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続章_77
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ため息交じりに、
「会長のお許しが出た。しばしの間なら良いだろう」
「ありがとうございます」
サクラは掴んでいた手を離すと、うつ伏せにされたままのハヤトに向き直り、
「改めて伺います、豊葦原くん。どうしてアパートを放火したんですか?」
「…………」
いじけた顔して視線を逸らすハヤト。
「答えなさい、ハヤトォ!」
ミズホが凛然とした表情で怒鳴ると一瞬ビクリと身を震わせ、渋々サクラの方に向き直り、ポツリポツリと、
「腹いせだよ……それに……あんな火事になると思わなかったんだ……ボヤ程度で……」
(なっ! 腹いせぇ!? 何を言ってるのこの人!)
想像力が欠如した幼稚な発想に、サクラの怒りの導火線に火が点き始め、
「古い木造アパートに灯油を撒いて火を点けて、ボヤで済むはずないでしょ!」
「とっ、灯油ゅ!?」
「誤魔化さないで! 警察の人が「灯油が撒かれてた」ってぇ!」
「そ、そんな事までしてない! お姉ちゃんは僕を信じてくれるよねぇ!」
「お黙りなさいハヤトォ! ストーカー行為で家を突き止めた挙句に火を点ける時点で、言語道断! 人としての恥をお知りなさァい!」
「後なんかつけてないよぉ! そっ、そうだ! 住所が書かれたメールが来たんだ! 九山が(生徒会室で)お姉ちゃんに暴言を吐いたあの日!」
「「「「「「「「!」」」」」」」」
「そこに『九山サクラは女子生徒を学校から追い出した悪党だから懲らしめた方が良い』とも書いてあってぇ!」
「なんて……なんて浅はかな弟ですのぉ……」
愕然とした表情で額を抑えるミズホ。
サクラは火事の時に助けてくれた、共に家を失った優しき住民達に思いを馳せ、
(こんな人の為に、おばさん達は家と日常を……)
口に出来ない程の憤りを覚えたが、今は全ての事実を明らかにする事が最優先であり、爆発しそうな怒りをグッと押しとどめ、
「実家があんな状態になったのも、貴方が追い詰められる事になったのも、全て自分の選択の結果でしょ?」
「…………」
応えず、仏頂面して顔をそむけるハヤト。
口を開けば保身の言い訳ばかり。
未だ謝罪の言葉も無いハヤトに、流石のサクラも堪忍袋の緒が切れた。
「なすて(どうして)ツバサちゃんば(を)襲ったんずやァーーーッ!」
日頃おとなしい子がマジギレすると、余計に怖い。
マジギレしたサクラが、上級生相手でも怯まない気質である事をアリアリと思い出したハヤトは、今更ながら本気で怒らせてしまった事に気付き大いに慌て、
「だ、だから違うってぇ! 何度も言ってるだろぉ! 僕は山形を刺してなんかいない! あの日は廃工場の一室に閉じ込められてたんだ! 『お前の秘密を知ってる』ってメールで呼び出されて! 嘘だと思うならスマホを見てくれよぉ!」
「見苦しいですわよ、ハヤトォ!」
「お姉ちゃん信じてよ! 全部ソイツのせいなんだ! 僕はそそのかされたダケなんだよぉ!」
「お黙りなさァい!」
姉弟が押し問答を始めると、ツバサが堪らず、
「姉弟ケンカは余所でやって下さい!」
「「…………」」
被害者の一喝に、沈黙する二人。
怒れるツバサは、
「メールの自作自演など、知識があればいくらでも出来るであります! そんな物は証拠にもなりませぇん!」
言い放つと、加津佐が呆れた様なため息を大きく一つ吐き、
「もう茶番は十分だろう。豊葦原ハヤト、貴様には九山サクラに対するストーカー行為と家屋への放火、傷害未遂、そして養護教諭への傷害、並びに山形ツバサへの殺人未遂の罪状がついている。申し開きは警察で立てるんだな!」
「…………」
観念した様子で押し黙るハヤト。
「会長のお許しが出た。しばしの間なら良いだろう」
「ありがとうございます」
サクラは掴んでいた手を離すと、うつ伏せにされたままのハヤトに向き直り、
「改めて伺います、豊葦原くん。どうしてアパートを放火したんですか?」
「…………」
いじけた顔して視線を逸らすハヤト。
「答えなさい、ハヤトォ!」
ミズホが凛然とした表情で怒鳴ると一瞬ビクリと身を震わせ、渋々サクラの方に向き直り、ポツリポツリと、
「腹いせだよ……それに……あんな火事になると思わなかったんだ……ボヤ程度で……」
(なっ! 腹いせぇ!? 何を言ってるのこの人!)
想像力が欠如した幼稚な発想に、サクラの怒りの導火線に火が点き始め、
「古い木造アパートに灯油を撒いて火を点けて、ボヤで済むはずないでしょ!」
「とっ、灯油ゅ!?」
「誤魔化さないで! 警察の人が「灯油が撒かれてた」ってぇ!」
「そ、そんな事までしてない! お姉ちゃんは僕を信じてくれるよねぇ!」
「お黙りなさいハヤトォ! ストーカー行為で家を突き止めた挙句に火を点ける時点で、言語道断! 人としての恥をお知りなさァい!」
「後なんかつけてないよぉ! そっ、そうだ! 住所が書かれたメールが来たんだ! 九山が(生徒会室で)お姉ちゃんに暴言を吐いたあの日!」
「「「「「「「「!」」」」」」」」
「そこに『九山サクラは女子生徒を学校から追い出した悪党だから懲らしめた方が良い』とも書いてあってぇ!」
「なんて……なんて浅はかな弟ですのぉ……」
愕然とした表情で額を抑えるミズホ。
サクラは火事の時に助けてくれた、共に家を失った優しき住民達に思いを馳せ、
(こんな人の為に、おばさん達は家と日常を……)
口に出来ない程の憤りを覚えたが、今は全ての事実を明らかにする事が最優先であり、爆発しそうな怒りをグッと押しとどめ、
「実家があんな状態になったのも、貴方が追い詰められる事になったのも、全て自分の選択の結果でしょ?」
「…………」
応えず、仏頂面して顔をそむけるハヤト。
口を開けば保身の言い訳ばかり。
未だ謝罪の言葉も無いハヤトに、流石のサクラも堪忍袋の緒が切れた。
「なすて(どうして)ツバサちゃんば(を)襲ったんずやァーーーッ!」
日頃おとなしい子がマジギレすると、余計に怖い。
マジギレしたサクラが、上級生相手でも怯まない気質である事をアリアリと思い出したハヤトは、今更ながら本気で怒らせてしまった事に気付き大いに慌て、
「だ、だから違うってぇ! 何度も言ってるだろぉ! 僕は山形を刺してなんかいない! あの日は廃工場の一室に閉じ込められてたんだ! 『お前の秘密を知ってる』ってメールで呼び出されて! 嘘だと思うならスマホを見てくれよぉ!」
「見苦しいですわよ、ハヤトォ!」
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