ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第八章

8-33

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 作業と食事と仮眠の繰り返しの日々が過ぎ――

 固唾を呑んで何かを凝視する、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 同人誌作家モードの「女王フルール」をはじめ、ジャージ姿の勇者組と天世組。

 目の下に疲労を窺わせるクマを作り、青い顔した満身創痍で見入る一同の視線の先にあったのは、神速と言えるスピードで、
「…………」
 全作品の完成原稿に目を通していく、凛たるスーツ姿の編集者モードのリブロン。

 ページの欠落や塗り忘れ等、作業の漏れが無いかを最終確認中。

 確認の終わった作品を個別の封筒に素早く仕舞い、
「…………」
 次々次々読んでいき、
「…………」
 やがて最後の作品を読み終えると平静に、

「…………」

 重なりが乱れた原稿の下を、机の上に軽く「トン」と当てて揃え直し、
「…………」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 一声を待つ女王たちを前に、

「お疲れ様でした♪」

 その穏やかな笑顔に、
『『『『『『『『『『おわったぁあぁぁぁあっぁぁ~~~~~~♪』』』』』』』』』』
 満面の笑顔で一斉に寝転ぶ一同。
 床の汚れで、服が汚れるのも気にせず。

 疲れた顔ながらも笑顔のリンドウは寝転んだまま、

「ねlねぇゴゼン、ヒレン♪」

 何の変哲もない天井を見つめながら、

「んぁ?」
「イイ気分なんだから邪魔しないでよ」

 放っておいて欲しい口振りながらも、何処か上機嫌に聞こえる声色の二人に、

「アーシさぁ、何かこぅ「成し遂げたぁ」ってぇ、気がするのしぃ♪」

 達成感、充実感を得たような心情を吐露すると、ゴゼンも何か感じる所があったらしく、
「ま、まぁたまぁ~には、こう言う労働もぉ悪く無いかもぉネぇ~♪」
 満足感を口にし、釣られたヒレンまでもが、

「こんな気持ち、長く忘れていた気がするわ♪」

 素直な思いを口にした。
 すると、

『『!?』』

 ギョッとした顔して半身起こし、
「「…………」」
 彼女の顔を、まじまじと凝視するリンドウとゴゼン。
 ヒレンが「心の内を明かす」など、二人にとっては「驚きの珍事」であったから。

 疲労も忘れて見入っていると、
(!)
 視線に気付いた彼女も「自分らしくない」と思ったのか、慌てた赤面顔で、

『こぉっ、コッチを見るんじゃナイわよぉ!』

 精一杯の「つれなさ」でソッポを向いた。
 そのあからさまな照れ隠しの憤慨に、天世の二人と勇者組、フルールが小さく笑い合っていると、

『巻末に、御協力いただいた方の御名前を入れているのですが、どうされますか?』

 リブロンの声に、

『ッ!』

 真っ先に反応したのはヒレン。
 不機嫌を装っていた筈が、憧れの作家先生の本に、

《自分の名前が載せてもらえる!》

 苦労した冥利に尽きると言う物であったが、

(でも……)

 急に躊躇いを見せた。
 心に、何か掛かった様子に、

「?」

 不思議に思うリブロン。
 作業中の彼女の熱量から、
(私の二の句も待たず、一番に「掲載を願う」と思っていましたが……)
 意外に感じたが、彼女との付き合いも長くなり、

《質問を真っすぐぶつけて、素直に返してくれる筈がない》

 気心の知れた彼女に本音を語ってもらう為、あえて先入観を抱いていない物言いで、
「どうかされましたか、ヒレン様?」
 事務的口調で尋ねると、彼女はポツリと、

「私たち(天世の三人)の名前が載る事で、先生の「作品の出来映え」とは無関係な所で評価が下がる気が……それが例え偽名だったとしても……」
「百人の天世様の名前を入れる事で、ですか?」
「…………」

 重ねて問うリブロンにヒレンは静かに頷き、
「中世人の天世に対する信仰心は、著しく低下しているの……それが証拠に、天世に日々届く「祈りの量」が目に見えて減ってるわ」
 不愉快を表すシワを眉間に寄せ、

「当然だわ。国(エルブ国)が一つ滅びようとしていたのに救いの手を差し伸べなかったばかりか、破壊(アルブル国)の首謀者だったり、挙句はゴタゴタで町(王都パラジクス)を一つ消し飛ばしたり……」

 思い返せば思い返すほどに、
(元老院の「老害ども」めぇ!)
 怒りは沸々と。
 リンドウとゴゼンも怒りを新たに、

「「…………」」

 そんなピリピリとした空気が場を覆い始めると、

『構わないんじゃないかなぁ♪』
「「「?!」」」

 ラディッシュの明るい声が。
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