ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

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 唖然とした表情で立ち尽くすのはラディッシュ――

 彼の視線の先にあったのは、

「な……何も無い……」

 草木一つ生えていない、まるで巨大隕石でも落ちた後のような、荒涼とした巨大クレーター。
 小川のせせらぎも聞こえて来す、小鳥のさえずりさえも聞こえて来ない。
 生き物たちの息吹が感じられず、自分の心音が聞こえて来そうな静寂の中、時おり聞こえて来るのは砂埃を巻き上げる風の音のみ。
 そこに、何百、何千、何万と言う、人々の営みがあったとなど、にわかに信じられぬ光景であった。

「こ、これが……同じ血の通(かよ)った人のする事なの……」
「「「「「「「…………」」」」」」」

 絶句する勇者一行。
 良人(りょうじん)、悪人(あくにん)、関係無しに、一瞬にして命を奪われた人々の無念を想い。
 すると、
「なにも、ナクなっちゃった、なぉ……」
 ラディッシュとドロプウォートの服の裾を掴んでいたチィックウィードが、小さく呟いた。
 その悲し気で、儚げな呟きに、

((((((!))))))

 ハッとするラディッシュ達。
 彼ら、彼女たちは、今更ながら失念していた「ある事」に気が付いた。
 この地が彼女にとって、拉致され、暗殺者として育てられた「忌まわしき地」であり、既に後にしてしまったアルブル国は、今は亡き育ての親との「人並みの温かな暮らし」を送った、思い出の地であった事に。

『ごっ、ごめんチィちゃん!』

 父(仮)ラディッシュは慌てて彼女の目線に屈み、
「でも、どうして言ってくれなかったのぉ?」
「なぉ?」
 不思議顔に、母(仮)ドロプウォートも屈み、

「アルブル国はチィちゃんがお父様と過ごした「思い出の国」ですわよぉ? せめて、お墓まりに、」
「ヨイなぉ♪」

 天使の笑顔で二の句を遮る彼女はニコニコ笑いながら、

「チィも、カディおねぇちゃんとオナジなぉ♪」
「「「「「「「カディと?」」」」」」」
「イキテルのがしられたらぁ、ダメなぉ♪」
「「「「「「「!」」」」」」」
「チィは、このクニでアンサツシャだったなぉ♪ チィの……キーメとスプライツがしんでぇココロがおだやかになったイゾクのヒトタチをぉ、またカナシマセルのはぁ、よくないなぉ♪」

「「「「「「「!」」」」」」」

 驚きを隠せなかった。
 幼く、小さなか体からは到底想像できぬ、大きな気遣いを知り。

((だから今日まで何も(言わなかったのか・言いませんでしたのね)……))

 娘(仮)に、掛けてあげるべき言葉を見つけられない両親(仮)。
 安い言葉は辛さを笑顔で隠す彼女を、単に「傷付ける行為」と思え。
 その沈黙を破らせたほどのインパクトを持った光景を前に、
(それなら、せめて……)
 ラディッシュは腹を括り、

「チィちゃん」
「なぉ?」
「少し歩いてみる?」

 笑顔を見せたが、彼女は静かに首を横に振るとニコリと笑い、
「ダイジョウなぉ♪ それよりぃ、」
 遥か北方を憂いた表情で見つめるイリスを見上げ、

「はやくぅイコウなぉ♪ イリィおねぇちゃんのクニにぃ♪」

 名前を呼ばれ、
「!?」
 我に返るイリス。
 気持ちが急いて、うっかり自己中心的な想いに囚われ、幼子の苦悩と気遣いから目を逸らし、故国に思いを馳せていたのであった。
(大人のアタシの方がぁ……まったく世話無い話さぁねぇ)
 自嘲気味の笑みを浮かべ、感謝を示すように幼子の頭を優しく撫でると、ニプルウォートが唐突に、

『エライ速さでぇ何かが近づいて来るよォ!』
「「「「「「「!」」」」」」」

 反射的に周囲を見回す、勇者たち。
 すると彼女の指摘通り、

「「「「「「「ッ!!!」」」」」」」

 無数の駆け音がもうもうと土煙を上げながら、迫りつつあり、

「何だい何だい何が近付いてきてるのさぁねぇ?!」

 慄くイリスと、即座に前衛として身構えるドロプウォート、ニプルウォート、カドウィード。
 中衛としてパストリスとチィックウィード、そして後衛ターナップ。
 間で守られるように挟まる馬たちも、緊張を察してか興奮気味のイナナキを見せたが、ラディッシュが優しく顔を撫でながら、
「大丈夫だからぁ、大丈夫だからぁ♪」
 気を静めるように促すそんな中、

『ハァーッハッ♪ リクエスターさんの言う通り、本当に居やがったぜぇえぇ♪』

 台無しにするダミ声が。

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