚われているか否かは、本人にしか分からない。
しかし久しく忘れていた嫉妬心が首を垂れ、人知れず、唇の端を小さく噛んだ。
そして六つの真顔に問われるスパイダマグは、
「…………」
一枚布で隠した素顔で静かに押し黙り、身動き一つもしない彼からでは、その心中を推し量ることは出来ない。
「彼は、古(いにしえ)の魔王軍との戦いの中で、肉体と魂に癒せぬ程の損傷を負った、元「百人の勇者の一人」なのです」
「「「「「「元勇者ぁ!?」」」」」」
「はい。天世と中世を守る為に戦い、そして深手を負い、戦う術の全て失った彼には、英霊として「穏やかな眠り」が約束されていたのです。しかし彼は戦友であり、重篤であった自身を中世にまで抱え、連れ帰ってくれたサジタリア殿の役に立ちたいと、眠りを拒み、再生不可能な傷を負った肉体を捨て、ペンギンの姿である千本刀として生きる道を選んだのです」
「「「「「「…………」」」」」」
「その様な千本刀殿をサーシアム殿は「罪人呼ばわり」したのですから、サジタリア殿の怒り様も、最もかと……」
ドロプウォートは今にも寝落ちしそうなチィックウィードを自身の膝の上に移し、胸で寝かせながら、声を抑え気味に、
「静かなれど激しい、あの怒りようも、それならば納得ですわ……」
ラディッシュも得心が行き、
(そう言う事か……)
小さく頷いたが、それと同時に新たな疑問も。
「それならサーシアムさんは、どうしてあそこまでしたんですか?」
「ラディ? それはどう言う意味ですの?」
「だってドロプ、「天世の七草」にまで選ばれるような人だよ? そんな人が無意に、他人のキズに塩を塗りこむ様な事は言わないと思うんだ」
(((((確かに!)))))
仲間たちも気付きを見せると、
「だからサーシアムさんにも、何か言い分があるんじゃないかと思って」
集まる視線にスパイダマグは一枚布で隠した素顔の下で、慎重に言葉を探している様子を窺わせながら、やがて何かしらの決意を感じさせる重々しい口調で、
「サーシアム殿は……「地世の七草グラン・ディフロイス」と同期の、元「百人の勇者の一人」なのです」
((((((え?))))))
ラディッシュは託された双刀の柄を握り締め、
「そ、それってグラン・ディフロイスさんも、元「百人の勇者」って言ってる様に聞こえるんですけど?!」
仲間たちも固唾を呑んで答えを待つ中、
「詳細は、自分には分かりません。関連資料は既に封印され、自分が親衛隊に入る前の話でもありますので……」
申し訳なさげに首を横に振って前置きした上で、
「当時の魔王討伐に際し、抜きんでた実力を発揮した一人だったと言う事くらいしか……」
((((((!))))))
まだ何か、事情を隠した「歯切れの悪い物言い」ではあったが、勇者側の人間が「魔王側に寝返った」と言う事実は、
「「「「「「…………」」」」」」
六人から言葉を奪うほど驚かせるに十分であった。
そしてラディッシュ達は理解する。
サーシアムの怒りが、嫉妬や妬みと言った、単純なマイナス感情から生じた物では無かった事を。
かつて同じ国の、同じ隊の仲間たち全てから疎まれた経験を持つニプルウォートは、両者の立ち位置が他人事と思えず、
(仲間を「裏切った方」と「裏切られた方」……どっちも、どんな気持ちなんだろうさ……ウチも、ラディとの出会いがあと少し遅かったら……)
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彼女がその様な思いに囚われていた傍ら、ラディッシュにはとある懸念が。
「スパイダマグさん」
「な、何でしょう?」
改まった口調に心で身構えたところに、
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明らかな動揺を見せてしまうスパイダマグ。
その一方で、
(((((地世の七草の名前ぇ!?)))))
驚くドロプウォート達。
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ラディッシュはいつもの弱腰からほど遠く、
「知っているなら教えて下さい。彼らは、いったい何者なんですか? そして……」
射貫く様な眼差しで、
「ラミィとの関係も」
(!)
内心で最も衝撃を受けたのは、ドロプウォート。
(ラディ……誓約まで交わし「誰より近づけた」と思っていましたのに……貴方の心の多くは未だ彼女に……)
真に囚われているか否かは、本人にしか分からない。
しかし久しく忘れていた嫉妬心が首を垂れ、人知れず、唇の端を小さく噛んだ。
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