ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-5

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 アルブル国におけるハクサンの乱が収まりを見せてしばし後――
 
 魔王プエラリアが座する玉座の前に恭しく跪く、両腕が義手となったグラン・ディフロイス。
 敵である筈のラディッシュ達を守る為に両腕を失い「咎め」を既に覚悟した、堂々たる、確固たる物言いで、

「此度(こたび)の御呼びたて、如何な用件でありましょうかプエラリア様」

 するとプエラリアは、
「堅苦しいなぁ~♪」
 咎めるどころか笑いながら、否、笑っているのはいつもであるが、

「実はね、キミにお願いがってねぇ♪」
(お願い?!)

 刑罰を申し渡すどころか「命令」ではなく「お願い」に、伏した目で驚きを抱きつつ、表面上は無感情を貫き、

「両腕を失い、戦士としての用を成さなくなった「私のような物」に可能な事でしたら何なりと」
「そんな卑屈にならないでよぉ~♪」

 プエラリアはケラケラ笑い、

「ボクはね、キミにね、戦士としての経験と知識を活用して欲しいんだ♪」
「私に?」
「あぁ~話が見えないよねぇ~平たく言うとね~♪」
「?」
「説明するより、見てもらった方が早いかぁ♪」

 グラン・ディフロイスを手招きし、とある場所へと連れ立ち、連れ立った先で、

「この子達を、何とかして欲しいんだよ~♪」

 紹介されたのは生気を失った顔でただ自席に座る、幾人もの少年少女たちであった。
 そこは城から伸びる渡り廊下を通った先にある、別棟のような講堂の中。
 誰が用意したのか、揃いの制服を纏い。

 その者達はラディッシュの同期と言える少年少女たちであり、勇者召喚の儀が行われた闘技場から、地世信奉者たちの用いた地法で拉致された、九十九人であった。

 行方不明であった彼ら、彼女たちは生きていた。
 グラン・ディフロイスもそれを知っているが故に、

「私に子守をしろとぉ?」

 驚きこそしなかったものの動揺を見せると、プエラリアは小さく「クスッ」と笑い、

「キミが「人嫌い」なのはよく知ってるつもりだよぉ~付き合いは永いからね♪ でもさ、このままじゃ兵士として使い物にならなくて困ってるんだよぉ~♪」

(素人子供を戦力に?!)

 無駄で無意味な行為に思えたが、主君である「魔王の願い」とあらば、むしろ命令以上に無下には出来ず、罰を受ける身でもあるが為に異は唱えず、

「プエラリア様は……この子らを戦士として育てよと?」
「まぁね♪ 今はこぉ~んな状態だけど、一応は百人の天世人が選んだ「勇者たち」に違いはないからね♪」
「尽力は致しますが……」
「不満かぁい?」
「いえ。戦士としての用を成さなくなった私などを「信頼なさっての事」と理解しており、感謝も致しております。しかし……」

 抜け殻のような九十九人に視線を移し、

「この世界の真実を知り、この世界に呼ばれた真の理由も知り、自ら誓約者を手に掛け「覚悟の証」を立てたにも拘わらず、この体たらく……戦力とする以前の「戦士の資質」に関わる問題なのでは……」

 訝しむ顔をしたが、
(しかしこの者達は「死と隣り合わせの世界」に居た自分たちと違い、平和に浸りきった時代から来たと聞く……天世の都合に踊らされ……)
 そう思うと、次第に憐れな姿に見えて来て、

(ならばせめて、この世界で生きていけるだけのチカラを与えるべきなのでは……プエラリア様の意に沿わぬ形ではあるが……)

 腹を括った彼は、魔王プエラリアの前に跪き、

「戦士としての「死に場」を失った私ではありますが、微力ながら務めさせていただきます」
「アハハハ♪ ほんとぉ、キミってばぁ卑屈に変わったねぇ~♪」
「…………」

 当代の勇者であるラディッシュ達との邂逅が彼の心に変化をもたらしたのだが、プエラリアは旧友の変化に嫉妬を抱いた様子も見せず、

「よろしくね♪」

 その日からグラン・ディフロイスと九十九人の少年少女たちとの、厳しくも穏やかな時間が始まった。
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