奇跡と言う名のフォトグラファー

青木 森

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続章_69

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 ツバサの退院日から一週間以上が経過した日の朝―――
 日課の如く、サクラの席に集まるハヤテとヒカリ。
 いつもツバサが騒がしく飛び込んで来る教室の入り口を、サクラは寂しげに見つめ、
「ツバサちゃん……今日も来ないね……」
 ツバサに面会した日から数えて早や十日が過ぎ、風の噂では既に退院しているそうだが、彼女がサクラ達の前に姿を見せる事は無かった。
 写真部の活動も、ハヤテ、ヒカリ、サクラ、三人同意の下、ツバサと足並みを揃えたいと言う事で休止となっていた。
 更に一週間が過ぎ―――
「ヒカリ、ツバサにメールはしてるんだよな?」
「うん……でも、面会した日から返信がパッタリ……ハーくんは連絡してないのかい?」
「二人を差し置いて俺が連絡するのもどうかと思ってな……家に直接行ってツバサの親と鉢合わせするのも……ちょっと……なぁ……」
 ハヤテ達はツバサが病院に運び込まれたあの日、ツバサの父親の無言の目から「娘ともう会うな」と言われた事を感じ取っていた。
「ツバサちゃんの家は(私の家と違って)仲の良い家族みたいだから、仕方が無いよね……」
 サクラがうつむき、ハヤテとヒカリも釣られる様にうつむき、その空間だけお通夜の様な仄暗いオーラに包まれていると、
「おはようございます、皆様ぁ!」
 ツバサがいつも通りの笑顔で教室に入って来た。
「「「ツバサ((ちゃん))!?」」」
 驚き、顔を上げる三人。
ツバサは憂いを感じさせない笑顔で、
「いやぁ~皆様、ご心配をおかけしましたぁ。山形ツバサ、本日より現場復帰であります!」
 敬礼して見せると、ヒカリがイタズラっぽく、
「ツバサちゃ~ん、心配してたんだよぉ~。どうして連絡をくれなかったんだぁ~い?」
 すねた態度をすると、ツバサは笑いながら、
「いやぁ~実は皆様が帰られた後で、父親から皆様に「もう関わるな」とスマホを取り上げられましてぇ。揚句に「転校しろ」なんて言い出しましてぇ。今朝もそれで大喧嘩して来たところなんですよぉ~」
「だ、大丈夫なのツバサちゃん!?」
 サクラが不安気に見つめると、ツバサはあっけらかんと、
「ハイ、大丈夫でぇす! いい加減しつこかったんで『それ以上言うなら親子の縁を切ってヒカリちゃんの家で住み込みの仕事をさせてもらう』って言ったら、流石に凹んでました」
「もぅ、容赦ないねぇツバサちゃんてばぁ~」
 ヒカリとツバサは悪い顔を見合わせ、
「「アハハハハハハハハ!」」
 ケラケラと笑い合い、二人の笑顔を目の当たりにした男性代表ハヤテは、
(し、思春期の娘って怖ぇ……)
 将来自分にも娘が出来た時に、同じ手荒な扱いを受けるのかと思い、背筋が冷たくなる感覚を覚えた。

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