ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十章

10-47

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 話は「ラディッシュ達が如何にして魔王軍の裏をかくに至ったか」から現在に戻り――

 地世王ラミウムが座する居城を目指す新生勇者組。
 雑兵と呼ぶに相応しい汚染獣や合成獣を蹴散らしながら、地世の大地を駆け抜ける。

 天世人の身で地世の大地に降り立った「初めての天世人」であろうリンドウとヒレンの表情には些か硬さが見られたが、他のメンバーは幾度目かの城攻めであり、道に迷う事も、まして心の迷いは定まった表情から窺えなかった。

 しかし「天世の二人の緊張」は覚悟とは別の話で、止むを得ぬこと。

 普通であれば天世人が地世に降り立った時点で地世のチカラに魂まで蝕まれ、天世の生まれ変わりのシステムからも除外され、待っているのは真なる死。
 それを防いでいたのが二人が首から下げるペンダントであり、先人の失われた技術の結晶である。

 戦士として力量差による敗北ならば受け入れられもしようが、装飾品の一つに自身の命が左右される現状など「緊張するな」と言う方が無理な話なのである。
 当人たちは平気を懸命に装ってはいたが。

 それぞれがそれぞれに表立って顔や口には出さぬ思う所はあるものの、順調過ぎるほど順調で勇者組は魔王城へ歩(ふ)を進め、駆ける足を止めること無く城内に雪崩込み、

『奇襲は上手くいったみたいだねぇ!』

 気を抜きはしないものの、ラディッシュは一先ずの安堵を口にした。
 因みに中世や天世から来た彼ら、彼女たちが知る由もない話ではあるが、天世と繋がっていたゴミ捨て場は地世の中央政権の直轄地として城の近くにあり、その事も侵入を成功させた要因の一つとなっていた。

 天世から地世にとって有用なゴミが降って来た時、一般人に掠め取られないよう素早く回収する為の措置である。

 城内に侵入して安堵を口に出来たのも束の間、
『『『『『『『ッ!』』』』』』』
 上階を目指す七人の前に立ちはだかったのは、

{…………}

 新生グランともめた全身鎧を筆頭に、従来の合成獣たちと明らかに佇まいが違う、人間臭さまで感じさせる二十体ほどの多種多様な獣系合成獣の群れ。

 新生グラン直轄部隊の一部であり、グランがラミウムに相談なしに独自判断で残した部隊の一部であった。

 つまりは「元は人間」であった「百人の勇者」の一部。
 平たく言えば「ラディッシュの同期」であったが、勇者組がその事実を知る筈も無く、行く手を塞ぐ敵を前に、

『どかないなら斬りますよ! 時間が無いんです!』

 ラディッシュが先陣切って斬り掛かろうとした。
 しかし、

「?!」
「「…………」」

 無言のリンドウとヒレンに制され、

「どうして?!」

 古参の勇者組も戸惑いを覚える中、二人はあっけらかんと、

「時間が惜しいのし♪ ここはアーシとヒレンに任せるしぃ♪」
「そういう事よ。互いの手の内を知ってる私達が組んだ方が、戦いの連携も取り易いのよ」

 軽口のような物言いではあったが、もっともな話にも聴こえ、提案に乗るべきか、
(((…………)))
 悩むラディッシュ、パストリス、ターナップ。

 良く言えば「素直な気質の三人」は額面通りに受け取り悩んだが、物事を常に斜めから見る習性が沁みついて居るニプルウォートとカドウィードは違っていた。
 平時とは微妙に異なる二人の声の調子から何かを察し、

「確かにその通り時間が無いさ♪ まごまごしてたら、遠くに感じる本隊らしき部隊が来ちまうさ♪」
「げにぃ二人は「腕利き」にぃありぃんす♪ この場は二人に任せぇカディ達は急ぎ上階を目指しんしょぉえ♪ 手間取ってぁ裏をかいた意味まで失いんすぇ♪」

 リンドウ、ヒレンの考えを擁護した。

 説得された事ではあったが、
(((…………)))
 むしろ二人に決意にも似た「何かがある」と気付かされた三人。
 
 秘めた覚悟を表に曝すは「無粋な行い」と判断し、無言の頷き合いから同じ想いに至ったのを確認し合うと、ラディッシュは了承の意味を込め、
『最上階で待ってるよ!』
 ニプルウォート達と上階へ上がる階段を目指して走り出したが、走りながら、

(((((?!)))))

 五人は想定外の事態に気掛かりが。

 颯爽(さっそう)と行く手を阻むと思われた全身鎧が配下の合成獣ともども微動だにせず、遮る素振りの一つも見せなかったのである。

 それはリンドウ、ヒレンとの対戦を望んでいるかの如き姿であり、先を急がなければならない勇者組にとって好都合な話ではあったが。

 残す二人の身は気掛かりであったが、今は一分、一秒でも早くラミウムの下に辿り着かねばならず、遅れれば遅れるほど中世に危害が及ぶ可能性は高まり、以前と変わらぬ仄暗い城内を駆けながら、

(二人とも無事で!)

 祈らずには居られないラディッシュ達であった。
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