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第六章
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イリスが足音を忍ばせ歩き始めた方向は、仲間たちが居る食堂とは反対側の階段。
平時ならばさほど気にならない程度の軋みをやたらと気にしつつ階下へ下り、宿の裏口を静かに開けるなり外の様子を窺う。
(…………)
人影は無く、
(…………)
扉をゆっくりと閉め戻した。
物音を過剰警戒する盗人の様に。
まかり、村人に目撃されたら通報されてもおかしくない挙動不審で。
(…………)
無音の内、無事に扉を閉め終えたイリス。
大仕事でも済ませた後の様に、
(ふぅ~~~)
一息吐き、
(さぁ行くさねぇ!)
踏み出した一歩目は、
『ッ!!!?』
驚きと共に固まった。
そこに居たのはラディッシュ達。
「「「「「「「…………」」」」」」」
七人揃い踏みの「物言いたげな顔」を向ける中、
『なっ、何でアンタ達が居るさぁねぇ!』
イリスがキレ気味の声を上げると、ドロプウォートがため息交じり、
「どれ位のお付き合いになると思っていましてですわのぉ、イリィ?」
眼の奥に責める怒りを滲ませ、
「貴方……一人でアクア国に乗り込む御つもりですわねぇ?」
「…………」
黙する彼女をニプルウォートも呆れ笑い、
「イリィ、アンタ、飯を全然食って無かっただろうさぁ? おおかた腹を括った緊張で飯が喉を通らなかったんだろうけどさ、サッサと食器を片付けて誤魔化せたつもりだったのかぁい?」
タネ明をカドウィードが補足するように、
「悩んでいたのは先刻承知にぃありんすぅ。その上でぇアレに気付かばぁ「決行の決意」も察しんしょうぅ♪」
妖艶な笑みで微笑むと、堪り兼ねたラディッシュの思いは堰を切り、
『あれだけ言ったのにぃどうして相談してくれなかったの!!!』
「…………」
「相談してくれるのを僕達はずっと待ってたんだよ! それなのに一人で出て行こうとするなんて、あんまりじゃないかぁ!」
パストリスとターナップも、
「でぇすでぇすなのでぇす! ボク達ぃ待ってたのでぇす!」
「俺たちじゃ「頼りに何ねぇ」ってかぁ?! ソレってぁ酷くねぇかぁ!」
責めると言うより寂しさを滲ませると、黙したままの彼女にチィックウィードがガバッと抱き付き、
「!?」
涙顔でその顔を見上げ、
『ヒトリでいっちゃイヤなぉ! もぅワルイヒトにぃついていかないかぁらぁ! ゴメンナサイなぉおぉ』
泣いて謝る幼子を、イリスは潤んだ瞳で見下ろしながら、
「何でチィ坊が謝るさぁねぇ……迷惑かけてるのはアタシの方……何の役に立てない、チカラもない、アンタ達の御荷物なだけの、」
『そんなコトないなぉ!!!』
「?!」
チィックウィードが珍しく声を荒げ、
『いきてソバにいてくれるダケでぇジュウブンなんぉお!!!』
幼い彼女の、未だ短い人生で背負った過酷な体験から生まれた、小さな体に収まり切らぬ溢れんばかりの思いの丈。
何があったか知らぬイリスではあったが、
「ッ!」
心を激しく揺さ振られ、涙ながらに彼女を抱き締め、
「迷惑かけ通しのアタシなんかを本当に……」
「…………」
無言の同意に、とめどなく涙を流し、
「ありがとう……そして……悲しい思いをさせて済まなかったさねぇ……」
「「「「「「…………」」」」」」
思い合う二人を、優しく見守る仲間たち。
そんな、しんみりとした空気の中、
『しっかしさぁ~』
唐突な声を上げたのはニプルウォート。
彼女なりに場を明るくしようと試みているのか、
「ウチらも立つ瀬が無いねぇ~」
「「「「「「「?」」」」」」」
辟易を装っているのが透けて見える半笑いでラディッシュ達を見回しながら、
「考えてもみなよぉ。ウチら大人六人が雁首(がんくび)揃えてイリィを改心させられなかったのに、幼女一人の涙が、ソレを変えちまうだからさぁ~」
何とも彼女らしい気遣いから生まれた、皮肉を交えた笑いの誘いに、涙でグズグズの顔したチィックウィードが振り返り、
「チィはぁヨウジョじゃナイなぉ!」
その愛くるしい怒り顔に、仲間たちから温かな笑いが起こった。
平時ならばさほど気にならない程度の軋みをやたらと気にしつつ階下へ下り、宿の裏口を静かに開けるなり外の様子を窺う。
(…………)
人影は無く、
(…………)
扉をゆっくりと閉め戻した。
物音を過剰警戒する盗人の様に。
まかり、村人に目撃されたら通報されてもおかしくない挙動不審で。
(…………)
無音の内、無事に扉を閉め終えたイリス。
大仕事でも済ませた後の様に、
(ふぅ~~~)
一息吐き、
(さぁ行くさねぇ!)
踏み出した一歩目は、
『ッ!!!?』
驚きと共に固まった。
そこに居たのはラディッシュ達。
「「「「「「「…………」」」」」」」
七人揃い踏みの「物言いたげな顔」を向ける中、
『なっ、何でアンタ達が居るさぁねぇ!』
イリスがキレ気味の声を上げると、ドロプウォートがため息交じり、
「どれ位のお付き合いになると思っていましてですわのぉ、イリィ?」
眼の奥に責める怒りを滲ませ、
「貴方……一人でアクア国に乗り込む御つもりですわねぇ?」
「…………」
黙する彼女をニプルウォートも呆れ笑い、
「イリィ、アンタ、飯を全然食って無かっただろうさぁ? おおかた腹を括った緊張で飯が喉を通らなかったんだろうけどさ、サッサと食器を片付けて誤魔化せたつもりだったのかぁい?」
タネ明をカドウィードが補足するように、
「悩んでいたのは先刻承知にぃありんすぅ。その上でぇアレに気付かばぁ「決行の決意」も察しんしょうぅ♪」
妖艶な笑みで微笑むと、堪り兼ねたラディッシュの思いは堰を切り、
『あれだけ言ったのにぃどうして相談してくれなかったの!!!』
「…………」
「相談してくれるのを僕達はずっと待ってたんだよ! それなのに一人で出て行こうとするなんて、あんまりじゃないかぁ!」
パストリスとターナップも、
「でぇすでぇすなのでぇす! ボク達ぃ待ってたのでぇす!」
「俺たちじゃ「頼りに何ねぇ」ってかぁ?! ソレってぁ酷くねぇかぁ!」
責めると言うより寂しさを滲ませると、黙したままの彼女にチィックウィードがガバッと抱き付き、
「!?」
涙顔でその顔を見上げ、
『ヒトリでいっちゃイヤなぉ! もぅワルイヒトにぃついていかないかぁらぁ! ゴメンナサイなぉおぉ』
泣いて謝る幼子を、イリスは潤んだ瞳で見下ろしながら、
「何でチィ坊が謝るさぁねぇ……迷惑かけてるのはアタシの方……何の役に立てない、チカラもない、アンタ達の御荷物なだけの、」
『そんなコトないなぉ!!!』
「?!」
チィックウィードが珍しく声を荒げ、
『いきてソバにいてくれるダケでぇジュウブンなんぉお!!!』
幼い彼女の、未だ短い人生で背負った過酷な体験から生まれた、小さな体に収まり切らぬ溢れんばかりの思いの丈。
何があったか知らぬイリスではあったが、
「ッ!」
心を激しく揺さ振られ、涙ながらに彼女を抱き締め、
「迷惑かけ通しのアタシなんかを本当に……」
「…………」
無言の同意に、とめどなく涙を流し、
「ありがとう……そして……悲しい思いをさせて済まなかったさねぇ……」
「「「「「「…………」」」」」」
思い合う二人を、優しく見守る仲間たち。
そんな、しんみりとした空気の中、
『しっかしさぁ~』
唐突な声を上げたのはニプルウォート。
彼女なりに場を明るくしようと試みているのか、
「ウチらも立つ瀬が無いねぇ~」
「「「「「「「?」」」」」」」
辟易を装っているのが透けて見える半笑いでラディッシュ達を見回しながら、
「考えてもみなよぉ。ウチら大人六人が雁首(がんくび)揃えてイリィを改心させられなかったのに、幼女一人の涙が、ソレを変えちまうだからさぁ~」
何とも彼女らしい気遣いから生まれた、皮肉を交えた笑いの誘いに、涙でグズグズの顔したチィックウィードが振り返り、
「チィはぁヨウジョじゃナイなぉ!」
その愛くるしい怒り顔に、仲間たちから温かな笑いが起こった。
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