ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
521 / 895
第八章

8-3

しおりを挟む
 天世人の三人が気付けないほど小さく、スパイダマグが「謝罪の意」を表明したのは、上下関係が明確な天世における立場ゆえか。
 ドロプウォート達もラディッシュと同じ懸念を持ったのを感じさせる、複雑な表情をする中、気付く事なく思いの丈を笑顔で披露するリンドウであったが、何の前触れも無く、

 ぐぅううぅぅうぅうぅぅ~

 愛らしい快音を腹から鳴らし、

『ちょぉっ!?』

 恥じらいを含んだ驚きの赤面顔で即座に腹を押さえ、
「こっ、この音ぉ何なんしぃ!?」
 興味深げに見つめるゴゼンとヒレンに慌てた様子で問うと、中世の暮らしの先輩と言えるスパイダマグが「ははは」と軽やかに笑い、

「二位(リンドウ)様の、腹の虫が鳴いたのでございますな」

 虫と聞かされ、

『『ムシぃ?!』』

 ゴゼンとヒレンは反射的に飛び退いた。
 まるで「バイ菌扱い」の反応に、

『アーシのキャワウィイお腹にぃ虫なんてぇ居ないしぃ!』

 リンドウは憤慨し、

「何てこと言うしぃ! この筋肉ダルマぁ!」

 スパイダマグをキツク睨んで罵倒したが、「先人の彼」は「後人の彼女たち」の反応を中世に降りたばかりの自分たちとダブらせ、「懐かしい」とでも言いたげな余裕で以て、

「「物の例え」でありますよぉ、二位さま」

 見せつけられた大人な反応に、
(元老院の「元飼い犬」のクセにしぃ!)
 百人の天世人としてのプライドから、

『わっ、分かってたしぃそんなことぉ!』

 逆ギレした上で、
「そぉ、それが分かっててぇ、この音が何なのぉか、(お腹の)この感じが何のぉかを、訊いてるのしぃ!」
 責めるように問い、

「「「「「「「へ?!」」」」」」」

 彼女の言っている意味が理解できないラディッシュ達がキョトン顔。
 すると察したスパイダマグは、

「失礼致しました勇者様方」

 説明不足を反省した様子で勇者組に一礼し、
「天世において天世人は「常に恩恵で守られている」が故に、腹が鳴るほどの飢餓状態を感じる事が無く、自分たちも中世を初めて訪れた時には驚いたものです」
「そ、そうなの?」
「はい、勇者殿。知らぬ病を、もしや患ったのではないかと思うほどに」
 懐かし気に虚空を見つめる彼と親衛隊に、

『なんでぇそっち(勇者組)にばっかり説明するんしぃ!』

 リンドウは再び憤慨。
「クウフクって言うのが原因ならぁアーシらのお腹を満たす何かを用意するしぃ!』
 しかし彼や親衛隊は、上司にあたる「百人の天世人」である彼女の命令に、

「嫌です」
『『『はぁ?』』』

「謹んで御断り申し上げます」
「「「なぁ?!」」」

「自分たちは「元老院の兵」であって、「貴方がたの私兵」ではありませんので」
「「「!」」」

 現実を踏まえて言えば「元老院」と「百人の天世人」の関係は良好とは言えず、その「元老院の守護」を任とする親衛隊に命令を下すは筋違い。
彼の言い分は最もであったが、下位の組織の親衛隊にすげなく命令を拒否され、足蹴に扱われたと感じたリンドウは、

『ぬぅわにぃソレぇえぇ!!!』

 ゴゼン、ヒレン共々怒りをあらわ、

「その元老院に「見限られた」のがアータらっしょ!」
「キュミたち言うに事を欠いてぇ『親衛隊ごとき』が俺達にぃ、ちょ~と許せないよねぇ」
「ほんとウザイわぁ!」

 その見下した物言いに、

「「「「「ッ!」」」」」

 無言で前に出る親衛隊。
 隊長への暴言は「許さぬ」とばかり。
 狭い一室で一触即発の空気を醸し出す、

「「「…………」」」
「「「「「…………」」」」」

 百人の天世人と、親衛隊。
 元より「水と油の関係」であるのが分かるラディッシュは、

(大人げないなぁ~)

 困惑笑いを浮かべながら、

「何か作ってあげてよスパイダさん♪ まぁ僕が作っても良いけどぉ♪」

 両陣の間を取り持つと、スパイダマグは「憂いの無い笑顔」を感じさせる声色で、
「分かりましてございます、勇者殿♪」
 その二言返事に、

『ちょっ! 待つしぃ!!!』

 リンドウは即でツッコミ。

「なんで「アーシの命令」は聞けなくてぇ、そこの「末席の命令」は聞けるしぃ!」

 余計に不満を露。
 ゴゼンとヒレンも不満を露にしたが、スパイダマグはさも当たり前の事のように、

「自分の「料理の師」は勇者殿であり、弟子が師匠の命に従うは「自然なこと」と考えますが?」

 平然と答えつつ、

「それより」
「「「?」」」

 声色が「怒りが滲んだ物」に変わり、

「師でもある勇者殿を「末席呼ばわり」するのは止めて頂きたい。寛大な勇者殿は許して下さろうが、我らの癪には、甚だ障ります故に」

 同席して居た隊員たちも、一枚布で素顔が隠れて心情が読めないとは思えない程の怒りのオーラを纏った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな
ファンタジー
 王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。  それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。  死んだはずの私が目覚めたのは・・・

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

処理中です...