ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-88

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 馬車で街道を進むラディッシュ達――
 
 最終目的地をイリスの故郷であるアクア国と定めて北上を続け、今は手前のパラジット国を目指していた。
 天世から「神罰と呼ぶ」に等しい重罰を受け、中央政権が文字通り王都ごと消し飛ばされ、情勢が不安定なさ中での復興状況を確認する目的もあり。

 だからと言って、滞在していたアルブル国の復興作業が順調な訳ではなかった。

 数々の問題点、改善点を残しつつ、アクア国を目指す事が出来たのは、偏(ひとえ)にアルブル国復興作業に携わる人々の後押しがあったればこそ。
 それは勇者組に対する忖度などではなく、故国の危機と言う物が当事者にとって、どれほど辛いものであるか身を以て知っていたから。
 故国アクアの異変を憂いる彼女に寄り添うラディッシュ達に、異を唱える者など皆無であり、

≪感謝するさねぇ≫

 憑き物が落ちた表情のイリス。
 悩んでいたのが嘘のような、いつも通りの斜に構えた笑みで、

『これならぁどうさねぇ!』

 荷台で、いつもの通りチィックウィードたちとカードゲームに興じながら、
「それにしても四国同盟の人達にぁ感謝しかないさねぇ~」
 染み染み頷き笑い、
「人間にぁ「二種類しか居ない」って言葉ぁ、納得しちまうさぁねぇ~」
「二種類って?」
 御者台のラディッシュが手綱を引きながら、興味深げに肩越しチラリと視線を送ると、彼女は振り向きニカッと笑って、

『「イイ奴」と「そぅでないヤツ」さねぇ♪』

 彼女が取り戻した明るさに、
「単純ですわねぇ~♪」
「ホントさぁ~♪」
 御者台のドロプウォートとニプルウォートが呆れ笑うと、チィックウィードの目元がギラリ。

『スキありなぉ♪』

 イリスの手札から一枚を、電光石火の早業でスパッと抜き取り、
『あぁ!』
 彼女が驚愕の声を上げるが先か、幼子は満面の笑顔で、

『またまたチィのカチなぉ♪♪♪』

 手札を全て床に投げ置いた。
『のかぁーーーっ!』
 悔し気に頭を掻きむしるイリス。
 八つ当たり丸出しで、

「アンタ達が大事な所で話しかけたせいで、またチィ坊に負けたさねぇ!」

 御者台の三人に怒りをぶつけ、ドヤ顔のチィックウィードには、
「会話の最中にカードを抜き取るなんてぇ「この悪党」さねぇ!」
 負け犬の遠吠えとしか思えぬ恨み節に、仲間たちから笑いが起こると、

『あっ!』

 ラディッシュが何かに眼を留め、
「関所が見えて来たよ♪」
「「「「「!」」」」」
 荷台の仲間たちも身を乗り出した。
 元パラジット共和国の国境に、到着である。


 ラディッシュ達が到着する少し前――

 関所内に設けられた国境警備隊兵士詰め所内は、
「「「「「「…………」」」」」」
 一様にダラけていた。

 雑談に花を咲かせる者、居眠りする者、呆けている者、等々。

 国境警備とは国防における要の一つである筈が、緊張感のカケラも無い士気の低さであった。
 そんな一室に、

『タイヘンだ! 馬車近づいて来るぞぉ!』

 血相を変えて駆け込んで来る兵士A。
 驚愕の声を上げたが、
「「「「「「…………」」」」」」
 誰一人、腰を上げる事も、緊張感を以て即応する事も無く、座したままの兵士Bもおっとりがてら、
「何を今さら焦ってるんだぁ~? どうせまた違法出国者の類いだろぅ? ほっとけほっとけ、よその国が取り締まってくれんだろうぉよ」
 雑談に話を咲かせていた兵士Cたちも、

「違いねぇ。天世様に見限られた「罰当たりな国」なんぞに、中世の誰が来るってんだぁ?」
「そんなモノ好き居やしねぇわなぁ~」
「まぁ居るとしたらぁ火事場泥棒くらいかぁ?」

 呑気に笑い合っていると、兵士Aはもどかし気に、

『だから、その外から来てるんだってぇ!』

 それでも兵士たちは、
「それはそれで、この国から取る物が無ぇのが分かったら、すごすご帰って行くさぁ」
「だなぁ♪」
 再び笑い合っていると、

『とは言っても流石になぁ~』

 兵士Bが億劫そうに立ち上がり、
「犯罪者集団を素通りさせたのが管理者殿方に知れたら、後が面倒だからなぁ~」
 釣られる様に兵士Cたちも、
「四国同盟から派遣されて来てる「あの連中」は御堅いからなぁ~」
 愚痴り合いながら、のっそり立ち上がった。

 連邦共和国時代に数々行った「理不尽な強権発動」により、形ばかりの連邦の、実質的には傘下にした国々から「数多(あまた)の恨み」を未だ買っているパラジット国。

 政権が消失したこの国を守る為に派遣された、エルブ国、フルール国、カルニヴァ国の特使に対し、辟易笑いで平然と悪言をこぼすと、
「やれやれ、お仕事お仕事ぉ」
 兵士たちは気ダルそうに、続々と部屋から出て行った。

 四国同盟からしてみれば裏の意味として、天世につけ入るスキを見せぬ為、パラジット国弱体化に伴う周辺諸国の武力を用いた、安易な発想の「復讐略奪合戦を防ぐ派遣」でもあったが、この国を、延いては「この国の民を守る為の派遣」であったのまた真実。
 それを理解していてなお感謝無く、ボヤキをこぼすは、上位国として君臨していた「連邦共和国時代の悪癖」が抜けていない故か。
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