ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
420 / 895
第六章

6-72

しおりを挟む
 清々しいほどの容赦のない踏み込みに、カルニヴァ王も不快を覚えた様子は無く、
「まぁそんなトコだぁ」
 軽やかに笑うと、

(!)

 彼女は何か思い至り、真顔で、
「ソイツは「王族としての務め」の事かぁい?」
「はっきりと言ってくれる、裏表もなく。流石は勇者殿と行動を共にするオナゴだな」
 感嘆するも、

「「王族としての務め?」」

 またもピンと来ない様子を見せたのは、庶民男子の二人。
 指示詞ばかりが飛び交う会話に困惑顔をしたが、イリスはそんな二人を置き去りに、
「アンタにも、いつかぶつかる問題さぁね」
 視線を向けた相手は、ドロプウォート。

 ハッとした顔を見せる彼女に、ニプルウォートとカドウィードが掛ける言葉を探しあぐねる素振りを見せ、話に置き去り男子二人が、
「「???」」
 更なる不思議顔を見合わせると、

『鈍い二人さぁねぇ~』

 堪り兼ねたイリスが呆れ顔して、

「後継者問題、跡継ぎの話さねぇ! 今のあの娘の精神年齢はチィ坊と同じ。幼小に戻っちまったあの娘と、子作りする訳にはいかないだろぅさねぇ。そいつは犯罪行為さねぇ、事案になっちまう」
((こっ、子作りぃ?!!!))

 やっと気付きを見せたが、それでも「この世界の常識」とは無縁だったラディッシュにとって、直感的に違和感を抱くに十分な話であり、
「血筋って、そんなに大事なモノなの? 王様になれるだけの「才ある人」が王様になるのじゃダメなの?」
 優しさから異を唱えると、今度はターナップが、

「そじゃぁ駄目なんスよぉ、ラディの兄貴」
「え?」
「兄貴の居た世界じゃぁどうなのか、オレにぁ分かんねぇっスけど、この世界のオレ等にとっちゃぁ「王族の血筋」は、その土地に産まれたモンにとって拠り所なんス。ソイツが途絶えるって事ぁ国が滅ぶと同意で、いつ他国から攻め込まれて暮らしを蹂躙されるか分かんねぇって事なんスよ」
「そんな……じゃあ「ドロプも」って?!」

 心の一部を裂かれる思いでドロプウォートを見たが、
「…………」
 彼女はうつむき黙したまま。
 その「口に出来ない想い」を代弁するが如く、

『分かり切った事さぁねぇ』

 話に割って入ったのは、イリス。

「貴族の家てのぁ家臣や雇人が何十と居る。ましてやぁコイツは大国エルブの四大さねぇ。後継者不在で御家が取り潰しにでもなりゃぁ路頭に迷う人間が、百や二百で済まないのさぁねぇ」
「そ、それならドロプもいつか……」
「おぅさねぇ。弟でも生まれないかぎり、いつか婿取りして子を作る事になるのさねぇ」

「「「「「「…………」」」」」」

 暗く、沈んだ空気になるラディッシュ達。
 いつまでも共にあると思った仲間との、明日やも知れぬ別れの可能性に。
 すっきりと晴れ渡った青空と相反する、仲間たちの曇天模様に、

(ちぃ~と釘を刺し過ぎちまったかねぇ……)

 少し後悔を覚えるイリスは、
(アタシぁ自分の事ぁ棚に上げてさぁ……)
 人知れず、自嘲気味にフッと小さく息を吐き、

「まぁ四大つっても、コイツぁ王族じゃなく貴族さぁねぇ。最悪、養子でも取って家督を継がせれりゃ問題無し。国が滅ぶ事もぁ元からナイ話さねぇ♪」

 フォローのつもりで冗談めかして笑って見せたが、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 ラディッシュ達の気持ちは晴れなかった。
 ドロプウォートの家の「家督」と「家臣の生活」はそれで守られたとしても、カルニヴァ王とウトリクラリアの問題は、何ら解決を見ていないから。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな
ファンタジー
 王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。  それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。  死んだはずの私が目覚めたのは・・・

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...