つわもの -長連龍-

夢酔藤山

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序 能登

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 能登の国人・長一族がはじめて歴史に足跡を記したのは、北面武士を務めた正六位上長谷部宿禰忠連のときだ。忠連の孫にあたる信連より、姓を長氏とあらためた。
 長信連のことは『平家物語』や『吾妻鑑』にも登場する。はじめは後白河法皇に仕えた北面武士であったが、あるとき、大番衆たちがもてあました強盗たちを追跡し、ただ一人で四人を斬り伏せ一人を搦め取る功を為した。その賞として、信連は〈兵衛尉〉の官位を得た。のちに以仁王の侍長に補され三条高倉宮に仕えた。『源平盛衰記』曰く

   高倉宮に仕え奉れる侍に長谷部信連あり、長兵衛尉と称す

と記される。
 治承四年(1180)、以仁王が反平家の行動を起こしたとき、信連は宮を脱出させ、単身で検非違使に立ち向かった。奮戦の末、手疵を負って捕えられた。六波羅に連行された信連は、厳しい尋問にも毅然と臨み、以仁王の行方を黙秘し続けた。
「噂に違わぬ者なり」
 平清盛はその武勇と忠節を賞して、斬刑を免じて獄に下した。そののち木曾義仲や源義経の上洛により平家が都を去り、長信連は獄から釈放された。
 平家が壇ノ浦に滅びると、源頼朝は信連に安芸国の検非違使を補した。この厚遇に感激した信連は、それ以後、頼朝に忠勤を誓い、文治二年(1186)、輝かしき鎌倉御家人となる。その後、頼朝の命により加賀国の謀叛徒を追討し、その武功をもって江沼郡塚谷保を与えられ、重ねて加賀国の検非違使に補されたという。
 そして、建保六年(1218)大屋荘の河原田で没した。

 長氏と能登とのつながりは、このときからのものである。
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