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戦争の傷跡とシエルの寿命
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妖刀が無くなったことにより、戦況はガラリとドラゴン側に傾いた。ドラゴンを傷つけるにはドラゴンであるか、それに等しい攻撃でないと、傷つけることは出来ない。またはドラゴンの部位を使った武器である。
妖刀は竜玉を使ったものであったように。
ちなみに竜玉はそのドラゴンが死ぬ時に作りだし、自分の力と知恵をを後世に残すためのもの。何故それを幼いラルクが持っていたのか、不明ではあるが、妖刀が無くなった今、追求しても仕方ないので、追求はしない。シエルが持ち帰った氷の実は、戦死したもののために使われる。人もドラゴンも決して少なくはない犠牲者がでた。国を挙げて戦死したものへの弔いが行われ、遺族たちには更にシエルからのケアがある。中には幼い子供がいる家庭もある。シエルのケアはちゃんと別れをお互いに話させ、次に進むための道しるべを示している。今後の不安などもすべてシエル直々に聞いてまわり、最善の方法を提案する。
だが、突然の死は受け入れられるものではない。そのため、しばらく城の中に置くこともある。戦争もこれが初めてではない。そのため先の遺族が、慰めることも普通に見られる光景だった。3度まで、という制限付きで死者に会わせることもできる。
氷の実は供物として、そして、戦死したものとの仲介をするものとしての力もある。
この氷の実、そして湖のことは帝王と帝王の正室しか知らず、そして湖にたどり着くことすら出来ない。
「女王様...」
「勇敢じゃった。おぬしの旦那タナルは、常に自分の正しいと思ったことを恐れることなく上にぶつけ、先陣をきって常にムードメーカーで。そしておぬしにもその意思を引き継いで欲しい。タナルの竜玉じゃ。」
将軍や位があった訳ではないが、シエルはすべての兵士の名前を覚えていて、その家族まで覚えている。そして竜玉を渡すのもシエルだった。シエルが好かれる一つでもある。
「...今は休め、思いっきり泣いてもここは広い。聞こえはせん。わらわは行く。」
「っ、ありがとう...ございます...」
シエルが扉からでれば大きな泣き声が扉の先から聞こえる。
もらい泣きしそうになるもぐっと堪え、次に向かう。
「シエル」
「っぅ...」
「...頑張ったね」
自室に戻るなり、悔しさで泣き始めたシエルをラルクが抱きしめた。
決して外では見せない、弱々しい姿は、どんなに力を持っていようが、非力な女の子だった。
「ラ...ルク、」
「いいよ、泣いて。今まで1人で抱え込んでたんだよね、これからは俺がいる。ね?」
「っ、はは、何かありそうじゃの」
「笑えるようになったら、シエルにコスプレして欲しいな」
「猫耳つけて猫の鳴き真似とでもいくか?」
「うーん、それよりはシエル足とか体のライン綺麗だから生足で、絶対領域のフリルメイドとか」
「...そうじゃの、笑えるようになったら、の」
シエルの涙も止まる頃には朝になっていた。ラルクは心配して、ここにいる宣言をしたのはいいものの、シエルの尻尾を抱き枕にして、寝ていた。
「...まだ齢24、わらわの千分の一じゃの。」
「ぅ...なまあし...」
「寝言でも言っておるわ。肌も綺麗じゃの。こうしてまじまじと見ることもなかったが。柔らかい。」
手だけを人のものに変えて、ほっぺたをつついた。ドラゴンからすればどんなに鍛えた人間も非力だろう。だが、心が温かかった。今まで女王として、帝王として、一番上に君臨するものとして弱いところは誰にも見られたことも無い。長年生きてきたシエルでも初めてだった。心の温もりを与えられるのは。
「しかし何故尻尾を掴んで寝たのだ?うーむ...」
前にいたはずのラルクが何故尻尾を掴んでいるのか、シエルは覚えていなかった。
ちなみにシエルは泣いてはいたものの、寝てはいない。
「時間も時間じゃの。ラルク、ほれ、起きろ」
尻尾を上に挙げて左右に揺らした。落ちない。
「...なかなかしっかり掴んでおるの。」
「んぅ...。あ...寝ちゃった」
「よい、それより、着替えてこい。今日で弔いが最後だ。最後に一斉に送り出す。」
「シエル大丈夫?」
「おぬしの寝言で引っ込んだわ」
「え、俺何言ったの?」
「ははは、さーの」
聞いてたんでしょ、と寝言内容を聞こうとするラルクを部屋に放り込んで、シエルも最後の特別なアクセサリーをつけて、儀式に挑んだ。
「...皆の者、よく戦ってくれた。形はなくともその心は常に我らと共に。向こうで安らかに眠り、今度は自分の家族のために戦って欲しい。さあ、別れの時間じゃ。」
ぽわあ、と一つ一つ魂が上に上がっていく。
それが全部上がるのを見届け、儀式は終了した。
「さて、紹介が皆にはまだだったな。紹介しよう。此度あの妖刀を破壊することに成功した。その多大な貢献をし、わらわの正式なつがいとして、受け入れたラルクじゃ。」
拍手が場に広がり、皆が暗い顔から一転、祝福モードになる。
「このような場で申し訳ないが、なかなか紹介出来ずにいたからの。」
「えっとよろしくお願いします」
「さあ、亡くなったものの安息はわらわが保証しよう。皆、何か困ったら助け合うことじゃ。もちろんその輪にわらわも忘れてくれるなよ?」
皆解散し、シエルたちも城に戻った。
その時、シエルから、鱗が1枚落ちた。
「...あれ?シエル、鱗が...」
「む?ああ、そろそろ脱皮の時期かの?ありがとうな、ラルク」
シエルがその鱗を回収して、ぐっとその鱗を握りつぶした
「あと少しでいい...もってくれ...」
「シエル?」
「む?なんだ?」
「ううん、なんか難しい顔してたから」
「そうか?」
シエルが何でもない、と笑い飛ばして、お互いに仕事に取り掛かった。
「ラルク、おぬしの手作りクッキーが食べたい」
「うん、今日のおやつクッキーだよ」
「ラルク最近わらわの心を読んでいるかのように行動するな...」
「うーん、なんかわからないけどこうしなきゃって。根拠は無いけど」
「ははは、ちと疲れたわ。ラルクも休憩しようぞ。」
「うん」
その日は、ラルクもシエルに対して何も感じなかった。だが日が経てばそれはだんだん隠せなくなってくる。やがて、シエルがよく咳き込むようになり、側近たちに寝かしつけられていた。
「シエル、お粥食べれそう?」
「すまぬな、食えそうにない。」
「どんどん衰弱してる...。何があったの、シエル。」
「ごほっ、何でも...っ、ないわい。」
「俺に言えない?頼りないから?」
「違う、そうじゃない。」
「ならいって。シエルがこのままだとみんな...」
「違う、違うのじゃ。もはや寿命よ。何年生きていると思っておる...じいよりもわらわは上じゃぞ…」
「っ、戦争で力を使ったから...?」
「本当に寿命なのじゃ。抗ってはならん。自然の摂理じゃ。」
「シエル...」
「ラルクとあった時にはもう既にこの体は、ボロボロじゃった。じゃがの、楽しかった。最後にラルクに出会えて。のう、ラルク。わらわの願いを聞いてくれるか?」
「な...に...?」
「わらわのことは忘れ、人としての幸せを掴め。人の命は儚いが力強く輝いて...」
ぽわ、と光になったシエルが消えた。
「っ、シエル、シエル、やだ。帰ってきてよ...。」
シエルが寝ていた所にラルクは泣いてしがみつくことしかできなかった。
翌日、シエルの追悼式がおこなわれ、多くの民が涙を流した。そして次に即位するために生まれてくる新しい帝王も生まれてくることがなかった。
ふと、シエルの言葉が頭によぎった。王が生まれてくることはある程度コントロールが出来る。そして世界樹は歴代の帝王たちの塊であること。世界樹もまた限られた者しか入ることは出来ない。
ラルクは走り出した。だが何日たってもたどり着くことはない。木をのぼり場所を確認すれば目の前にあるのに。やがてそれを見ていた側近たちがラルクに止めるようにいった。
あの木に近づけるのは帝王だけだと。
シエルからもらった腕輪も既に砕け散っていた。次の帝王が生まれるまで、ラルクが指揮を執ることになった。反対するものはいない。
「おー、おー、やっておるのー。」
姿が見えないが、それは間違いなくシエルの声だった。ラルクがあたりを探し始めるが、どこにも姿はない。ただ声だけが聞こえるのだ。
「シエル、いるなら出てきて!」
「そうだの、ラルクのせいで死ねないのだ。責任とって貰わないとな。」
ぐわん、と空間が歪んで、一匹のドラゴンが出てくる。そのドラゴンは自分の姿を確認し、ラルクのほうにむいた。
「久しぶりじゃの、っていっても1年か。全く、世界樹が仲間に入れてくれなくての。ラルクと約束した、の一点張りじゃよ。ふむ、翼が増えておるな...力も...か。体は新しいの」
「シエル...!!」
ラルクがシエルの前足にしがみついた。
「うぉっ!?ははは今度は最後まで一緒にいてやれそうじゃ。ラルク心配かけたの。」
「本当だよ、おかえりなさい」
「ただいま。」
城に異様な力が現れたと、側近たちが、兵を連れて部屋に飛び込んでくる。
「貴様!!どこから!!」
「どこからも何もここはわらわの城じゃぞ?」
「...は...その声...」
「シエル様...だ」
「シエル様がおかえりになられた...」
うおおおお、と歓声が兵たちから上がり、側近たちはペタリと座り込んだ。
「おかえりなさいませ、女王陛下...」
「ははは、少し体は新しいがの、力の波動は変わらん。よく、持ちこたえてくれた。礼をいうぞ。ラルク後はわらわに...いや、一緒にやってくれるか?」
その言葉にラルクも反応するかわりに、しがみつく力を強めた。
「まいったの...民にどう説明するべきか。今まで死者は蘇った例がない。ま、ありのまま説明するしかないの。ラルクや、ちなみにこの書類間違っておるぞ。これもこれも。」
けらけらと一匹笑いながら、書類に修正をかけていく。シエルが人になって、ラルクの腕に手をかざすと、腕輪が復活した。そして元々付けていたピアスも、またデザインを変え、ドラゴンが宝石に巻きついているもの。
「...ちと、力の使い方が違うな...。強すぎる。なんじゃ?ラルク、わらわに惚れ直したか?」
じっとシエルを見つめていたラルクにシエルが微笑み、チークキスをした。
「やせたな。ほれ、仕事につけ」
「いえ、本日は全員おやすみを頂きます」
「ええ、シエル様が...女王陛下がお戻りになられたのに仕事など手につくはずがありませんわ」
「メイド長、おぬしはいつも気配がないの...」
シエルが帰って来たことにより、国の財産も底をつきそうになっていたが、一ヶ月でシエルは回復させ、国として儲けすぎた、と兵たちや城のもののボーナスの他に各家庭にボーナスの様な援助金を出した。
「やっぱりシエルすごいや」
「ははは、そう褒めるな。根底の問題は解決しておらん。ラルク、おぬしは体の時間を止めてないようだが、そのままにするのか?」
「止めたいんだけど、失敗しちゃうんだ」
「なら教えよう。しかしこれは自然の摂理から外れることだ。ま、それでも、いずれは死ぬんだがの。」
シエルの指導のもと体の時間を止める他にいくつか魔法を教わって、ものにした
ラルクの魔力であれば、と人間が使う最高位の魔法の上を教えたのだ。シエルとて伊達に帝王をやっていないため、実験として自分を差し出した。もちろん威力や感覚が分かれば、いいだけなので打ち消すのだが。
シエルが転生していくつか変わったことがある。能力が上がったのはもちろんなのだが、以前変化で疲労していたがそれがなくなった。
さらに、目の色が不思議と光の角度によって違うのだ。翼の枚数は4つ。尻尾が二つに割れ、赤い羽は虹色になり、鱗の色も光の角度で色がかわり、その硬度も比較できないほどに上がり、そしてその硬度は自分で調整出来る。
シエルが転生して、世界に一気に森や川、自然が増えた。シエルは龍としての能力も持ち合わせていたのだ。このことにより、国の領土が一気に広がった。もちろん人間がそれを阻止しようとするがそれを拒んだのは自然そのものだ。木を伐採しようとすれば酸性の雨がそこにだけ降り斧を溶かした。花を踏もうものなら、そこからつたが伸び、動けなくなる人間もいた。
魔の森、と呼ばれたそこには人間は自己的に入ることはなかった。そのため、ドラゴンが住み着いたのだ。ドラゴンにはとても住みやすい森で、水も美味しいし、木の実も、そこに住む動物たちも色々な種族が住み始め、やがてその種族たちもシエルの下に着きたい、と申し出た。シエルはこころよくそれを受け入れ、国は発展していった。
「シエル様、我ら狼一族はナワバリとする範囲が広い。それはグループ事に。もう少し人間から領地取り返せませんか?」
「ふむ、そうだな、さすがにこれだけの種族が集まると国も小さすぎるか。だが、出来るだけ戦争は避けたい。命を散らすのはどんな理由があれ、したくないからの。しかし、この世界には未開拓地もなければ、そんな廃墟領地もない。ここは一つ、次元をずらし、我らの国とするのはどうだ?もちろんこちらにも来れるようにはする。」
「そんなことが...」
「まーの。ドラゴンを舐めてもらっては困る。ま、やるのはわらわとわらわの夫だがの。」
「シエル様の...。つまり王ですか?」
「そうなるが、実権を握ってるのはわらわだ。ラルクを呼べ」
しばらくして、ラルクが姿をあらわした。
「人間ですよね?」
「ああ、だがこちらに戸籍はある。立派なこの国の住人の1人よ。もちろんドラゴン族は皆が納得しておる。むしろわらわより人気があるぐらいにな。ラルク、こちらに座るといい。」
「失礼します。紹介に預かりましたラルクです。」
「...ほう、その魔力」
狼の王は魔狼と呼ばれている。その力は幻覚などの錯覚系を得意とし、魔法も使うという。
それゆえ、魔力を見ればどのくらいの力を持っているか分かるのだろう。何より狼は鼻がいい。ドラゴン並ではないが。
「ドラゴンの王よ、何故人間を招き入れたのかは聞かん。だが、我々に害を加えるようなら我が直々に喉を噛みちぎる。」
「ふん、その前にお前らを丸のみしてやるわ。ラルクはそもそもそんなことはしない。我が一族の者達が揃ってそれを証明するだろう。そして丸のみする時も一族揃ってな。」
急に態度を変えた狼に対してもシエルもラルクも怯むことはなかった。
「領地の話、我が他の種族にも伝えよう。実行はいつだ?」
「3日後。但しその次元に入れるものと入れないものが出ることだけは心せよ。ま、その分も代償を肩代わり出来るなら別だがの。」
「伝えよう。」
狼が出ていき、シエルがぽん、と人間の姿になって、机に突っ伏した。
「つっかれる...ラルクぅ頭なでておくれ」
「ふふ、はいはい、お疲れ様。」
シエルが人間になる時はだいたい甘えたい時。その回数も日に日に増えていて、自分から言うことも少なくはない。
「にしても次元創造って...初代ドラゴン王ですらできなかった技だよね?」
「それについてはあらかた調べた。龍どもに役目丸投げされたのじゃ。その時力も寄越せって上にいる龍どもの力も根こそぎ取ってきた。龍はその役割上、次元創造が可能なんじゃよ。この次元は無からものは作れぬ。だが、無から創造しなくては自然は食い尽くされ、滅び、枯れる。そこで別次元を作り、そこで育てておる。水も植物も命も。」
「狼の置き土産どうする?」
狼がいた場所に隠されているが、罠魔法があった。
「そのくらいならラルクも取れるだろう。と言うよりわらわとリンクしておる。それゆえわらわの力使えば良い...」
「分かった、じゃあ消しとくね。」
机に突っ伏したまま片手をあげたシエルに苦笑し、ラルクが魔法を書き換え、無効化して、足で踏む。すると、魔法陣が現れて、砕け散った。
妖刀は竜玉を使ったものであったように。
ちなみに竜玉はそのドラゴンが死ぬ時に作りだし、自分の力と知恵をを後世に残すためのもの。何故それを幼いラルクが持っていたのか、不明ではあるが、妖刀が無くなった今、追求しても仕方ないので、追求はしない。シエルが持ち帰った氷の実は、戦死したもののために使われる。人もドラゴンも決して少なくはない犠牲者がでた。国を挙げて戦死したものへの弔いが行われ、遺族たちには更にシエルからのケアがある。中には幼い子供がいる家庭もある。シエルのケアはちゃんと別れをお互いに話させ、次に進むための道しるべを示している。今後の不安などもすべてシエル直々に聞いてまわり、最善の方法を提案する。
だが、突然の死は受け入れられるものではない。そのため、しばらく城の中に置くこともある。戦争もこれが初めてではない。そのため先の遺族が、慰めることも普通に見られる光景だった。3度まで、という制限付きで死者に会わせることもできる。
氷の実は供物として、そして、戦死したものとの仲介をするものとしての力もある。
この氷の実、そして湖のことは帝王と帝王の正室しか知らず、そして湖にたどり着くことすら出来ない。
「女王様...」
「勇敢じゃった。おぬしの旦那タナルは、常に自分の正しいと思ったことを恐れることなく上にぶつけ、先陣をきって常にムードメーカーで。そしておぬしにもその意思を引き継いで欲しい。タナルの竜玉じゃ。」
将軍や位があった訳ではないが、シエルはすべての兵士の名前を覚えていて、その家族まで覚えている。そして竜玉を渡すのもシエルだった。シエルが好かれる一つでもある。
「...今は休め、思いっきり泣いてもここは広い。聞こえはせん。わらわは行く。」
「っ、ありがとう...ございます...」
シエルが扉からでれば大きな泣き声が扉の先から聞こえる。
もらい泣きしそうになるもぐっと堪え、次に向かう。
「シエル」
「っぅ...」
「...頑張ったね」
自室に戻るなり、悔しさで泣き始めたシエルをラルクが抱きしめた。
決して外では見せない、弱々しい姿は、どんなに力を持っていようが、非力な女の子だった。
「ラ...ルク、」
「いいよ、泣いて。今まで1人で抱え込んでたんだよね、これからは俺がいる。ね?」
「っ、はは、何かありそうじゃの」
「笑えるようになったら、シエルにコスプレして欲しいな」
「猫耳つけて猫の鳴き真似とでもいくか?」
「うーん、それよりはシエル足とか体のライン綺麗だから生足で、絶対領域のフリルメイドとか」
「...そうじゃの、笑えるようになったら、の」
シエルの涙も止まる頃には朝になっていた。ラルクは心配して、ここにいる宣言をしたのはいいものの、シエルの尻尾を抱き枕にして、寝ていた。
「...まだ齢24、わらわの千分の一じゃの。」
「ぅ...なまあし...」
「寝言でも言っておるわ。肌も綺麗じゃの。こうしてまじまじと見ることもなかったが。柔らかい。」
手だけを人のものに変えて、ほっぺたをつついた。ドラゴンからすればどんなに鍛えた人間も非力だろう。だが、心が温かかった。今まで女王として、帝王として、一番上に君臨するものとして弱いところは誰にも見られたことも無い。長年生きてきたシエルでも初めてだった。心の温もりを与えられるのは。
「しかし何故尻尾を掴んで寝たのだ?うーむ...」
前にいたはずのラルクが何故尻尾を掴んでいるのか、シエルは覚えていなかった。
ちなみにシエルは泣いてはいたものの、寝てはいない。
「時間も時間じゃの。ラルク、ほれ、起きろ」
尻尾を上に挙げて左右に揺らした。落ちない。
「...なかなかしっかり掴んでおるの。」
「んぅ...。あ...寝ちゃった」
「よい、それより、着替えてこい。今日で弔いが最後だ。最後に一斉に送り出す。」
「シエル大丈夫?」
「おぬしの寝言で引っ込んだわ」
「え、俺何言ったの?」
「ははは、さーの」
聞いてたんでしょ、と寝言内容を聞こうとするラルクを部屋に放り込んで、シエルも最後の特別なアクセサリーをつけて、儀式に挑んだ。
「...皆の者、よく戦ってくれた。形はなくともその心は常に我らと共に。向こうで安らかに眠り、今度は自分の家族のために戦って欲しい。さあ、別れの時間じゃ。」
ぽわあ、と一つ一つ魂が上に上がっていく。
それが全部上がるのを見届け、儀式は終了した。
「さて、紹介が皆にはまだだったな。紹介しよう。此度あの妖刀を破壊することに成功した。その多大な貢献をし、わらわの正式なつがいとして、受け入れたラルクじゃ。」
拍手が場に広がり、皆が暗い顔から一転、祝福モードになる。
「このような場で申し訳ないが、なかなか紹介出来ずにいたからの。」
「えっとよろしくお願いします」
「さあ、亡くなったものの安息はわらわが保証しよう。皆、何か困ったら助け合うことじゃ。もちろんその輪にわらわも忘れてくれるなよ?」
皆解散し、シエルたちも城に戻った。
その時、シエルから、鱗が1枚落ちた。
「...あれ?シエル、鱗が...」
「む?ああ、そろそろ脱皮の時期かの?ありがとうな、ラルク」
シエルがその鱗を回収して、ぐっとその鱗を握りつぶした
「あと少しでいい...もってくれ...」
「シエル?」
「む?なんだ?」
「ううん、なんか難しい顔してたから」
「そうか?」
シエルが何でもない、と笑い飛ばして、お互いに仕事に取り掛かった。
「ラルク、おぬしの手作りクッキーが食べたい」
「うん、今日のおやつクッキーだよ」
「ラルク最近わらわの心を読んでいるかのように行動するな...」
「うーん、なんかわからないけどこうしなきゃって。根拠は無いけど」
「ははは、ちと疲れたわ。ラルクも休憩しようぞ。」
「うん」
その日は、ラルクもシエルに対して何も感じなかった。だが日が経てばそれはだんだん隠せなくなってくる。やがて、シエルがよく咳き込むようになり、側近たちに寝かしつけられていた。
「シエル、お粥食べれそう?」
「すまぬな、食えそうにない。」
「どんどん衰弱してる...。何があったの、シエル。」
「ごほっ、何でも...っ、ないわい。」
「俺に言えない?頼りないから?」
「違う、そうじゃない。」
「ならいって。シエルがこのままだとみんな...」
「違う、違うのじゃ。もはや寿命よ。何年生きていると思っておる...じいよりもわらわは上じゃぞ…」
「っ、戦争で力を使ったから...?」
「本当に寿命なのじゃ。抗ってはならん。自然の摂理じゃ。」
「シエル...」
「ラルクとあった時にはもう既にこの体は、ボロボロじゃった。じゃがの、楽しかった。最後にラルクに出会えて。のう、ラルク。わらわの願いを聞いてくれるか?」
「な...に...?」
「わらわのことは忘れ、人としての幸せを掴め。人の命は儚いが力強く輝いて...」
ぽわ、と光になったシエルが消えた。
「っ、シエル、シエル、やだ。帰ってきてよ...。」
シエルが寝ていた所にラルクは泣いてしがみつくことしかできなかった。
翌日、シエルの追悼式がおこなわれ、多くの民が涙を流した。そして次に即位するために生まれてくる新しい帝王も生まれてくることがなかった。
ふと、シエルの言葉が頭によぎった。王が生まれてくることはある程度コントロールが出来る。そして世界樹は歴代の帝王たちの塊であること。世界樹もまた限られた者しか入ることは出来ない。
ラルクは走り出した。だが何日たってもたどり着くことはない。木をのぼり場所を確認すれば目の前にあるのに。やがてそれを見ていた側近たちがラルクに止めるようにいった。
あの木に近づけるのは帝王だけだと。
シエルからもらった腕輪も既に砕け散っていた。次の帝王が生まれるまで、ラルクが指揮を執ることになった。反対するものはいない。
「おー、おー、やっておるのー。」
姿が見えないが、それは間違いなくシエルの声だった。ラルクがあたりを探し始めるが、どこにも姿はない。ただ声だけが聞こえるのだ。
「シエル、いるなら出てきて!」
「そうだの、ラルクのせいで死ねないのだ。責任とって貰わないとな。」
ぐわん、と空間が歪んで、一匹のドラゴンが出てくる。そのドラゴンは自分の姿を確認し、ラルクのほうにむいた。
「久しぶりじゃの、っていっても1年か。全く、世界樹が仲間に入れてくれなくての。ラルクと約束した、の一点張りじゃよ。ふむ、翼が増えておるな...力も...か。体は新しいの」
「シエル...!!」
ラルクがシエルの前足にしがみついた。
「うぉっ!?ははは今度は最後まで一緒にいてやれそうじゃ。ラルク心配かけたの。」
「本当だよ、おかえりなさい」
「ただいま。」
城に異様な力が現れたと、側近たちが、兵を連れて部屋に飛び込んでくる。
「貴様!!どこから!!」
「どこからも何もここはわらわの城じゃぞ?」
「...は...その声...」
「シエル様...だ」
「シエル様がおかえりになられた...」
うおおおお、と歓声が兵たちから上がり、側近たちはペタリと座り込んだ。
「おかえりなさいませ、女王陛下...」
「ははは、少し体は新しいがの、力の波動は変わらん。よく、持ちこたえてくれた。礼をいうぞ。ラルク後はわらわに...いや、一緒にやってくれるか?」
その言葉にラルクも反応するかわりに、しがみつく力を強めた。
「まいったの...民にどう説明するべきか。今まで死者は蘇った例がない。ま、ありのまま説明するしかないの。ラルクや、ちなみにこの書類間違っておるぞ。これもこれも。」
けらけらと一匹笑いながら、書類に修正をかけていく。シエルが人になって、ラルクの腕に手をかざすと、腕輪が復活した。そして元々付けていたピアスも、またデザインを変え、ドラゴンが宝石に巻きついているもの。
「...ちと、力の使い方が違うな...。強すぎる。なんじゃ?ラルク、わらわに惚れ直したか?」
じっとシエルを見つめていたラルクにシエルが微笑み、チークキスをした。
「やせたな。ほれ、仕事につけ」
「いえ、本日は全員おやすみを頂きます」
「ええ、シエル様が...女王陛下がお戻りになられたのに仕事など手につくはずがありませんわ」
「メイド長、おぬしはいつも気配がないの...」
シエルが帰って来たことにより、国の財産も底をつきそうになっていたが、一ヶ月でシエルは回復させ、国として儲けすぎた、と兵たちや城のもののボーナスの他に各家庭にボーナスの様な援助金を出した。
「やっぱりシエルすごいや」
「ははは、そう褒めるな。根底の問題は解決しておらん。ラルク、おぬしは体の時間を止めてないようだが、そのままにするのか?」
「止めたいんだけど、失敗しちゃうんだ」
「なら教えよう。しかしこれは自然の摂理から外れることだ。ま、それでも、いずれは死ぬんだがの。」
シエルの指導のもと体の時間を止める他にいくつか魔法を教わって、ものにした
ラルクの魔力であれば、と人間が使う最高位の魔法の上を教えたのだ。シエルとて伊達に帝王をやっていないため、実験として自分を差し出した。もちろん威力や感覚が分かれば、いいだけなので打ち消すのだが。
シエルが転生していくつか変わったことがある。能力が上がったのはもちろんなのだが、以前変化で疲労していたがそれがなくなった。
さらに、目の色が不思議と光の角度によって違うのだ。翼の枚数は4つ。尻尾が二つに割れ、赤い羽は虹色になり、鱗の色も光の角度で色がかわり、その硬度も比較できないほどに上がり、そしてその硬度は自分で調整出来る。
シエルが転生して、世界に一気に森や川、自然が増えた。シエルは龍としての能力も持ち合わせていたのだ。このことにより、国の領土が一気に広がった。もちろん人間がそれを阻止しようとするがそれを拒んだのは自然そのものだ。木を伐採しようとすれば酸性の雨がそこにだけ降り斧を溶かした。花を踏もうものなら、そこからつたが伸び、動けなくなる人間もいた。
魔の森、と呼ばれたそこには人間は自己的に入ることはなかった。そのため、ドラゴンが住み着いたのだ。ドラゴンにはとても住みやすい森で、水も美味しいし、木の実も、そこに住む動物たちも色々な種族が住み始め、やがてその種族たちもシエルの下に着きたい、と申し出た。シエルはこころよくそれを受け入れ、国は発展していった。
「シエル様、我ら狼一族はナワバリとする範囲が広い。それはグループ事に。もう少し人間から領地取り返せませんか?」
「ふむ、そうだな、さすがにこれだけの種族が集まると国も小さすぎるか。だが、出来るだけ戦争は避けたい。命を散らすのはどんな理由があれ、したくないからの。しかし、この世界には未開拓地もなければ、そんな廃墟領地もない。ここは一つ、次元をずらし、我らの国とするのはどうだ?もちろんこちらにも来れるようにはする。」
「そんなことが...」
「まーの。ドラゴンを舐めてもらっては困る。ま、やるのはわらわとわらわの夫だがの。」
「シエル様の...。つまり王ですか?」
「そうなるが、実権を握ってるのはわらわだ。ラルクを呼べ」
しばらくして、ラルクが姿をあらわした。
「人間ですよね?」
「ああ、だがこちらに戸籍はある。立派なこの国の住人の1人よ。もちろんドラゴン族は皆が納得しておる。むしろわらわより人気があるぐらいにな。ラルク、こちらに座るといい。」
「失礼します。紹介に預かりましたラルクです。」
「...ほう、その魔力」
狼の王は魔狼と呼ばれている。その力は幻覚などの錯覚系を得意とし、魔法も使うという。
それゆえ、魔力を見ればどのくらいの力を持っているか分かるのだろう。何より狼は鼻がいい。ドラゴン並ではないが。
「ドラゴンの王よ、何故人間を招き入れたのかは聞かん。だが、我々に害を加えるようなら我が直々に喉を噛みちぎる。」
「ふん、その前にお前らを丸のみしてやるわ。ラルクはそもそもそんなことはしない。我が一族の者達が揃ってそれを証明するだろう。そして丸のみする時も一族揃ってな。」
急に態度を変えた狼に対してもシエルもラルクも怯むことはなかった。
「領地の話、我が他の種族にも伝えよう。実行はいつだ?」
「3日後。但しその次元に入れるものと入れないものが出ることだけは心せよ。ま、その分も代償を肩代わり出来るなら別だがの。」
「伝えよう。」
狼が出ていき、シエルがぽん、と人間の姿になって、机に突っ伏した。
「つっかれる...ラルクぅ頭なでておくれ」
「ふふ、はいはい、お疲れ様。」
シエルが人間になる時はだいたい甘えたい時。その回数も日に日に増えていて、自分から言うことも少なくはない。
「にしても次元創造って...初代ドラゴン王ですらできなかった技だよね?」
「それについてはあらかた調べた。龍どもに役目丸投げされたのじゃ。その時力も寄越せって上にいる龍どもの力も根こそぎ取ってきた。龍はその役割上、次元創造が可能なんじゃよ。この次元は無からものは作れぬ。だが、無から創造しなくては自然は食い尽くされ、滅び、枯れる。そこで別次元を作り、そこで育てておる。水も植物も命も。」
「狼の置き土産どうする?」
狼がいた場所に隠されているが、罠魔法があった。
「そのくらいならラルクも取れるだろう。と言うよりわらわとリンクしておる。それゆえわらわの力使えば良い...」
「分かった、じゃあ消しとくね。」
机に突っ伏したまま片手をあげたシエルに苦笑し、ラルクが魔法を書き換え、無効化して、足で踏む。すると、魔法陣が現れて、砕け散った。
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