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第八章

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 お世辞にも「広い」とは言い難い空間に、勇者組の七人と、スパイダマグを含めた親衛隊が数名に、百人の天世人の序列二位、三位、四位。

 唯一救いであった事と言えば、「お祭り男のインディカ」がターナップの祖父である大司祭のお使いで、村の外に出ていた事であろうか。
 まかりこの場に同席していたら、容姿端麗ではある天世女子二人を前に、

(こんな騒ぎじゃ済まなかったかもぉ~)

 苦笑せずには居られないラディッシュ。
 過度な人口密度の中、
(酸素は足りてるのかなぁ~?)
 冗談半分に思いつつ、

「と、ところで、結局三人は、何をしに中世に来たの?」

 するとリンドウは呆れを以て鋭く短く、

『ニブしぃ!』
「「「「「「「?」」」」」」」

 キョトン顔の勇者組に、大いなる上から目線で、

『アーシは末席のアータを誘いに来たしぃ!』
「ぼっ、僕ぉ?」
「そぅしぃ♪」

 ゴゼンとヒレンも不敵な笑みを浮かべると、ラディッシュは何を勘違いしたのか照れ臭そうに顔を赤らめ、
「そっ、そう言うのは、その……もっと「お互いを知ってから」じゃないとぉ、」

『何を勘違いしてるしぃ!』

 リンドウは羞恥の交じった赤面顔で憤慨し、

『アーシらが必要としてるのは「アータのチカラ」ダケしぃ!』
「僕のチカラぁ?」

 仲間たちと話し筋が見えない様子でいると、一枚布で素顔を隠したスパイダマグ達親衛隊が、隠していてなお、困惑していると分かる様子を見せながら、

『本気で始められるおつもりなのですか、二位様、三位様、四位様』
「スパイダさん、どう言うこと?」

 ラディッシュが問うと、
「それは……」
 彼が何事か答えるより先、

『革命しぃ♪』

 リンドウが鼻息荒く笑って答え、

『『『『『『『かくめぇい!!!?』』』』』』』

 驚く勇者組の反応にご満悦の表情で、困った様子の親衛隊たちを顧みず、
「そうしぃ♪」
 快活に、

「アータらも見たっしょ!」
「「「「「「「?」」」」」」」

『天世の怠惰な暮らしぶりを、しぃ!』
(((((((!)))))))

 彼女の言葉に、勇者組のそれぞれに思うところはあった。
 怠惰と言いつつも「平穏を享受する天世の世界」の一方、天世から一応の恩恵は受けている筈が、日々の暮らしが天災に左右され、国同士の諍いも絶えない中世の世界。
 しかし定められた現状に「無い物ねだり」をしたところで虚しいだけで、中世の立場も踏まえ、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 どちらが正しいとも言わずに居たが、興奮気味の彼女は温度差に気付く様子も見せず、

『天世があんな風に堕落したのは「元老院のせい」なぁんよぉ!』
「元老院の……」
『そうしぃ!』

 鋭く短く答えると、不快げに眉間にシワを寄せながら、
「天世は一見すると「穏やかな世界」に見えるけどぉソレは違うのしぃ! 元老院が権力を手放さないで、生じる責任は他人(主に百人の天世人)に押し付ける癖にぃ、自発的に何かをされるのは嫌って取り締まるのしぃ! だからミンナは努力するのを止めてぇしまうんよぉ! 変化を諦めるのしぃ!」
何を思い出してか怒りに打ち震えたかと思うと、今度は決意の籠った笑顔で両眼を輝かせ、

『アーシはぁそんな天世を変えたいのしぃ!』
(!?)

「これは言わば「自由を勝ち取る為の戦争」なんよぉ!」
(せ、戦争ぉ?!)

 あれほど反目し合っていたゴゼンとヒレンも同意と分かる笑みを浮かべていて、天世組三人の息巻く様子に、
(…………)
 違和感を抱くラディッシュ。
 抱いた違和感を端的に短く、一言で言うなら、決意が軽く聞こえた。
 多くの人の「生き死に」を見て来た彼にとって。

(天世人に「本当の死は無い」けど……戦争が起きたら「人の生き死に」だけで済まないのを、(死ぬ事が無い)この人達はどこまで理解して言ってるのかな……)

 抱いた不安を、それとなくスパイダマグに向けると、中世の暮らしも長くなって来た彼は向けられた視線に気付き、一枚布で隠した素顔で「申し訳ありません」とでも言いたげに、
「…………」
 小さく首を横に振った。

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