ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-49

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 地世王パストリスの存在感を、改めて、間近で知ることとなり、

「「「「…………」」」」

 極度に委縮する五匹の首謀者。
 反省、後悔、服従、様々な感情で平伏する姿であり、

「分かればヨイのでぇす♪」

 笑顔の女王は、
「なのでぇ」
 ターナップに視線を移すと、

「量刑は実害を被ったタープに、一任するのでぇす♪」
『マジかぁお嬢ぉ!?』

 突然の振りに面を食らう彼であったが、他の側近たちも彼女に同意であるのか無言の頷きを見せ、
「…………」
 黙して少し考え、
「…………」
 やがてひな壇の上段から赤絨毯を踏み締め下段に降りて行くと、彼を嘲笑っていたと思えぬ怯えを見せる五匹の合成獣の傍らに、

『おい、オメェ等ぁ』
「「「「「!」」」」」

 ヤンキー座り。
 そして、

「俺にぁ「地世の常識」ってぇヤツが未だ分からねぇ」
「「「「「…………」」」」」
「だから、あえて二つ訊く」
「「「「「?」」」」」

「オメェ等、死にてぇか?」
「「「「「!?」」」」」

 五匹が即答で首を横に激しく振ると、

「生き恥を晒してでも生きてぇのか?」
「「「「「…………」」」」」

 多少なりとも戦士としての矜持(きょうじ)を持ち合わせているのか、一瞬の躊躇いを見せつつ首を縦に振り、五匹の答えに腹が決まった様子のターナップは、
「そうかよ」
 小さく頷くと、

「ならぁ最後に一つ訊く」
(((((((((?!)))))))))

 思わず驚く、問われた合成獣たちや、パストリスと側近たち。

《さっき「二つ」って……》

 ツッコミを入れたい気持ちが疼(うず)かずには居られなかったが、命が懸かった緊迫の場面において「二つの問い」が「三つに増えた」など些末な話であり、黙って彼の問いを待つと、

「この俺を「どうにかしてぇ」と、今でも思ってるか?」
『『『『『ッ!』』』』』

 五匹は今までで一番の、否定の首振りを見せた。
 それこそ命乞いではなく、本心から。

 地世に生きる者の本能の服従。
 見せつけられた、桁違いの潜在能力に対する。

 暴走しかけたターナップに五匹がどれ程の畏れを抱いたのか彼に知る由もなかったが、立ち上がって彼らに無防備に背を向けると、

『お嬢!』
「?」
「コイツらのタマぁ、俺に預かさせちゃぁくれねぇか?」
「…………」

 身元引受人になるとの意を示した。

 それは五匹が次に何か問題を起こした時には「責任を取る」との意味でもあったが、生まれも育ちも地世の、生粋の合成獣であるライケンは、
「?」
 しかし元が地球人である金狼グランや五匹の合成獣たちは、意味を理解。

 フルール国で同人誌を描くにあたり地球の文化に触れたパストリスも言い回しを理解して、

「ハイ、なのでぇす♪ お任せするのでぇす♪」

 笑顔を見せ、
「「「「「!」」」」」
 ターナップの鶴の一声で、命を長らえる事ができた五匹の合成獣。

 仲間内で喜びを分かち合いつつ彼に向かって、

『『『『『一生ついて行きヤス、兄貴ぃ!』』』』』
「うぇえ?!」

 詰まるところカリスマは、どこの世界に行ってもカリスマなのか。
 期せずして、地世でも舎弟を得たターナップ。
 そして名付けをせがまれ、

(コイツ等にぃ「名前」だとぉ?!)

 困惑しつつも、慕われ、懇願されて断れないのも「兄貴分の資質の一つ」であり、悩んだ末の咄嗟の思い付きで、

《トン・ナン・シャア・ペイ》

 安易な名前を四匹に与えたが、

(ヤベェ、一匹分足りねぇ?!)

 焦るターナップ。
 名付けを待つ最後の一匹にキラキラした無垢な眼差しを向けられ、

(うっ……)

 焦れば焦るほど、何も浮かんで来ない。
 しかし彼の「ヒョロ長い体躯」から、

(!)

 閃きの表情と共に、

『オメェは「リー坊」だ!』

 与えられた名前は「リー坊」。
 それは地球の遊戯である麻雀に使用される細長い「リーチ棒」の事であり、自我を持つ生き物が持つ名前として適切であるか、些か微妙な所ではあるが、名無しの合成獣が「名前を持つ」と言うことがどれ程に特別であるのか、五匹の手放しな喜びようから彼は知ることとなった。

 騒動も一先ずの終結を迎え、
「…………」
 魔王軍幹部として箔をつけるに至った、ターナップ。

 それはあくまで始まりの一幕に過ぎず、この先にも数々の困難が待ち構えているであろうが、新たな仲間を得た彼は、

(アニキ、インの字、みんな、見ててくれぇ。オレぁ必ずお嬢を支えて見せるぜ!)

 袂を分かったラディッシュ達に想いを馳せた。
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