ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-25

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 パストリスとターナップの下に暗雲が迫りつつあった頃――
 
 仮想会議を終えた四大大国の王たちと、その知らせを聴いたアルブル国の臨時政府が合同会議を行い方針を話し合い、打ち出すまでの間、一時解散となった勇者組は各々の時間を過ごしていた。

 チィックウィードとドロプウォートに寂しい時間を強いていたラディッシュは家族サービスに。
 カドウィードは相棒のパストリスが欠けたとは言え、ライフワークのようになったグルメ巡り。
 気の置けない仲間二人と袂を分かった寂しさを埋めようとするが如くに、それぞれの時を過ごしていた。

 一方で「ニプルウォートは」と言うと、
「…………」
 寂しさに浸る暇もなく、アルブル国の臨時政府の会議にアドバイザー的立場として参加する日々を送っていた。

 少々可哀そうに思えるが世話役を一度引き受けてしまった手前、仕方なしの流れで、
(ウチも休みたいさぁ母様ぁあぁ~)
 嘆き半分、女帝フルールを想う。

 中世の人々の道標(みちしるべ)たる「中世の七草」として立場を自覚しているがゆえに、嫌々を露骨に顔に出すまではしなかったが。
 それぞれが、それぞれの時間を過ごしていたある日。
 とあるカフェのオープンテラスにて、

「「…………」」

 優雅に茶を楽しむ大人の女性が二人。
 その店はパストリスとカドウィードが身分を偽り、美人グルメライター姉妹として出版した本に掲載した人気店であり、女性二人は上品なワンピースに、つばが少々過剰に広いコサージュ付きの帽子。

 洒落た色付き眼鏡も掛け、佇まいは上流階級の若奥様風とでも言ったところか。
 発展著しい「果ての村」ではあったが「村の喫茶店」であるのに変わりなく、二人が纏う存在感は強いて言うなら、

《異質》

 違和感が拭えない村人たちは、
((((((((((誰ぇ?!))))))))))
 ある意味で悪目立ちしていたのだが、若奥様風Aは周囲からの視線やヒソヒソ話など気にする様子も無く優美に茶をすすり、

(…………)

 人気に違わぬ味と香りに目を細めたが、若奥様風Bの方は針の筵(むしろ)に内心は落ち着かないらしく、佇まいこそ優雅に振舞っていたが眼鏡の下は、
(…………)
 小刻みに周りをキョロキョロ。

(…………)

 忙(せわ)しなく周囲の様子を窺っていた。
 色付き眼鏡が幸いし、落ち着きのない痴態を周囲に悟られるまでは無かったが。

 すると若奥様風Aが気品溢れる振る舞いは維持したまま、周囲に聴かれないくらいの小声で、

(ソワソワするんじゃナイのしぃ!)

 叱責する彼女は変装したリンドウであった。
 相棒は当然の如く、

(だからアタシは来たく無かったのよ! これのドコが変装よ! むしろ悪目立ちしてるダケじゃない!)

 憐れなるかな、巻き添えを食ったと思われるキレ気味ヒレンであった。
 無理矢理、強引に言いくるめて連れて来られたらしく強い口調でリンドウを批判しながらも、身バレしないよう、上品の演技は崩さず小声で、

(だいたいアタシはアンタほど顔が知れてないのに、何でアタシまで「こんな格好」しないといけなかったワケ?!)
(それはぁしぃ)
(それは?)
(アーシだけこの格好してヒレンが普通だと、絵的に釣り合いが取れなくて不自然しぃ♪)
(村の喫茶店に二人でこの格好でいる方が、よほど不自然よ!)
(でも理由はソレだけじゃないのしぃ)

 急な真剣な眼差しに、
(な、何よ?)
 思わず息を飲み、答えを待つと、

(それは、しぃ)
(そ、それは?)
(アーシだけ恥ずかしい思いをするのは不公平しぃ♪)
(恥ずかしいと分かってることにアタシを巻き込むんじゃナイわよ!)

 そこまで反発しながらも離席しないのが、口の悪さと相反する彼女の「根の良さ」か。

 リンドウも長い付き合いの腐れ縁からその辺りを熟知しているのか、面罵に対して上品設定は維持しつつ、口元だけいつも通りの笑顔で「ニカッ」と笑い、

(そのうち周りが慣れて静かになるのしぃ♪)
(その前にアタシが「恥ずか死ぬ」わ!)

 呑気な「見込み」に彼女は鋭くツッコミを入れたが、今以上に注目を集めたら「流石に身バレする」と思い改め、

(はぁ……)

 短いタメ息と共に腹を括り、彼女が言う「周囲の静まり」を待つことにした。
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