奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_58

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 ハヤテ達の通うこの学校のブレザーのボタンは、特徴的なグラデーション模様になっているだけでなく、男子は四つ穴、女子は三つ穴のボタンを使用していた。
 動きの活発な男子に合わせ、ボタンを取れにくくする配慮からである。
 黄を襲った人物の着ていた制服に四つ穴ボタンが付いていたと言う事は、犯人が、この学校の男子生徒である可能性が高い事を物語っていた。
「アタシの見立てじゃ、昨日の襲撃は恐らく「警告」だねぇ」
((((警告……?))))
「学校でのアタシはこんなナリ(ひがしアイ)だからねぇ、襲い易いと思ったんだろうさ。そして九山、この話は公になって無い話だけどねぇ、アンタのアパート周辺で、この学校の男子の制服を着た「小柄な生徒」が何度か目撃されていたそうだ」
 固唾をのむサクラ。
「黄先生、それってもしかして……」
「あぁ。放火がオマエ狙いだっとして、九山とアタシが共通して狙われる理由があるとしたら……」
((((写真部!))))
 四人の脳裏にとある人物が浮かんだが、黄はそれを察してすかさず、
「思い込みは止めなァ!」
((((!))))
「証拠はない。それにオマエ達、考えてもみなぁ。この学校のOBも含め、制服を持ってる小柄な男がいったい何人、何百、何千いると思う? オークションの横流しで制服を手に入れた者もいるかも知れないし、女の変装の可能性だってある」
「だったら俺がそのボタンと話をして、」
「お止め!」
 黄はボタンを素早く取り上げ引き出しの中へしまい、
「東、アンタが今までの事件で無事だったのは、たまたま運が良かっただけ。これからもそうとは限らないんだよ!」
「それは……」
「なぁに、襲撃は失敗したんだ。それにボタンも奪われ、敵はビクついて縮こまってるさぁ」
「「「「…………」」」」
「東に送り迎えさせるのは、あくまで保険さ。アタシの猫被りはバレた。そして九山と帰る東海林は合気道の段持ち。正体不明の襲撃者を懸念するなら武道や格闘技の心得が無く、一人で歩く時間の長い山形、オマエが一番狙われ易いからなのさぁ」
「はい……」
 先程までハヤテと一緒に帰れる事に上機嫌だったツバサの表情は一転。弱弱しい返事を返す唇は微かに震えていた。

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