ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-9

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 全てが漆黒に包まれた地世のゲートを通るラディッシュ達――

 先と同様、右も、左も、上も、下も、一切の方向感覚、平衡感覚が感じられない中、唯一で、絶対の安堵を得られたのは、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 繋いだ手から感じる、仲間たちの温もり。

 七人が温もりを分け合いながらゲートを通って地世に向かうさ中、玉座のプエラリアは一切の闇を感じさせない、愛らしい笑顔で以て、

『さぁ~て、ゲートを出たら何人が生き残れるのかなぁ~♪』

 不穏を匂わせると、
「ん?」
 誰からも、何も問われていないにも拘らず、

「どうかしたの♪」

 微動だにしていない無言の全身鎧から声を掛けられたが如く振り向き、
「何がそんなに楽しいのかってぇ?! ラディが恩人と、旧友たちとの再会に、「どぉ~んな顔」をするのかと想像するとぉワクワクしてねぇ~♪」
 一人芝居のように驚いて見せると愛くるしくクスクス笑いながら、

「ふふふ♪」

 少し前に自らが行った「下ごしらえ」を思い返した。
 両開きの扉をバァンと開け放ち、

『お早うみんなぁ~♪ 元気かぁーーーい♪』

 満面の、無垢なる笑顔を見せるのはプエラリア。
 そんな魔王が開けたのは「講堂のような建物」の入り口であり、漆黒であった室内が外光により一気に明るく照らされると、

『『『『『『『『『『キィシャシャーーーッ!』』』』』』』』』』

 合成獣の群れが、威嚇の雄叫び。
 人としての自我を完全に失ったグラン・ディフロイスと、元勇者であった九十九人の生徒たちであり、その成れの果ての姿。

 無統率に蠢く合成獣たちは、いきなり現れた女子か、男子か、性別も分からぬ「華奢な人間」を目の当たりに、

『『『『『『『『『『キィシャーーーーーーッ!』』』』』』』』』』

 一斉に襲い掛かった。
 その行為は「合成獣化された恨みを晴らす」と言うより、単なる捕食行動。

 うまそうな餌を前にした獣(けもの)でしかなかったが、逃げる素振りも、慌てる素振りも見せない笑顔のプエラリア。
 小さく「クスッ」と笑い、

《どうやら躾が必要なようだねぇ♪》

 明るい笑顔とは真逆な、まるで「存在していた事実」まで黒く塗り潰され消されてしまいそうな、絶対的、圧倒的、抗う事さえ許さぬ、禍々しき地世の黒きチカラを放たれ、

「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」

 合成獣たちは一斉に跪いた。
 整然と、容姿さえ獣でなければ、宮廷騎士団と見紛うばかりの礼節と忠誠を感じさせ。

 無論、合成獣化してしまった彼ら、彼女たちに礼を重んじる「人間的な知性」が残されている筈も無く、示された強大なチカラを前に、プエラリアを本能で「群れのボス」と認識しての事であった。
 跪いたまま命を奪われても止む無し、とでも言いたげな示された従順に、

「うんうん♪ 理解の早い子は大好きだよぉ♪」

 愛らしい笑顔の魔王は満足げに頷き、

「そろそろ勇者たちが乗り込んで来るらしいから、キミ達に相手をしてもらいたいんだよぉ♪ 彼らが敵対を選んでいたらね♪ まぁ、そうなってくれないとボクは興覚めなんだけど♪」

 跪く九十九プラス一の合成獣に戯(おど)けて見せながら両手をかざし、その身を濃密な漆黒の輝きに包み、

《ボクのチカラで転移させるから「接待を」よろしくね♪》

 合成獣たちの足下に魔法陣を展開、
「そうそう、ただ待ってるのも暇だろうから、好き勝手に暴れていてイイからねぇ♪ その方が、心優しいラディは怒るだろうしぃ♪」
 無邪気な物言いで非道を口に、

『じゃぁ行ってらっしゃ~い♪』

 百体もの合成獣たちは漆黒の闇に一斉に飲まれ、姿を消した。
 何者の気配も感じなくなった講堂内に、
「…………」
 一人佇む、笑顔のプエラリア。

 あどけない笑顔は変わらぬまま、ラディッシュだけが生き残るのを前提に、
「う~ん♪ ラディとの戦闘を前に、合成獣化とか、転送とか、チカラを少し使い過ぎちゃったかなぁ~♪」
 誰に見せるでもなく、可愛らしく自身の額をコツンと小突く仕草をし、反省を口にこそしたが、

「まぁ、観戦しならゆっくり補充すればイイかぁ~♪」

 高みの見物を決め込み、
(例え補充が間に合わなくても、ボクが負ける要素なんてカケラも無いけどね♪)
 真上を見上げた。

 天世に、勝利宣言するかのように。
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