ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-58

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 衆議は続き――
 
 少々お疲れ気味な御様子を見せる、御歴歴一同。
 長きに渡り安穏とした日々を送って来た天世において、イレギュラーな出来事が立て続けに、目紛るしく起きては止むを得ないとも言えるが、悪しき秘め事を内に抱えたコマクサなら尚更。

 元老院の旗頭としてのプレッシャーを撥ね退け、現在まで勤め上げて来た彼でも、流石に精神的疲労が否めず、
(つ、疲れたわい……藪蛇(やぶへび)になる前に、早々お開きにせねば……)
 ため息と共に閉会を告げようとしたが、

『もう少しお付き合いいただけますか、コマクサ殿』
(?!)

 チョウカイが恭しくそれを制し、
「そして皆様方も」
 議場内の面々をも見回し、
(まだ何かあると言うのかぁ……)
 露骨な疲れ顔を見せるコマクサ。

 同様に疲れた顔を見せる御歴歴一同の気持ちを代弁するが如く、
「チョウカイ殿よぉ、まだ何かあると言うのかぁ?」
 呆れをも滲ませたが、彼女は気にする風も無く粛々と、

「実はこの件、未だ「全の決着」を見てはおりません。裏から全てを操る「真なる黒幕の存在」があるのです」
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」
「ハイマツ殿や関わった者どもなど、その傀儡にすぎません」
「「「「「「「「「「なんとぉ!」」」」」」」」」」

 驚きを見せる御歴歴の面々と、
(!!!)
 驚愕を内心に、辛うじて留めるコマクサ。
 
 身に覚えがあり過ぎるが故に疲労感でさえ一瞬に吹き飛んだが、長きに渡り「元老院の旗頭」を務めた肝の据わりは伊達で無く、それと知らぬ一同が、

「次から次へといったい、どう言う事なのだぁ?!」
「真なる黒幕とはぁ?!」
「この上、まだ何事かあると言うのかぁ?!」
「天世はいったい、どうしてしまったのだぁ?!」

 動揺を隠せない中にあって、表面上は動じた様子も見せず、

「チョウカイ殿よ、ヌシは何を根拠に、斯(か)くも皆の不安を煽るのだ?」

 戯言(たわごと)とでも言わんばかり、
「そもそも誰が「真なる黒幕」と、貴殿は言うのか?」
 半笑いまで浮かべた。
 無論、内なる不安を打ち消す為の、マッチポンプ的強気発言であるが。

 しかしチョウカイは、彼の挑発染みた物言いに反発する風も無く、
「ではその答え「私から」ではなく、「ある者の口」から直接に語ってもらいましょう」
((((((((((ある者?))))))))))
 首を傾げる議場内一同の一方で、

(まっ、まさかぁ……)

 強気発言で押さえつけた筈の不安が、再び顔を覗かせるコマクサ。
 最悪の人物の顔が、反射的に頭に浮かんでしまったから。
 そんな彼の心の内を彼女は知ってか知らずか変わらぬ平静で、閉ざされた両開き扉の奥に向かって、
 パンパン!
 手を短く打ち鳴らし、

『彼(か)の者を、お連れなさい』

 落ち着いた口調で何者かに命じ、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 議場内の誰もが固唾を呑んで見守る中、扉が観音開きにスッと開き、黒装束の近衛二名が先行して姿を現すと、続けて二名の近衛に両脇を押さえられた人物の姿に、

(ッ!!!)

 コマクサは内心で激しく愕然とした。
 その人物とは、地世の七草の「フリンジ」。
 最悪を想像した人物が、最悪な場所に、最悪の形で姿を現したのである。

(ばっ、馬鹿なぁあぁ!? ヤツはぁ何故にぃ捕縛などされているのだあぁ!)

 胸の内の動揺は、今にも卒倒しそうなほどの勢いで逆巻き、
「…………」
 語るべき言葉が出ない、見つからない。
 上半身を拘束具で固定されたフリンジが、近衛によって証言台の前に連行される中、

「あ、あれは誰だぁ?」
「何者なのだぁ?」
「見た事が無いぞぉ?」
「何故に拘束具を施されているのだぁ?」

 サワサワと騒めく御歴歴一同と、ラディッシュ達。
 彼が何者であるのかを、嫌と言うほど知るコマクサを除き。
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