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第九章
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グラン・ディフロイス達の身に災いが降り掛かって数日のち――
ターナップが司祭を務める村の南方に位置する、破壊された遺跡。
地世の七草フリンジと遺跡を守護するゴーレム達との戦いにより、建物と呼べる物は皆無となっていたが。
しかし地世に繋がるゲート自体は破壊を免れ、チカラを求めて集まる汚染獣たちや、良からぬ企てを抱く輩の襲撃に備え、エルブ王が派遣した騎士たち護衛の下、職人たちの手により建物の復旧作業が急ぎ行われていた。
無論、ゴーレム達を守護神とする「防衛の魔法陣」は再構築済みの上で。
いつ襲撃があるとも分からない緊張のさ中、復旧作業に携わる人々が思わず、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
作業の手を止めてしまう光景が。
護衛の騎士たちも作業の中断を咎める事無く、同じ一点を見つめ。
そこにあるのは、先んじてゲートを覆うように復元させた簡易的な建物であり、見つめていたのは、その入り口。
入り口を中心に、入り口側に背を向け「八の字型」に、
「「「「「「…………」」」」」」
恭しく並んで跪く、白装束で正装したスパイダマグたち親衛隊と、ゴーレム達であった。
天技による「防衛の魔法陣」の再構築と、ゴーレム達による中世の兵士や職人たちへの排除行動をとらない調整を行ったのは、彼らの手によるものである。
何故、ゲートへの入り口を背に跪いているのか、その答えは彼らが描く「八の字」の中心を貫くように歩く一団に。
言わずもがな、
「「「「「「…………」」」」」」」
地世に向かう勇者ラディッシュと、その仲間たちである。
プエラリアに全ての詰め腹を切らせる為。
平たく言えば「殴り込み」である。
従順となったゴーレム達を伴い、共に跪くスパイダマグ達ではあったが、一枚布で素顔を隠しているにも拘らず、佇まいから漏れ、透けて見えて来るのは、
「「「「「「…………」」」」」」
物言いたげな感情。
それは成り行きを見守るしか出来ない、兵士たちや作業員たちが抱いていた感情と同じであったが、ラディッシュはその事にあえて触れず淡々と、
「じゃあ、行ってきます」
仲間たちと、遺跡内のゲートに向かおうとした。
すると堪らず、
『お待ち下さァい、ラディッシュ様ぁあ!』
跪いたままのスパイダマグが悲痛な声を上げ、彼からの「あえての様呼び」に、
「「「「「「「…………」」」」」」」
ラディッシュ達が足を止めると、
「本当に七草の方々だけで向かわれるのですかぁ!」
「「「「「「「…………」」」」」」」
責めるような口調ではあったが、それが心配から発せられていると理解しているラディッシュは反発するでなく、同じ想いの仲間たちを代弁するが如く平静に、
「何度も話した通りです、スパイダさん」
凛とした中にも緊張を纏った面持ちで振り返り、
「天世人の体のリンドウやヒレン、そして勿論スパイダさん達も連れて行く訳にはいかないんです」
「でぇすが!」
食い下がりをラディッシュは手で制し、
「今や僕たちの敵は「プエラリアだけ」ではないんです」
「「「「「「!」」」」」」
「そうです。元老院の息のかかった工作が、いつ、何処で、どんな形で行われるか知れない」
「「「「「「…………」」」」」」
「皆さんには、勇者同盟四国を中心に世界と協力し合って、いつ起きるか知れない最悪に備えてもらわないと……僕たちは安心して敵地へ向かえないんです」
「で、ですが、みすみす罠が待つ火中へなど!」
「だからこそでしょ、スパイダさん」
「…………」
諭すような口振りではあるものの、ラディッシュは穏やかな笑みと共に、
「だからこそ、何があっても柔軟に動ける少数精鋭なんです♪」
「「「「「「…………」」」」」」
有無を言わせぬ強弁で「足手纏(あしてまと)いは不要」と、言下に言い放たない優しさが「平時と変わらぬ彼」らしくあり、また屈託無い笑顔まで見せられては、スパイダマグ達が返せる言葉はもはや無かった。
とは言え「ただ黙って死地に送る」など出来よう筈も無く、
『でしたら!』
跪いたままズイッと身を寄せ、
「これだけは覚えておいて下さい」
「「「「「「「?」」」」」」」
『勇者の代わりは生まれても、貴方がた自身の代わりに成り得る者など「この世に居ないのだ」と言う事を』
(((((((!)))))))
世界だけでなく「自分自身も大切にして欲しい」との、金言(きんげん)。
「「「「「「「…………」」」」」」」
ラディッシュ達は受け取った優しさを胸に刻み、
「うん。やけを起こしたり、自暴自棄になったりしない。必ず、この七人で帰って来るから♪」
何の保証も無い言葉ではあったが、
《言葉は言霊(ことだま)》
言葉には「チカラが宿る」と信じたスパイダマグたち親衛隊は、
『『『『『『はい! お待ちしております!』』』』』』
恭しく頭を下げた。
その場に居合わせる形となった、騎士、兵士、職人たちと共に。
『『『『『『『いってきます!』』』』』』』
笑顔でチカラ強く、大きな一歩目を踏み出す勇者たち。
光の届かぬゲートの奥に、その姿を次第に消して行った。
一方、その頃、
『あぁ……感じるよぉラディ~♪』
悦に入った声を漏らすのは、地世の魔王プエラリア。
魔王城謁見の間にて、
「ゲートのチカラを通じてキミの想いが、決意が、このボクにぃ♪」
置物のような全身鎧と並び座る玉座にて、
「やっぱりキミは「敵対」を選んでくれたんだねぇ~」
通常通り両目を閉じた「天使の笑顔」の口元に、
「♪」
微かな歪みを浮かべ。
ターナップが司祭を務める村の南方に位置する、破壊された遺跡。
地世の七草フリンジと遺跡を守護するゴーレム達との戦いにより、建物と呼べる物は皆無となっていたが。
しかし地世に繋がるゲート自体は破壊を免れ、チカラを求めて集まる汚染獣たちや、良からぬ企てを抱く輩の襲撃に備え、エルブ王が派遣した騎士たち護衛の下、職人たちの手により建物の復旧作業が急ぎ行われていた。
無論、ゴーレム達を守護神とする「防衛の魔法陣」は再構築済みの上で。
いつ襲撃があるとも分からない緊張のさ中、復旧作業に携わる人々が思わず、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
作業の手を止めてしまう光景が。
護衛の騎士たちも作業の中断を咎める事無く、同じ一点を見つめ。
そこにあるのは、先んじてゲートを覆うように復元させた簡易的な建物であり、見つめていたのは、その入り口。
入り口を中心に、入り口側に背を向け「八の字型」に、
「「「「「「…………」」」」」」
恭しく並んで跪く、白装束で正装したスパイダマグたち親衛隊と、ゴーレム達であった。
天技による「防衛の魔法陣」の再構築と、ゴーレム達による中世の兵士や職人たちへの排除行動をとらない調整を行ったのは、彼らの手によるものである。
何故、ゲートへの入り口を背に跪いているのか、その答えは彼らが描く「八の字」の中心を貫くように歩く一団に。
言わずもがな、
「「「「「「…………」」」」」」」
地世に向かう勇者ラディッシュと、その仲間たちである。
プエラリアに全ての詰め腹を切らせる為。
平たく言えば「殴り込み」である。
従順となったゴーレム達を伴い、共に跪くスパイダマグ達ではあったが、一枚布で素顔を隠しているにも拘らず、佇まいから漏れ、透けて見えて来るのは、
「「「「「「…………」」」」」」
物言いたげな感情。
それは成り行きを見守るしか出来ない、兵士たちや作業員たちが抱いていた感情と同じであったが、ラディッシュはその事にあえて触れず淡々と、
「じゃあ、行ってきます」
仲間たちと、遺跡内のゲートに向かおうとした。
すると堪らず、
『お待ち下さァい、ラディッシュ様ぁあ!』
跪いたままのスパイダマグが悲痛な声を上げ、彼からの「あえての様呼び」に、
「「「「「「「…………」」」」」」」
ラディッシュ達が足を止めると、
「本当に七草の方々だけで向かわれるのですかぁ!」
「「「「「「「…………」」」」」」」
責めるような口調ではあったが、それが心配から発せられていると理解しているラディッシュは反発するでなく、同じ想いの仲間たちを代弁するが如く平静に、
「何度も話した通りです、スパイダさん」
凛とした中にも緊張を纏った面持ちで振り返り、
「天世人の体のリンドウやヒレン、そして勿論スパイダさん達も連れて行く訳にはいかないんです」
「でぇすが!」
食い下がりをラディッシュは手で制し、
「今や僕たちの敵は「プエラリアだけ」ではないんです」
「「「「「「!」」」」」」
「そうです。元老院の息のかかった工作が、いつ、何処で、どんな形で行われるか知れない」
「「「「「「…………」」」」」」
「皆さんには、勇者同盟四国を中心に世界と協力し合って、いつ起きるか知れない最悪に備えてもらわないと……僕たちは安心して敵地へ向かえないんです」
「で、ですが、みすみす罠が待つ火中へなど!」
「だからこそでしょ、スパイダさん」
「…………」
諭すような口振りではあるものの、ラディッシュは穏やかな笑みと共に、
「だからこそ、何があっても柔軟に動ける少数精鋭なんです♪」
「「「「「「…………」」」」」」
有無を言わせぬ強弁で「足手纏(あしてまと)いは不要」と、言下に言い放たない優しさが「平時と変わらぬ彼」らしくあり、また屈託無い笑顔まで見せられては、スパイダマグ達が返せる言葉はもはや無かった。
とは言え「ただ黙って死地に送る」など出来よう筈も無く、
『でしたら!』
跪いたままズイッと身を寄せ、
「これだけは覚えておいて下さい」
「「「「「「「?」」」」」」」
『勇者の代わりは生まれても、貴方がた自身の代わりに成り得る者など「この世に居ないのだ」と言う事を』
(((((((!)))))))
世界だけでなく「自分自身も大切にして欲しい」との、金言(きんげん)。
「「「「「「「…………」」」」」」」
ラディッシュ達は受け取った優しさを胸に刻み、
「うん。やけを起こしたり、自暴自棄になったりしない。必ず、この七人で帰って来るから♪」
何の保証も無い言葉ではあったが、
《言葉は言霊(ことだま)》
言葉には「チカラが宿る」と信じたスパイダマグたち親衛隊は、
『『『『『『はい! お待ちしております!』』』』』』
恭しく頭を下げた。
その場に居合わせる形となった、騎士、兵士、職人たちと共に。
『『『『『『『いってきます!』』』』』』』
笑顔でチカラ強く、大きな一歩目を踏み出す勇者たち。
光の届かぬゲートの奥に、その姿を次第に消して行った。
一方、その頃、
『あぁ……感じるよぉラディ~♪』
悦に入った声を漏らすのは、地世の魔王プエラリア。
魔王城謁見の間にて、
「ゲートのチカラを通じてキミの想いが、決意が、このボクにぃ♪」
置物のような全身鎧と並び座る玉座にて、
「やっぱりキミは「敵対」を選んでくれたんだねぇ~」
通常通り両目を閉じた「天使の笑顔」の口元に、
「♪」
微かな歪みを浮かべ。
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