女王ドラゴンの恋模様

月詠こころ

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女王の選択

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ドラゴンの王。それは、7匹で構成される、王と、1匹だけ、その王の上に立つ帝王がいた。
その地位は生まれつきのものだが、血族で継がれる訳ではない。生まれた時に王になるものは白い羽を帝王になるものは赤い羽をもって生まれる。そして、その力ももちろんのこと、この者達には先代と記憶を共有し、力を受け継ぐ。これは性別、地位など関係ない。メスだろうがオスだろうが、羽をもって生まれたものが、王となる。そしてそれにのっとって、君臨する、女帝王がいた。彼女の名前はシエル・ルドルナーガ。ほとんど欲がなく、国の税金なども最低限でありながら、国を潤す凄腕の王として、民には崇められていた。そして、彼女は努力家で、とても頭がいいのだが、問題があるとしたら、ドラゴンには興味がない。羽はいつどこから出てくるのか、分からないのだが、出てきた瞬間力を察知して、世代交代するという。
帝王レベルが簡単に生まれるはずもない。万が一の不慮の事故に備えて世継ぎを作るのは慣例だった。だが先述の通りドラゴンに興味を示さないために、お偉いさんが困り果てていた。

「む?これ、じぃ、人間の客が来ておる」
「ええ...女王陛下に一目お会いしたいと。ですが人間に会う時間があるほど暇ではないと申したのです」
「いや、少々面白そうだ。通せ。」

ぎいぃ、その音が扉がかなり重いことを音で表していた。そして、やって来た人間は、かしづいて、簡単なあいさつをした。
「...なかなか礼儀正しい人間じゃの」
「お褒め頂き光栄です。」
「ふむ、して、何用か」
「私は人間の王に、親書を預かり、こうしてお届けに参ったのです。」
人間の男が、側近に親書をわたし、側近から親書を受け取った。
「...協定か。我らにそなたらを守れと。代わりに国一番の賢者を。 なるほど」

読み終わった親書を側近に再び預けた。
「で、見るからにオヌシがその賢者か。なかなかの魔力。だがこれでは我らの方が損な条件、王として飲むわけにはいかぬ。わらわ個人的にはお前に興味があるがの。」
「そう、仰られると思い、王よりこちらも頂いております」
「...これは竜玉?」
「はい」
「お前!!!女王様になんてものを!!!」
「よい、これは国が作られる前のものじゃ。今となっては化石同然よ。して、これをどうするのか?我らは化石などでは動かぬぞ」
「ええ、承知しております。その竜玉、持ち主は人間と竜のハーフです。そして、今の王はその子孫。そして王の親戚に当たるものを女王様にと。扉の前に待機させております。 」
「ふむ、いいだろう。入れ。」

「あ、ご機嫌...いかがですか?女王陛下。」
「ぷはははは、おぬし無理せずに普段の話し方でよいぞ、これからわらわのとなるのだから。お前たちこの者についてはわらわがみる。口出ししてくれるなよ」
「「はい、女王陛下」」

シエルは玉座から立ち階段を降りて王の親戚だと言う男の前にぐわっと大きな口を開いた。

「怖いだろう?」
「いえ!なんというか!!その鋭いお美しい牙が!!うわああ!!」
「これが本心ときたか、面白い。じい、わらわの隣の部屋空いていたな?そこをこやつが生活できるように整えよ。そち、名をなんという?」
「ラルク、と申します」
「ではラルク、そなたに一つ役割を与えよう。わらわの秘書になれ」
「へ、陛下!?」

周りに誰も置かないことで、有名なシエル。秘書などいなくても、さっさと仕事もこなす。

「あ、女王様美しい鱗ですね...深紅...」
「...。賢者よ、この取引飲んでやろう。王に伝えよ。わらわはこやつが気に入った。」

欲がない、と有名なシエルが人間を気に入るなど前代未聞だった。

賢者を帰して、部屋をシエルの仕事場にうつした。

「さて、ラルクさっそくだが、誰もいない時は敬語いらぬ、わらわのこともシエルと呼べ。呼び捨てでよい。あと魔力の匂いがするな、魔法使いか?」
「はい、じゃなかったうん、魔法使い...」

「潜在能力がすごいな。今出ている能力の3倍はある。隠しているだけで、あの賢者より魔法が使えるな。」
「お見通し...」
「伊達に女王やっておらん。女王と言うだけで国が舐められたりするからな。さて...」

シエルは赤髪の膝まである美しい娘になる。
「綺麗...」
「ははははは、お前は面白い。心の声丸聞こえだぞ」
「え!?うそ、うわああああ...」

俗に言う変態というやつであろう。足ぺろぺろしたいとか、メイド服似合いそう、とか、そんな感じだった。

「わらわのものを食べるほどここのヤツらも落ちぶれていない。だからもっと楽に構えればいい。ただそうだな...自分でヤツらの信頼を得るまではわらわのそばから離れるな。秘書にしたのも、そうすれば都合がいいからな。くっついていても秘書ならば仕事である。文句いえまい」
「シエル...!!そこまで...考えてくれていたの...」
「言っただろうお前は面白い。わらわはそれを観察することにした。それにも丁度よいしな。そうだな、まずはこちらの言葉を覚える事だ。普段人間と接する言葉と、我らだけが使う古代言語がある。魔法使いならスグに覚えられる。」
シエルが紙を渡す。
紙に書かれた文字は自然と魔法陣に浮かび上がる文字だった。ただ、発動する時に浮かび上がるもので自分たちで書いたり、などはしないので、こうやって文字としてみるのは初めてだった。
「理解すれば魔法の威力も格段に上がる。一石二鳥だ。」
「えっと、これ、覚えました...」
「...ほう。天才型か。ならばこれをすべて古代言語に変換して書いてみよ。」
ラルクはすらすら書いて、シエルに渡し、シエルから合格がでた。
その文章テストはこちらでも使われ、城の従者になるテスト項目だった。
「じぃ!いるか」
「女王陛下」
「うむ、入れ、ラルクがこのようにこれを見事に翻訳した。間違いはない」
「...この、人間がですか?」
「ああ、これで文句なかろう?」
「確かに、間違いはありません。かしこまりました、城のものには私から伝えましょう。失礼致します」

「ラルク、せっかくだ、これを応用した魔法陣の作り方を教えてやろう」

シエル直々の指導をラルクはスポンジのように吸収した。
そしてシエルが少し教えれば、ラルクは応用なども軽くやってみせた。

「人間としてはかなり優秀だな。むしろなぜお前が賢者にならなかったか、疑問だな」
「それは俺が...欠陥品だから」
「そうか?欠けているところなど見当たらぬ。人として感情もある、知識も、そして体にも異常はない。ラルク、何が...って泣くな...」
「っ...ごめんなさい、嬉しくて」
「人は難儀だな。これ使え。」

ハンカチを受け取り、涙を拭った。
「さて、ラルク、城にある本は好きに読んでよい。だが、間違っても、外には出るなよ、出たい時はわらわに言え。城のものはあの文章で大丈夫だが、外には人間を喰らうドラゴンもいるからな。」
「うん、で次は何をすれば...」
「ふむ、城のものに挨拶してきたらどうだ?城の中であればわらわの目は行き届く。」
「挨拶、大事」
「うむ、確かに大事なことではあるが。焦ることはない、ここはどうやっても狭いとは言えぬ。広いからの、兵もそれなりにおる。明日他の王に挨拶させる。」

シエルが椅子にどかっと座った。すると辺りは一変して書類の山が積んである部屋に変わる。
「ラルク、メイドに言って、コーヒーを」
「あ、はい」

ラルクも言われた通り動き、気がつけば、夕飯だ、と扉の奥からメイドが知らせに来た。
「よし、今日は終わりだ。ラルク初日とは思えぬ程の働きぶりだった。」
「ありがとう。」
嬉しそうにラルクは微笑み、それを見ていたシエルもまた微笑み、ラルクの手を取って、立たせて、食堂に向かった。

「流石に一緒には食べれないが。ここの料理は美味。いっぱい食べるといい。」
ラルクと途中で別れ、シエルはぽん、とドラゴンに戻る。
「やはり変化は疲れる。変化せずとも良いか...。いやしかしこの爪が傷つけてしまう...か。仕方あるまい、触れる時だけ変化すれば良いか。」

食事を終えて、ゆっくり大浴場に浸かる。この時間が至福と言うようにゆっくり入っていた。
「うわああああ!?」
「ラルク!?」
急に入ってきたラルクが叫んで、石鹸でつるんと滑るが、頭を打たないように、風のクッションを挟んで下に下ろした。
「わわわわ、俺そんな気は...!!」
「そんな気も何もドラゴン相手に人間が何か出来るか?」
「あ...ドラゴンの姿...?」
「うむ、入れ。せっかくだからな。このまま出たらじぃがうるさいぞ。」
シエルはドラゴンの姿である、と、主張するように翼をのばし、尻尾をゆっくりゆらした。
「あ、えっとお邪魔します...」

ドラゴンまるまる一匹入っていてもかなり余裕がある大浴場は、流石と言うべきか、とても綺麗にものが並べてあった。
「シエル、何でドラゴンの姿で入ってるの?」
「鱗の間にたまーに汚れが入るからな。それに、変化は疲れる。風呂はゆっくり体を清め、休める所だろう?」
「あ、うん...」
「この湯は浸かっているだけで、洗浄効果もある。石鹸いらず。ま、でも石鹸は使うがの」

ドラゴンが石鹸で体を洗う時、どうするのか、疑問だが、ゆっくり浸かっていたらその答えは出てきた。
シエルが立ち上がって、外にでると、石鹸が魔法で動き出した。

「...なるほど」
「誰か来ると思ったか?ははは、ここの浴場に入ったのはお前が初じゃの。基本他を入れぬ。ま、ラルク。お主はこちらを使え。向こうの浴場では、他に潰されかねないからの、じぃには言っておく。」
「え、いいの?」
「よいよい、ラルクの事はわらわが面倒みると申した。わらわが決めたことじゃ。誰もこのくらい逆らいはせんよ。しかしの、お主も気がついておろう、ドラゴン用に作られておるゆえ、おぬし立ったままじゃろ?というか頑張って浮いておるな」
「うっ...。シエルの尻尾にお世話になってます」
「ふむ、ドラゴン用なのは向こうもこちらも変わらないからの、お前1人のために、湯船を作る訳にもいかぬ、項目上はおぬしは捕虜だからな。ま、わらわが倒せぬ相手は誰でも倒せぬ。ラルク、ドラゴンについてどこまで知っておる」
「うーん、人間より前から生きてて、寿命は力によって差が出ることとシエルを頂点にした王が8匹いること、それから、王として生まれる時にもってる羽は継承の時に使われること」
「人間の一般的な知識だな。その羽はどう使われるか、教えてやろう。書類書く時の執筆道具。あの羽には独自の波動やら何やら詰め込まれていて、それでサインをすることによって、これは正式なものだ、と示す。あの羽は持ち主以外が触ると触ったものはよくて意識を失い、最悪死に至る。だからわらわが落としても決して触れるなよ。さて、わらわはあがる、と言いたいが、体を洗ってからもう一度浸かるだろう?」
「ううん、いいや。」
「そうか?ならわらわは出るぞ。」
ザバアと文字通り音を立てて、水が滴り落ちると言うよりは割れた。ラルクも頭や体を洗って流し、出た。水圧が強いのは言うまでもない。

ラルクは出て着替えに袖を通すと、部屋に入って、ベッドに寝転がった。
「ふかふかだ...」
シエルの前でなかなか調子が出ない。いつもならばこの変態!!と女性には引かれるのだが、シエルはそれを笑い飛ばした。
ドラゴンだからなのか、女王だからなのか。
どちらにせよ、人になった時のシエルの腕は細く、色白で、きめ細かい肌をしていた。
「調子くるう...変態で自分を保ってるのに」
そのまま眠りにつき、いつの間にかベッド近くのテーブルにあっためざまし時計が鳴り響く。
その時計はしっかり朝だと言うことを示し、いつの間にか用意されていたこちらの国の制服であろうものに袖を通した。
「おはよう、ラルク殿」
「おはようございます、女王陛下」
シエルの後ろには国の重鎮が仕えていた。
「サイズもよさそうだな。さて、他の王におぬしを紹介するのだが、じい、あとどのくらいだ?」

「皆様到着しております、陛下。」
「よし、呼べ。」

ぞろぞろと入ってきたドラゴンの王たちは綺麗に並んで、シエルに礼をした。

「今日呼んだのは他でもない、人間との同盟だ。ラルク、前に出よ」
「はい」
「王の親戚で王の従兄弟にあたるラルクだ。血の確認は出来ている。我らと同盟をする上で、捕虜、だな 。だがなかなかの働き者だ、わらわの秘書として昨日から動いている。こやつにはもう、人間の王への忠誠などはない。おぬしらも分かっているとは思うが、決してこやつに手出しはさせるな。我々が不利な条件でこの同盟を飲んだのには訳がある。」

「女王陛下、その訳をお聞かせください。 」

その後に続いて陛下、訳をお聞かせくださいと他のものが続いた。
「うむ、もちろんだ、理由は我々の親族にあたる蛇、龍だ。ヤツらは年々数が減っていて、絶滅寸前まで追い込まれている。」

「恐れ多いながら、女王陛下、龍は絶滅致しました。」
「知っておる、この世からだろう?だが僅かではあるがいるのだ。天界にな。そして我らは混合される事が多いが役割が違う。そして歴代の帝王の力によりその役割への干渉は互いに避けることで、お互いを尊重してきた。我らの役割は過剰に増える種族の管理、龍の役割は自然界の管理だ。故に我らは悪役にされることが多い。ラルク、一つ、魔法を使え。何でもよい。」

ラルクは言われるがまま火の魔法を使った。
「...なるほど、人がこの威力ですか。」
「コヤツがもともと強いのもある。だが、みて分かるように、本来人の魔法は龍の管轄である。だが、魔法の発動する時、我らの力と同じものが作用している。これをわらわは大事とみて、人と同盟を結ぶことにより、龍の力を戻そうと考えた。」
「しかし、それでは人の力は要らないのでは? 」
「皆そう思うだろう。だが、龍は人の信仰無くして生きられぬ。我らと決定的に違うところだな。ではなぜ龍の力を我らが肩代わりしてまで戻さなければならないか。簡単なことよ、減りすぎた我らの領域と、増えすぎた人間のバランスを取るため。なーんての、難しい話ではない。わらわがこやつを気に入っただけじゃ」

「っ、女王陛下」
「もちろん先ほど話したことも事実ではある。だが難しい話をしてもこの場がピリピリするだけじゃ。我らの目的は一つ、人間との争いをなるべく避けるためよ。最近はドラゴンハンターとやらもいるからな。」

シエルが翼を広げると、空間が一転してお空の上だ。
「...みよ、あれを。同盟を結んだ国とは別のものだが、子を狙っておる。生け捕りにでもして、自分たちの兵力とするのだろう。」

シエルが、尻尾をバシン!と叩きつけると子供のドラゴンがその場から消えて、母親の元に返された。
「人との戦いを避けなければ、我らも龍と同じ道を辿る。」

人間は何より数が多い種族で、知恵もあり、ラルクのように魔法を使う者もいる。対してドラゴンは人間の半分以下。シエルが危惧していたのは未来だった。

「さて、もう一つお前たちに話さなければならない事がある。わらわはラルクが気に入った。正式に我が夫として迎えいれる。良いな?」

「え、女王陛下、私も聞いておりません...」
「うむ、ラルクにも初めて言ったからな。」
「人間と、ですか?前例はありますが...。」
「ふむ、その様子だと反対はないな?」
「はい、その者の潔白はこの心を司る私が保証します。」
「...して、ラルクよ、おぬしはどうしたい?自分の言葉で紡いで見せよ。」
「私は、人間です、ですから、ドラゴンの常識なんて、わからないです。ただ1日だけだけど、女王陛下と過ごしてとても楽しいし、嬉しいです。」
「よし、なら、こうしよう。二ヶ月だ。その間他の王たちもこの城に滞在させる。ラルク、己でここのものの信頼を得て見せよ。」

こうして、女王陛下の名のもと、計画は実行された。
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