ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第九章

9-51

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 ドロプウォートの肩に悠然と座る妖精ラミウムの姿は、強引に連れ去られたようにはとても見えず、ドロプウォートの先の発言からも、反旗を翻した仲間が彼女であると容易に推察でき、

『ラミィどうしてぇ!』

 愕然と問う彼を、彼女はドロプウォートと同様、鼻先で「ハァン」と笑った見下しで、

「ドロプが言った通りさぁねぇ」
「え?! それって……」
「やっぱりアンタは「落第勇者」さぁねぇ」

『ッ!』

「アンタじゃ、あの女(地世のラミウム)に勝てないさねぇ。だから」
「だ、だから……」
「だからアタシぁアタシのチカラをドロプに授ける事にしたのさねぇ」
「そぉ、そんな……」

 慄くばかりの勇者を、妖精ラミウムは苛立ちを込めしばし睨んで後、呆れ果てた物言いで、

「アンタも、本当は気付いてるんだろ?」
「!?」
「アタシの正体にさねぇ」
「やっ、やめぇ……」

 カタカタと震え始めるラディッシュ。
 そんな彼に、彼女は容赦なく、

「本物は「あの女の方」でぇ、アタシぁアンタの天世人のチカラから生み出された、アンタの理想のラミ、」
『違うゥウゥ!』

 勇者は悲痛な表情で頭を抱え、

『違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違ァーーーゥ! 本物のラミィが世界の滅亡を望む筈がナァアァアイ!』
『何も違わねぇさねぇえ!』
「!?」

 妖精ラミウムは一喝し、

『手前勝手な理想を人に押し付けんじゃナイさねぇ!』
「そ……」
「現実をよく見るさねぇ! あの女の根っ子にあったのは元より世界に対する憎悪さねぇ! 不遇を強いた世界に対する! そしてそれはアンタにも!」

(えっ?! それってどう言う……)

 こちらの世界の記憶しかないラディッシュにとって、彼女の指す言葉が何を意味しているのか分からなかった。
 分からなかったが容赦なく、

「現実を受け入れない限りアンタは負け! 最後の砦であるアンタを失ったこの世界は滅ぼされるのさねぇ!」
(分からない分からないよぉ! どぅしてぇ僕が世界の破滅を望むぅ!?)

 記憶が失われている事に、初めて強い不安を抱いた。
 しかし妖精ラミウムは、そんな状態の彼を気遣う風も無く、

『だからアタシぁ賭けに出る事にしたのさねぇ!』
「!?」

 ドロプウォートの肩から胸元に舞い降り、祈る仕草を見せながら、
「英雄ドロプウォートにアタシの、百人の天世人のチカラを上乗せして……」
 姿は彼女の胸の中に次第に消えて行き、

「やっ、止めぇえぇ!」

 ラディッシュは悲痛な表情で転げるように走り出し、

『止めろぉおぉおおぉぉおぉおぉぉおお!』

 なりふり構わず懸命に手を伸ばすも、今さら全てが間に合う筈も無く、

『あぁ!!!』

 百人の天世人の膨大なチカラを持った妖精ラミウムは、天世の英雄である人造勇者ドロプウォートと一体に。
「そ、そんな……」
 単なる「百人の勇者の生き残り」となった転移者ラディッシュ。

 盟友である失意の彼に、彼女は毅然と切っ先を向け、
《貴方の中の「ラミィのチカラの残り」も私が頂きますのですわ》
 宣戦布告と同時、彼女の体の中心から白き炎が外に向かって広がり、

『なぁつ!?』

 慄く眼前でそれは、

『クゥルカァアーーーーーーッ!』

 白き炎を基調に、赤き炎が僅かに混じる「巨大な火の鳥」の姿となって雄叫びを上げた。
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