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続章_84
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二時間後―――
西日の差し込む教室で、
「「「「終わったぁ~~~~~~!」」」」
心から背伸びをする、埃まみれのヒカリ達。
使わない机やイス、よく分からない荷物を端に寄せ、ゴミは種類ごとに分けて袋にまとめ、窓も磨き上げた。
開けた窓から流れ込む清々しい風に、作業で火照った体を冷ます四人。
充実感に満ちた顔をして、片付いた部屋を眺めいると、
「ハッハッハッ!」
高笑いと共に、千穂とツバメを連れた新津屋が、今更ながらやって来て、
「これは見事ぉ! いやはや見違えた! 流石は私が認めた写真部諸氏だぁ!」
過剰に持ち上げ、千穂とツバメは拍手した。
手伝ってもらえなかった事に少々不満は抱きつつも、悪い気分はしないハヤテ達。
すると新津屋が、
「これなら他の生徒諸氏も来やすいだろう」
「「「ん?」」」
引っ掛かりを覚えるハヤテ、サクラ、ツバサ。
しかし新津屋は、顔色を変えたハヤテ達を気にする素振りも見せず、
「では高岡君、有明君、参ろうか!」
上着をマント代わりにたなびかせて背を向け、千穂とツバメも真似をして背を向け、教室から出て行こうとした。
「ちょ、ちょっと待ったぁ新津屋先輩!」
慌てて呼び止めるハヤテ。
「他の生徒たちって!?」
疑問をぶつけると、
「ハッハッハッ。悩み相談に来る生徒達に決まっているではないかぁ!」
「「「はぁ!?」」」
寝耳に水の話。
一瞬呆気にとられたが、ハヤテはすぐさま正気を取り戻し、
「な、何言ってんだ先輩ィ! んな話は聞いてない!」
すると新津屋、千穂、ツバメは「ハッハッハッ」と高笑いを上げ、
「この教室を『写真部兼お悩み相談部』として使用すると、署名したではないか」
ヒカリが書いた使用許可書を開いて見せた。
「「「なっ!?」」」
用紙の上部、申請部活名の欄の『写真部』と書かれた横に、『兼お悩み相談部』と続けて書いてあった。
ヒカリが署名した時、文字が書き易い様にと、新津屋が手で押さえていた辺りである。
一杯食わされたことに気づくハヤテ達。
「せぇ、先輩ぃ……やってくれましたねぇ……」
ワナワナと、怒りに打ち震えたが、新津屋は悪びれる様子も見せずにひょうひょうと、
「ハッハッハッ。何を言っているのか分からないが、契約書はキチンと読まないといけないねぇ」
笑い交じりで言ってのけ、
「ではサラバだァ!」
千穂とツバメを伴い、脱兎の如き勢いで逃走。
「待ちやがれぇ!」
即座に後を追おうするハヤテ。
「!?」
サクラとツバサにしがみつかれて振り返ると、
「無理無理無理無理無理無理無理ィーーーッ! ハヤテくん! 私、知らない人と話すなんて出来ないよォーーーッ!」
「ハヤテ君何とかして下さい! 何とかして下さぁい! 何とかしてクダサァアァァァアアァイィイィ! 緊張し過ぎで死んでしまうでありますぅうぅぅぅうっぅぅぅぅ!」
「分かった分かったぁ! 分かったから落ち着けぇってぇ!」
二人の必死の涙目に、ハヤテは苦笑い。
「とりあえずあの紙(申請用紙)を取り返すぞぉ!!」
「「!」」
サクラとツバサは涙を拭うと、腹を括った顔を向け合い、
「「おぉーーーーーーッ!」」
ハヤテと共に教室を飛び出した。
窓辺でたおやかな笑みを浮かべ、頬を優しく撫でる夕風に目を細め、夕焼けに赤く染まる家々を眺めるヒカリ。
西日の差し込む教室で、
「「「「終わったぁ~~~~~~!」」」」
心から背伸びをする、埃まみれのヒカリ達。
使わない机やイス、よく分からない荷物を端に寄せ、ゴミは種類ごとに分けて袋にまとめ、窓も磨き上げた。
開けた窓から流れ込む清々しい風に、作業で火照った体を冷ます四人。
充実感に満ちた顔をして、片付いた部屋を眺めいると、
「ハッハッハッ!」
高笑いと共に、千穂とツバメを連れた新津屋が、今更ながらやって来て、
「これは見事ぉ! いやはや見違えた! 流石は私が認めた写真部諸氏だぁ!」
過剰に持ち上げ、千穂とツバメは拍手した。
手伝ってもらえなかった事に少々不満は抱きつつも、悪い気分はしないハヤテ達。
すると新津屋が、
「これなら他の生徒諸氏も来やすいだろう」
「「「ん?」」」
引っ掛かりを覚えるハヤテ、サクラ、ツバサ。
しかし新津屋は、顔色を変えたハヤテ達を気にする素振りも見せず、
「では高岡君、有明君、参ろうか!」
上着をマント代わりにたなびかせて背を向け、千穂とツバメも真似をして背を向け、教室から出て行こうとした。
「ちょ、ちょっと待ったぁ新津屋先輩!」
慌てて呼び止めるハヤテ。
「他の生徒たちって!?」
疑問をぶつけると、
「ハッハッハッ。悩み相談に来る生徒達に決まっているではないかぁ!」
「「「はぁ!?」」」
寝耳に水の話。
一瞬呆気にとられたが、ハヤテはすぐさま正気を取り戻し、
「な、何言ってんだ先輩ィ! んな話は聞いてない!」
すると新津屋、千穂、ツバメは「ハッハッハッ」と高笑いを上げ、
「この教室を『写真部兼お悩み相談部』として使用すると、署名したではないか」
ヒカリが書いた使用許可書を開いて見せた。
「「「なっ!?」」」
用紙の上部、申請部活名の欄の『写真部』と書かれた横に、『兼お悩み相談部』と続けて書いてあった。
ヒカリが署名した時、文字が書き易い様にと、新津屋が手で押さえていた辺りである。
一杯食わされたことに気づくハヤテ達。
「せぇ、先輩ぃ……やってくれましたねぇ……」
ワナワナと、怒りに打ち震えたが、新津屋は悪びれる様子も見せずにひょうひょうと、
「ハッハッハッ。何を言っているのか分からないが、契約書はキチンと読まないといけないねぇ」
笑い交じりで言ってのけ、
「ではサラバだァ!」
千穂とツバメを伴い、脱兎の如き勢いで逃走。
「待ちやがれぇ!」
即座に後を追おうするハヤテ。
「!?」
サクラとツバサにしがみつかれて振り返ると、
「無理無理無理無理無理無理無理ィーーーッ! ハヤテくん! 私、知らない人と話すなんて出来ないよォーーーッ!」
「ハヤテ君何とかして下さい! 何とかして下さぁい! 何とかしてクダサァアァァァアアァイィイィ! 緊張し過ぎで死んでしまうでありますぅうぅぅぅうっぅぅぅぅ!」
「分かった分かったぁ! 分かったから落ち着けぇってぇ!」
二人の必死の涙目に、ハヤテは苦笑い。
「とりあえずあの紙(申請用紙)を取り返すぞぉ!!」
「「!」」
サクラとツバサは涙を拭うと、腹を括った顔を向け合い、
「「おぉーーーーーーッ!」」
ハヤテと共に教室を飛び出した。
窓辺でたおやかな笑みを浮かべ、頬を優しく撫でる夕風に目を細め、夕焼けに赤く染まる家々を眺めるヒカリ。
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