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思い出
しおりを挟む「気がついたか?」
目を開ければシエルが白い天使のような翼6枚をバサッと広げ、一番上の羽も引きずるぐらいに大きい。そしてその翼の羽もまた光の角度によって薄く色を変える。
「...シエル...?なんとも無い?翼は...?」
「こちらの方が寒い時にラルクを温めてやれるからの。変更した。」
「シエル...」
「なんじゃ?」
「シエルが自分を代償に...」
「なんのことじゃ、まだ寝ぼけておるのか?わらわは日の出を見ようとラルクを連れ出した。そしたらラルクが寝てしまったからの、戻ってきた。」
「でも...」
「ははは、ラルクや、それだけ元気があるなら飛ぶ練習でもするか?」
あくまでもシエルはしらを切るつもりだ。ラルクに戻された記憶が、そう言っていた。
「へ、陛下!?その翼は...!!」
「おお、じい。イメチェンじゃ。」
「は、はあ...。」
「あ、それからじい、ちと付き合え。」
シエルとじいや監修のもと、ご飯を食べたあと、飛ぶ練習が始まった。
「魔法で浮くのとは訳が違う。ほれ筋肉動かせ。」
「わからないよ!」
未だにラルクはぴょんぴょんジャンプしていた。
「いいか、わらわの筋肉の動きを見ていろ」
シエルが人になって、ラルクと同じ状態に翼を生やした。
「ほーれ。」
ぴょん、とシエルは軽く飛んだ。
「ラルク様、まず全部動かそうとしないで、上の翼だけで飛んでみてください。下は難易度高いので...そうですな、肩甲骨を前、後ろと動かしてください。」
「こ、こう?」
「おお、はためいておる。ラルクもっと力を込め、風を地面に叩きつけるんじゃ」
「っえい!!」
僅かではあるが飛んだ。
だが翼を動かすのを止めれば当然落ちる。
「風に風を当てろ!風を蹴って上昇するんじゃ!」
「っ、でき...た...」
シエルが飛んでいた高さまでたどり着いた。
「よしよし、あとは下の羽じゃ。これができると飛行距離も速度も滞空時間も伸びる。あと楽になるぞ。ただそこは例えようがないの...人には尻尾がないからの...って、ラルク、出来ておる...おぬし実は天才か!?」
シエルまでとはいかないが、羽ばたく回数も減ってきている。
「あとは練習あるのみじゃの。じい、礼を言うぞ。下がってよいぞ。」
ぺこりとじいやがお辞儀して城の中に戻った。
「移動はまだ難しいの、さて、もう一度、地面から飛んでみろ。」
それを何度か繰り返すと滞空と飛び立つことはできるようになった。
「...ドラゴンが飛べるようになるまで練習開始から一年と言われておる...早いの。」
だが既に夕暮れで、自分の翼でとんではじめて見る夕日は赤く、沈むまで眺めていた。
「陛下、陛下!!」
「なん…じゃ...ってああああああああ!!!ラルク!今日は舞踏会じゃ!!忘れておった!!!」
「うん、知ってる。 」
「なんで言わぬ!!」
「え、シエルの事だからちゃんと覚えてるだろうなって」
シエルは慌ててラルクを掴んで急降下し、飛びながら部屋に入った。
「シエル様、たいっへんお待ちしておりました」
「すごい嫌味じゃの...。」
「ラルク様はこちらで。」
「うん、分かった。」
メイド長が何人かメイドを連れてドレス合わせをはじめる。
「...うむ、これがいいの。」
「かしこまりました。では。」
メイド長が手を2回叩くとメイドたちが着せに入った。ふわふわした決してうるさくはないが、薄く桃色の入った白を基調としたドレス。それにあわせて、髪型やメイクもして、髪の毛の色を薄く紫色の入った黒髪に変えた。ウィッグなどではないため、自然と栄える。
「さて、ここからはいつものお口調でお話にならないでくださいませ。」
「ああ。分かった。」
別人のようだった。シエルである、と示すものは目。ラルクからのチョーカーも形を変え、ドレスに合わせたアクセサリーになっている。
「女王陛下のおなりです。皆様拍手をお願い致します」
パチパチと舞踏会会場に拍手が湧き、シエルが一礼して、マイクの前にたった。
「皆様、この度我が国主催の舞踏会へお集まりいただいたこと感謝致します。気持ちばかりではありますが料理もご用意させて頂きました。参加してくださっている国々の特産品を使い、シェフが腕によりをかけ、作りましたので御賞味ください。この舞踏会が国々の関係を深める場、そして皆様方がより一層深い絆を深められるよう、精一杯やらせていただきますので、どうぞ、お付き合いください。」
1歩下がって礼をし、ふと下にラルクを見つけたシエルが少しだけ目を細め、微笑み、下がって、各国の王たちの演説を聞き、それぞれに挨拶をし、対応を迫られた。
「シエル様本当にお美しい...。」
「ありがとうございます。ふふっ、毎年言ってくださいますものね。」
舞踏に励むもの、料理を楽しむもの、ワイン片手に談笑をするもの、それぞれの楽しみ方をしていた。ラルクを探したいのをぐっとこらえて、王たちの相手をするシエル。
「(ちっ、こんなやつらの相手よりも早くラルクのところに行きたいわい。)」
内心こう思っていた。
「ごめんください、そろそろお時間ですので。」
シエルが微笑み、王たちから抜けると、下の舞踏会会場へ降りた。
「さて、お次は竜の一族の女王であられるシエル様の祝福の舞をご覧下さい。」
「一緒に踊ってくださる?」
「うん!!」
シエルが人たちから抜き出したのは小さな女の子。この舞は、初参加の子供の成長を願う舞で、途中で初参加の子供たちを全員引っ張り出して、舞うのだ。
子供たちはそれぞれ楽しそうに踊り、それを交代ごうたい、シエルがくるくる回って、子供たちに触れる。
子供たちは嬉しそうにキャッキャッと思いのまま、舞う。シエルはいろんな魔法を駆使して、場を盛り上げる。
シエルがバサッ、と翼を広げ、羽根が舞い、それを子供たちが拾い、残ったものは光となって消える。
それでフィナーレだ。
だが今回はそれで終わらなかった。
「ラルク!!」
「え、うわっ!!!」
「おい、誰だ?あれ」
「知らないわ...」
会場がどよめき、料理を食べようとしていたラルクは苦笑して、シエルの前にかしづいた。
「私と踊ってくださいますか?女王陛下。」
「ふふっ、ええ。」
基本的に一般の者は仮面をしているために、顔もわからないがシエルたちは違う。ドラゴンは鼻が利くのだ。
「...まったく困ったものです。メイド長、あれ用意してくれますか?」
「早急に手配しましょう。」
シエルとラルクが踊り、息がぴったりの2人に会場がしんとしていて、音楽が流れ、2人の踊る音だけが響く。
踊りが終わり、お互いが一礼すると拍手が湧き上がる。
「狐の道化師さん、こちらを」
「これは...?」
「おい、あれは...幻の...」
「マジカルリング...」
「皆様、拍手をお願い致します。」
じいのフォローにより、会場は普段通り戻った。で、テレパシーでじいやからのお叱りがシエルに流れた。
「皆様ご存知の通り、マジカルリングは我が国に伝わる伝統の装飾品でございます。舞踏会で代々ドラゴンの王が渡す時、その者幸せを掴む。今宵マジカルリングをお渡ししましたのは、その言い伝えに則り特に幸せを掴んで欲しい方にお渡ししました。そして、皆様にも幸多きことを祈り、お花をご用意しました。こちらの花を皆様一つお持ち頂き、この下から湧き出る泡に願いとともに乗せてください。そして私から最後となりますが、どうぞ道中お気を付けてお帰りください。」
天井が開き、星空が綺麗に見える。
そして舞踏会会場からはぷく、ぷく、と泡が上に上っていく。その泡の中に花を入れるのだ。
「すごーい!!」
「割れない!濡れない!どうなってるの!?」
はじめて見る子供たちは興味津々で、泡で遊びはじめる。
それが終われば舞踏会は終わりで、王たちから会場を抜けていく。シエルもまたそれに習い、先に抜ける。
他の王たちをお見送りするのだ。お見送りが終わればシエルは瞬間移動で部屋に帰る。
「お疲れ様でした。シエル様。」
「何故わらわが主催者なんじゃー、人間たちだけでやれば良かろうてー。」
「っ、シエル!!」
「ラルク!!」
ラルクがシエルを抱えてくるくる回り出した。
「すごい綺麗だよ!!」
「ラルクもカッコイイし踊りうまかったの!エスコートするつもりがされたわい!」
「舞踏会あるって聞いて、練習してたんだ。」
「そうか!そうか!」
「ラルク様、シエル様、お着替えなされてからになさってください。」
「あー、うん、でもちょっとまって!」
ひょいとラルクがシエルをお姫様抱っこして、魔道カメラで写真をとり、解放した。
「よし!うん、いい感じに撮れてる!」
「まさかのー、わらわがの...。」
「...後にしてくださいと申したはずですが。」
メイド長の脅迫に負け、それぞれの部屋で着替えてメイクを落として、普段通りに髪の毛の色も戻した。アクセサリーに変化していたチョーカーも元通り。メイドたちは全員下がった。
「ふふん、あー、舞踏会久しぶりに楽しめたわい。今頃シャワーかの?ねてるかの?」
楽しそうにラルクが何をしているか想像して、眠りについた。
「おっはよー!!諸君!!!」
「女王陛下、ご機嫌ですね。」
「ふふん、そうだの、そうだの!マジカルリング渡せたからの!」
「マジカルリング...確か帝王が一つしか作れないリングですよね?」
「伝統と言っても帝王だけが一生に一つだけ作り出せるのリングだからの。」
「シエル、このリングどうすればいいの?」
「そうじゃの、ネックレスにして、身につけるのが一般的だな。それは数が少ない上に、王族ですら持てないリング。直接受け取った者以外が触ると災いが降りかかり、最悪死ぬと言われておるの。わらわで5代目だ。だが、リングを渡さなかった王もいる。わらわのそれを含めて3つしか存在しない。お守りじゃ。」
言われた通り、ネックレスにして、首につけた。
「ラルク様、大切になさってください。」
「うん、ありがとうアレン。」
「して、アレン。お前がここにいるということは何か起こったな?」
部隊の総隊長であるアレンは普段謁見の間には姿を見せない。捨て子で、シエルに拾われ、城で育ったため、一番忠誠心が大きい、と有名である。
「はい、シエル様。お察しの通り、昨晩の舞踏会の帰路でシアレンスの王が襲撃を受け、現在捜査をしております。」
「あやつか。あの王は好かん。前に急に接吻を求められたからの。」
「シエルそいつ殺していい?」
「ラルク様落ち着いてください。その後シエル様直々に回し蹴りを食らわせております。王を殺したらまた戦争になります」
「ちっ...」
「まあ気持ちはありがたいが、ラルク、手を出すなよ。して、目処はついたのだろう?」
「ええ、アルシア王が怪しいと睨んでおります。他の国の紋章の鎧を付けておりましたが、アルシア特有の匂いが全員からしました。」
「雇われた可能性は?」
「ないです。アルシア城にある魔水晶の魔力を使った痕跡がありました。城にある魔水晶を使えるのは長年城に仕えるもののみです」
「...どうやら当たりのようじゃの。アレン、良くやった。アルシア昔から血の気が多く、領土を拡大しようとしている。人間同士で近々戦争が起こる。充分気をつけながら偵察を続けろ。いいか、命だけは落とすなよ。」
「御意。」
ばっ、とアレンがいなくなり、場に重い空気が流れるが、シエルの一言で、普段通り仕事に戻した。
「して、ラルクまだ編んでるのか?」
「うん、飛んだり踊ったりで昨日できなかったからね」
「飛ぶ練習も移動が出来ておらんぞ。」
「あ、出来るよ。夜中に練習したのほら。」
編み物をしながら謁見の間を飛び回るラルク。
「...飛びながら編み物ぶつかるぞ」
シエルの言葉通り柱にぶつかった。ゆっくり降下してぺたっと床に座り込んだ。
「ほれ、言わんこっちゃない。ラルク、ちとこちらにこい。」
ラルクがシエルの前に立つとシエルが玉座にある魔水晶から刀を取り出した。
「ラルク、護身用じゃ。持っておけ。刀なら使えるだろう?」
「うん、ありがとう。」
「それから、この城にも奴らが潜り込んでおる。わらわはそいつらを捕らえる。ラルクには本物が捕らわれている場所に行って、解放してやって欲しい。見張りもいるがラルクなら倒せる。何かあればわらわの力をつかえ。良いな?」
「うん」
「ではそこの近くまで転送する。いいか、そこから右に100mのところにあるボロ屋じゃ。」
ラルクが転送され、シエルも捕らえることに動き出した。
ラルクサイド
「シエルが言ってたのここか。一軒だけぽつんてあるもんね...。」
中から笑い声が聞こえる。前に世界樹か貰った杖を使い、地震を起こした。
「な、なんだ!?地震か!?」
「こんなボロ屋じゃ潰れちまう!外に出るぞ!」
「おい!捕らえた奴らどうするんだよ!!」
「奴らはドラゴンだこれが崩れたところで死にゃしねえ!!」
見張りが出てきたところに翼を広げたラルクがいた。
「こんにちは、久しぶりって言った方がいいかな?ふふっ、ま、君たちじゃ分からないか。」
魔道具で見張りが先制攻撃をするが、当たるわけもなくラルクが杖でとん、と地面をつつくと見張りを縛る魔法陣がぐっと締め付けた。
「シエルの事だから殺すな、って言いそう。ま、俺としてはあの国王に仕えるやつ、住んでる人間全員殺したいんだよねえ。」
目から光が消えて、ラルクがにやりと笑えば、抵抗できないように捕らえたやつらの意識を全て飛ばし、城の牢屋に転送した。
ボロ屋に入り、奥の扉を開けると、メイド2人と兵士1人が捕えられていた。
「大丈夫?今外してあげるね。」
「ラルク様...。ありがとうございます。」
シエルサイド
「じい、フレイヤミカーナ、マグナをわらわの部屋に連れてまいれ。」
「お呼びでしょうか?」
「ああ、3人揃ったら、わらわの部屋で少し話をしよう。」
3人揃って、シエルが部屋にいれ、扉をロックした。
「さて、貴様ら覚悟は出来ているな?」
「何のことでしょうか?」
「わらわの鼻が騙せるとでも思ったか?はっ」
シエルが鼻で笑った瞬間、ガガガッと3人が急所を外して壁に張り付けされる。
「ぐっ...。」
「殺してやりたいが、生憎お前らにはまだ利用価値がある。牢屋で寝てろ」
「シエル様!!!」
「お、本物が戻ったわ。おぬしら怪我はないか?」
「はい!ありがとうございます!!」
「ラルク様もありがとうございます!!」
「ラルクも怪我はないな。よし。と言うよりラルク、よく我慢したの、殺しても仕方ないと思っていたが」
「シエルが殺すなって言いそうだったから。」
「ほぅ。アルシアは各国にスパイを送り込んでおる。故に他の国との連合軍とアルシア単体戦争になる。その時大いにやると良い。」
「うん。あ、シエル、食事って用意して貰えるかな?みんなろくに食べてない」
「もちろんじゃよ。ほれ、おぬしら食堂に迎え。メイド長が用意して待っておる。」
3人がお辞儀をして、食堂に向かい、シエルがラルクを撫でた。
「ラルク、良くやってくれた。」
「うん、思い出したんだ、昔ね、師匠が言ってたの。殺すのは簡単。だけど生きてもがいて苦しんで、それで掴んだ幸せは離すなって。だからシエルは離さない。」
「ふふっ、ああ、わらわも離さぬぞ?わらわのはじめてのワガママだからの。」
微笑みあい、キスをして、自分たちも、食堂へと向かった。
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