ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-57

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 押さえつけた人物は、いつ、何処から現れたのか、忍者の「忍び装束」を思わせる黒い服を纏った数名。
 
『なっ、何なんだコイツ等ぁ! 放しやがれぇ!』

 もがくサーシアム。
 しかし顔まで隠した黒装束は「伸し掛かった重石」の如く微動だにせず、うち一人が無言のまま彼のポケットの中をまさぐり始め、

『てっ、テメェ! 人の懐を勝手に探ってんじゃねぇ!』

 凄んで見せたが、
「!」
 その者はポケットの中に「何か」を見つけるや否や取り出し、チョウカイやラディッシュ達、議場内にいる全ての人々に見えるように、それを高々と掲げて見せた。
 挙げられた指先に摘まれていた物、それはミネズが持っていたのと同じ地世のチカラを宿した「黒い粒」。

『あ、あれはもしやぁ?!』
『話に聞いた「黒い粒」ではないのか?!』
『七草の一人が、どう言う事なのだ?!』
『何故に、あ奴が持っておるのだ?!』

 どよめく議場内にサーシアムは即座に、

『そんな物ぉオレは知らねぇ! このオレを嵌(は)める気かぁ! オレは天世の七!』
『お黙りなさァい!』

 チョウカイは鋭く一喝し、
「お見苦しいですよ! 貴方の動向の全ては「監視させていた」と申しました!」
「ぐくっ……」
「天世を守る七草ともあろう者が、天世の安寧を脅かすなど言語道断ですわ!」
(くっ……)
「貴方の動機や背後関係については、後々じっくり時間をかけて聞かせていただきます」
 強く弾じると、
「さて皆様方には「初お披露目」となりますが」
 視線を元老院の一同に移し、

「この者達は「近衛(このえ)」。私が直轄する特殊部隊です。サーシアム殿の不穏を察し、密かな監視を命じていたのです」

 淑やかな彼女が公務の裏で、単独で、秘密裏に行っていた隠密活動の開示に、

(その様な者らが……)
(親衛隊を差し置いて、とな……)
(いったい、いつから存在したのだ……)
(しかしこれでは親衛隊の体面は「丸潰れ」なのではないのか……)

 温和な淑女が見せた「思いも寄らぬ一面」に、違和感を覚える御歴歴一同。
 しかし彼女は、元老院の実質的ナンバーツー。
 表立って違和感を表明する事など出来る筈も無く、

((((((((((…………))))))))))

 すると彼女は、いつもと変わらぬ「たおやか」でありつつ厳しい眼差しを、すっかり大人しくなったサーシアムに戻し、追及に手心を加える様子も無く、
「ですが、いくら貴方が「天世の七草の人」と言えど、手前勝手な独断で「天宮守護の任」から離れるなど不可能でしょう」
 不穏な前置きをした上で、うつむき黙する彼に、

『貴方に「任務放棄の免罪符」を与えたのは「誰」ですか?』
((((((((((?!))))))))))

 黒幕の存在の臭わせに三度ザワつく議場内と、接触して来た者の顔が脳裏をよぎるサーシアム。
 とは言え、その者の名を口にするとは、自らも罪を認めた自白に等しく、
「…………」
 更に深く黙り込むと、

『その者の名を、お語りなさい』

 穏やかな口調と相反する、心をえぐる様な重圧。
 静寂に包まれる議場内。
 誰もが固唾を呑んで「彼の答え」を待つ中、心中穏やかで居られなかったのは、コマクサ。

 表面上は一同と同様に、彼の口から発せられるであろう答えを待ちながらも、
(こっ、これは、もしやフリンジの「手引きの結果」ではあるまいなぁ!? だとすればワシの名がぁ?!)
 戦々恐々とした心持であった。
 そんな折、

『うわぁぁああぁっぁあぁっぁあぁぁ!!!』
((((((((((!!!?))))))))))

 悲鳴を上げて逃げ出したのは、ハイマツ。
 すかさずチョウカイが、

『捕えなさぁい!』

 命じ終わるが先か、
「ぎゃ!」
 彼は短い悲鳴と共に床に押し付けられた。
 近衛の一人に。

『じっ、自分は「そそのかされたダケ」なのだ! 一位にしてやるからとぉ! よもや、この様な騒ぎになるなどとはぁ思わなかったのだぁ!』

 更なる黒幕の存在を窺わせたが、捕縛対象ではなかったコマクサは内心で安堵しながらも、
(まかり、ワシの襤褸(ぼろ)が出てしまう前に!)
 騒ぎの終息を急ぎ図ろうと、

『何をしているかスパイダマグゥ! さっさとソイツ等を引っ立てんかぁ!』

 自身の管轄下にある親衛隊に命じ、期せずして職権を取り戻せたスパイダマグはスグさま、幾分、高揚した口調で、
「ハッ!」
 元老院ナンバーワンの「コマクサの命」に従い了解を示すと共に、部下たちを呼び寄せ、近衛から失意のサーシアムとハイマツを受け取らせ、

『連れて行きなさい!』

 声高らかに連行させた。
 近衛隊に、見せつけるかのように。
 そして二人は、天法の発動を封じる最下層の牢へと投獄された。
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