ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-44

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 トマト系の甘酸っぱい香りを漂わせる料理を前に、七人は両手を合わせ、

「「「「「「「いたぁ~だきまぁ~すぅ♪」」」」」」」

 食べ始めようとしたが、
(((((((!)))))))
 鋭く刺さる熱視線が。

 視線の主(ヌシ)は、スパイダマグ。
「…………」
「「「「「「「…………」」」」」」」
 一応、自身の立場を考えてなのか、物陰から窺い見てはいたが、素顔を一枚布で隠しているにも関わらず、滲み出る「恨めしそう」なオーラ。

(イタ過ぎですわぁ……食べたい主張が……)

 ドロプウォート達が困惑を浮かべると、ラディッシュが無言でスッと立ち上がって彼の下に歩み寄り、
(!)
 スパイダマグは今更ながら身を乗り出してしまっていた自身に気付いて動揺露わ、

『ゆっ、勇者殿ぉ! こっ、これは決っして、そのっ、自分も「御相伴(おしょうばん)にあずかりたい」などと「さもしい事」を考えた訳でぇ無くぅ!』

 否定して見せたが体は正直で、

 ぐぅおううぅぅうぅ~~~うっ!

 腹の虫が快音を響かせてしまい、
「あぁ……」
 申し訳なさげに視線を落とし、

「お食事中に……誠に不快な思いを……」

 大きな体を小さく縮めると、ラディッシュが傍らに屈み、
「僕ので良かったら、二個あるから一つ食べませんかぁ?」
 優しい声に、
(え?)
 視線を上げると、そこには穏やかに微笑むラディッシュの顔が。
 感動のあまり、

「勇者殿ぉ……」

 神を前にしたかのような思いで顔を上げるスパイダマグ。
 しかし、

『『『『『『『『『『隊長ばかりズルイのでありまぁすっ!』』』』』』』』』』

 背後に、親衛隊隊員たちの不満顔が並び、
「おっ、オマエ達ぃいつからぁソコにぃ?!」
 驚き、慄いた。
 十名を超す部下たちが背後に立っていた事さえ気付けないほど、見入っていた「自身への呆れ」も交え。

 その一方でラディッシュは、
(僕の料理を目当てに、こんなに「沢山の人」ぉ♪)
 嬉しく思ったが、嬉しく思っているだけでは済まされない問題も。
 集まった人数に対して、分けられる料理の数が圧倒的に少なく、

(た、足りない……)

 どうしたものかと困惑笑い。
 すると、

『我らが勇者殿を困らせて何とする!』

 スパイダマグが部下たちを毅然とたしなめ、それは裏を返せば「諦めろ」と言っているのと同意であり、
「「「「「「「「「「隊長ぉおぉ~~~」」」」」」」」」」
 隊員たちは悲愴感漂う声を上げ、中には「隊長だけがぁ?」と、僻み交じりの声を上げる者も居たが、

『勇者殿!』

 彼は改めてラディッシュに向き直り、
「申し出は、ひっ非常に有難いのですが」
 前置きした上で、

「部下たちを差し置き、自分ばかりが御相伴にあずかる訳には参りませぬ」
「「「「「「「「「「隊長ぉおぉ!」」」」」」」」」」

 恭しく頭を下げる姿に隊員たちが感涙すると、ラディッシュは笑顔で、
『作れば良いんです♪』
「「「「「「「「「「え!?」」」」」」」」」」
「皆さんにも手伝ってもらいますよ♪」
「「「「「「「「「「勇者殿ぉおぉぉ!」」」」」」」」」」
 意図を理解した隊員たちは喜び、再び感涙したがスパイダマグは大慌て、

『それでは勇者殿方の御食事が冷めてしまいます!』

 丁寧に「御断り」を申し入れようとすると、未だ食事を進めず静観していたドロプウォート達が、

「ラディの料理は冷めても美味しいのですわぁ♪」
「おぅさ♪」
「でぇすでぇす、とっても美味しいのでぇす♪」
「そうですのよぉ。食べないと残りの人生、後悔致しましてですのよぉ♪」
「食わねぇ~と「損」するぜぇ~♪」
「ソン、なぉ♪ ソン、なぉ♪」

 煽り立て、
「勿体無い御言葉……」
 スパイダマグは部下たちと、深々頭を下げた。
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