ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第八章

8-38

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 やがて迎えた全作新刊発売日――

 王都フローレスの中心から外れた、少し寂れた感のある喫茶店に、

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 集まり一つのテーブルを囲む、謎の一団。
 接客を生業とするウエートレスでさえ訝しげに見つめるその客たちは、言わずもがなラディッシュ達であったが、何故かカツラにヒゲ、メガネを着用し、

《完璧な変装♪》

 一同は自画自賛。
 騒ぎが起きず、素性を隠せた様子に満悦であったが、実際はと言うと、

(((((何、あの人達ぃコワぁ……)))))

 従業員や客たちは、ドン引き。
 違う意味で悪目立ちし、敬遠されていたのが真実であった。

 そうとは知らぬ、勇者一行。

 ヒーローと呼ばれる資質を持つ者たちは、感覚が一般常識から少しズレた所にあるのかも知れない。
 それはさて置き、付け髭ラディッシュは満を持し、

『それで「どう」だった?!』

 続くオカッパ眼鏡のリンドウも、

「アーシとラディが見に行った本屋は大盛況だったのしぃ♪」

 勇者組と天世組の十人はクジ引きでチーム分けをし、町に複数有る書店で販売状況を確認したのち集まって居たのであった。
 関わった本の発売を初めて経験した「カツラのヒレン」と「ヒッピーゴゼン」は興奮気味に、

『あの「人だかり」を見るまでは胃がキリキリしたわよ!』
『だョねぇ♪ 毎回アレ(ド緊張)なぁんてぇ、女王ちゃんの胃はハガネだョねぇ~♪」

 感嘆と達成感を口にすると、

『コレなのでぇすぅ~♪』

 笑顔のパストリスが感慨深げに頷きながら、
「買ってくれた「読者さん」のぉあの嬉しそうな、楽しそうな表情を見てしまうとぉ、タイヘンだったでぇすけどぉ、次も頑張りたいと思ってしまうのでぇすぅ♪」
 しみじみ語る彼女に、

『『『マゾぉ?!』』』

 冷静にツッコム、天世の三人。
 そう感じる程のハードワークであったのを単に揶揄しただけなのだが、彼女は冗談を真に受け勢い余って立ち上がり、

『ボクはマゾじゃないのでぇすぅ!』

 必死に弁明。
 しかし、

『!』

 熱を以て立ち上がってしまった彼女は、ハッとした。
 仲間たちの苦笑の笑顔に加え、
(マゾぉ?!)
(マゾだってぇ)
(あんな愛らしい容姿なのにねぇ)
 漏れ聞こえて来た客たちのヒソヒソ話に。

 途端に羞恥で顔を真っ赤に染め上げ、

『ひぃひぃうぅ!』

 即座に座って頭を抱え込んだ。
 醜態を晒してしまい、反省しきりに縮こまるロリの頭を、

「ダイジョウブなぉ~♪ シッパイぁダレでもぉするモノなぉ~♪」

 お姉ちゃん振って優しく撫でる幼女。
 立場逆転に仲間たちが困惑笑いを浮かべる中、

『そっ、そう言えばぁ♪』

 ラディッシュが報告会を仕切り直そうと声を上げ、
「全作品同時発売を見てて「気が付いた事」があるんだけどぉ……」
 すると仲間たちも「彼が言わんとする何か」に、

「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」

 思い当たった顔を見せ、絶賛落ち込み中のパストリスと、宥め中のチィックウィードも、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 顔を見合わせ一斉に、

「「「「「「「「「「(作家が)ドウイツジンブツなのがバレてたぁ♪」」」」」」」」」」

 思わず笑い合った。
 知らぬは作家女王フルールと、担当編集リブロンばかり。

 ラディッシュ達は密かに様子を見に行った書店の、開店直後の客たちの様子を思い返した。
 どこの書店も開店前から多くの「待ち客」が並び、店が開くと同時に雪崩込み、やがて聴こえて来た第一声が、

《本当に全部、間に合わせてるわ!》

 感嘆と、歓喜の声。
 そこへすかさず、

『シィーーーッ!』

 沈黙を促す他の客たち。
 補足するように、「公然の秘密」を再認識し合うように、

「それは言わない約束でしょ!」
「ペンネームを、あえて変えてる陛下の気遣いを無駄にする気なのぉ!」
「あっ、そうだったわ! 感動して、ついうっかり!」

 その会話は、各所の書店を分かれて調査した勇者組と天世組の誰もが、一度となく耳に、目にした光景であった。
 自国の民を想い奮闘する女王と、女王の気遣いを無駄にしない為に「あえて気付かぬフリ」をする国民の姿に、

『(女王陛下には)黙っていてあげようね♪』

 感銘を受けたラディッシュが促すと、仲間たちも笑顔で頷いた。
 それとは別に、
(((…………)))
 思う所があった天世の三人。

 天世を束ねる立場にある三人にとって「両者の関係性」は、何とも、羨ましく思える物でもあった。
 しかし、
(無い物ねだり、しぃねぇ……♪)
 リンドウは小さく自嘲すると、

「ねぇねぇ、アーシ思ったんだけどぉ」
「「「「「「「「「?」」」」」」」」」

 集まる視線に、彼女は浮かんだ「素朴な疑問」を口にした。

《女王の本(同人誌)とぉ、普通の本(商業誌)とぉ、何が違うのしぃ?》
(((((((((!?)))))))))

 ギョッとするラディッシュ達。
 改めて問われた「基本的な部分の問い」に、

「「「「「「「「「・・・・・・」」」」」」」」」

 絶句して固まり、

(((((((((チガイって、ナニ?!)))))))))

 思考の迷宮に嵌まり込んだ。
 忙しさに感(かま)け、女王フルールやリブロンに言われるがまま受け入れ、考える事を放棄していたから。

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