愛の裏切り

ルーラン

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愛の裏切り

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「今、なんて言ったの?」

不安と突然の否定的な言葉に、聞き返すことしかできなかった。

「だから、これ以上、お前と一緒にいれないって言ったんだ。お前と居たら、しんどくてしょうがないんだ。」

目の前にいる彼は、目を合わせることもなく、ただ淡々と、冷たく言い放った。
何故?何がいけなかったの?浮気?そんなはずはない………色んな考えが頭をかけて呆然と立っている彼女を置いて、彼は背中を向けて去ろうとしている。
止めなきゃ………でも、なんて言えば良いの?
そう考えている間にも
一歩、また一歩…
彼は遠ざかっていく。
何か、言わないと。
待って、いかないで!









結局
何も言えなかった

ただ、そこに崩れて泣くことしかできなかった。
好きなのに、どうして………どうしてこんな風になってしまったの?

「お願い………嘘だといって。」










どうしても
彼女には、幸せになってほしかった。
愛して止まない、彼女だけには
幸せな家庭を築いて欲しかったんだ。

でも、その幸せは、私とじゃ作れないから。
悔しいけど、あの男に託すよ。
きっと大丈夫。
彼女は気立ても良いし、優しくて、柔らかな人だから、きっとあの男も大事にしてくれる。

こんな私を愛してくれて、ありがとう。
こんな酷い別れ方しか出来ない男で、ごめん。

どうか………
どうか、私のことは、忘れてくれ。

そして、君の幸せを心から願い
君の事を、遠くからだけど
ずっと見守っているから。

「ケビン、そろそろだ………覚悟は出来ているな?」
「………ああ、大丈夫だ、もうこの世に未練はない。」
「…そうか。」
「ルード…一つ、頼みがある。」
「なんだ?」
「これを、アリスに届けてほしい、私の名前は告げずに。」
「……これは……ブレスレット?何故2つ……」
「それをアリスに届けたら、もう一つを自分の腕に着けてこう言うんだ…

『アリス、僕と結婚してくれ』

って。」
「な、何を言っているんだ、お前っ」

【神撃部隊、門前に集合せよ】

「絶対だ、出来るよな?相棒…」
「……くそっ…」

【神斬りの騎士はどうした!ケビン・スチュワート!門前に集合せよ!】

「……アリスを、頼んだ。」

【ケビン・スチュワートは何処にいる!】

「ケビン、俺―」
「私はここです、国王様!」

【おお、ケビンよ!一刻も早く門前へ行くのだ!誇り高き騎士よ!】

「いざ…神の怒りを沈めましょう…
ケビン・スチュワート、神斬りの騎士として、今こそ出ん!
皆、私に続けー!」














「おかーさん、神斬りの騎士ってなぁに?」
「神斬りの騎士はね?この国を、神様の怒りから守ってくれた、とってもすごい人なのよ?」
「へぇ~、僕もなれるかな~?」
「ふふふ、そうねー、でももう神様は怒ってないから、神斬りの騎士は一人だけなのよ?」
「そうなのー?じゃあ、僕、おとーさんみたいな、かっこよくて強い騎士になるー!」
「ふふ、そうね、カイルならなれるわ、ね?ルード将軍?ふふっ」

「ああ、そうだな、カイルならきっとなれるさ。」
「わーい!」

ケビン…
俺は今、とても幸せだ。
平和なこの国と
アリス…
そしてカイル。


お前がくれた、この幸せとこの平和。


決して壊しはしない。


だからどうか、そっちから見守っていてくれ。


俺達もいつか、そっちに行くから。






















神斬りの騎士は、自らを贄とし
神の怒りから、このフローラ王国を守った
勇敢なる英雄。

その騎士の名は








ケビン・スチュワート
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