ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第十一章

11-63

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 時間は少し戻って話は天世に――

 元となった八部衆が一人であるアブダの口から様々な情報を得て、

『これからどうするさ、ラディ?』

 ニプルウォートが今後の方針を問うとカドウィードも、

「げにぃありぃんす。天世の現状を踏まぇ中世への攻撃は一先ず無いと分かりぃんしたが?」
「パパ、どぅするなぉ?」

 チィックウィードも愛らしく首を傾げ、リンドウとアブダも答えを待つと、黙考していたラディッシュは、

「ねぇ、アブダ」

 おもむろに口を開き、

「八部衆の中で「冷静に話し合い」が出来そうな人って居ないのか?」
『『『『『!?』』』』』

 五人は驚いた。
 彼の口振りから、共闘、もしくは停戦協定を模索しているのが窺えたから。
 しかし彼は仲間の驚きも想定内であったのか、動じることもなく平静に、

「最終的には天宮を目指す中で戦闘が避けられないのは分かってるけど、無駄な戦闘を極力回避する為にも交渉次第で応じてくれる人が居たら、と思って……」

 損耗を少しでも抑えるに、彼の言葉は一理あったが、

「「「「…………」」」」

 そもそも八部衆とは、天世の先人が作ったシステムにより地世に落とされ命を失った人々と同じ境遇の、今は亡き人々の怨念に縛られた、天世に強い恨みを内包した一団である。
 そのような集まりの中に、

《応じる人間が居るのか?!》

 ニプルウォート達が抱いた、当然の感想であった。
 そして「やはり」と言うべきか、問われたアブダは朴訥に、

「無理じゃな」

 前置きをした上で、

「八部衆の本意は天世の破壊にある。先も説明した通り今はチカラを付ける為に戦っておるだけで、それが天世を守っているかの如く人々の目に映っておるだけじゃ」

 不可能である理由を改めて説き、提案したラディッシュも含め、諦めムードになる勇者組であったが、

「しかし、じゃ」
「「「「「?」」」」」
「一人だけ、一人だけじゃが、まともな話し合いが出来そうなヤツが居らぬ訳でもないのじゃ」
「「「「「!」」」」」
「其奴(そやつ)の名はアタタじゃ」

 光明に色めき立つ眼差しを向ける勇者組に名まで告げたアブダであったが、歓びを制するよう「ぬか喜びをするな」とでも言いたげに、

「あくまで「話を聴く耳を持って居る」と言うだけじゃ」

 釘を刺すと、緊張感を纏った眼で、

「ワシの教え子の一人ではあるが、油断しておると足元をすくわれ兼ねぬ、狡猾なオンナじゃよ」
「「「「「!?」」」」」

 彼女の物言いは浮足立ちを思い改めさせるに充分であった。
 五人の表情から、気の緩みを回避できたのを悟るアブダ。
 小さく安堵の息を吐き、

「まかり交渉がアヤツ(アタタ)に通じぬならば、他の六人には到底叶わぬじゃなぁ。そして、」
「「「「「?」」」」」

「交渉するつもりなら「ココバ」には要注意じゃ」
(((((ココバ……?!)))))

「アレは真実を何一つ言わず、息をするように嘘を吐く下郎(げろう)じゃ」
(((((…………)))))
「しかも嘘の吐き過ぎで、もはや当人さえ嘘を言っている自覚が失せている節があるのじゃ」

 アブダは苦笑した。
 その自嘲気味の笑いは「教え導く師」としてココバなる人物を改心させられなかった自身のチカラ不足を嘆いているようであり、教え子の一人でありながら彼女にそこまで言わしめた者の存在に強い嫌悪を感じ、

(((((ココバ)))))

 その名は勇者組の面々の心に深く刻まれた。
 八部衆の中でも最初の邂逅がアブダであったのは幸運と言える物であり、改めて知った八部衆は、

《油断ならざる者の集まり》

 ラディッシュ達が過剰に硬い表情を見せると、
(些か脅しが過ぎたかのぉ?)
 反省のアブダは幾分か表情を緩め、

「しかし初の交渉相手を求めるに、この地であったは幸いじゃのぉ~」
「「「「「?」」」」」
「ワシが担当するこの地の隣、ニラブダの管轄地と反対が「アタタの管轄地」なのじゃ。初なる交渉を試みるには絶好じゃろぉ♪」
「「「「「!」」」」」

 彼女の言葉に、音色に、僅かばかり緊張を緩めるラディッシュ達。
 気遣かわれたのを感じたのもあるが、言葉にせずとも、

(そのようにこわばった顔をしていては、まとまる話もまとまらぬぞ。むしろ下に見られてしまうぞ)

 遠回しの苦言を呈しているのも分かったから。
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