安政ノ音 ANSEI NOTE

夢酔藤山

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第2話 吉原大震災2

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「よっ」
 引手茶屋に顔を出すと、さっそく婆あが、愛想よくすっ飛んできた。
「若旦那さん、いつもお盛んだねえ」
「面白えからな、退屈しねえよ」
「若旦那みたいな人ばかりなら、吉原も窮屈になんないのにね」
「よくわかんねえ。まあ、いいや」
 小馬鹿にした方もされた方も、さらりと受け流すのが粋だ。そういう洒落の通じない二本差しも近ごろは多い。無粋なことだ。金太郎は三浦屋に上がると、さっそく禿や太鼓持ちも呼んで大はしゃぎだ。
「主様のそこぬけな阿呆さには、涙が出るでありんす」
 琴浦も愉快そうだ。このどんちゃん騒ぎは、引け四ツ(午後一〇時)の前には終わり、ふかふかの布団で金太郎は褌に手を伸ばしていた。
 そのときだ。
 身体が、宙に浮いたような心地になった。
 次の瞬間、畳に叩きつけられるような衝撃と、ならず者に蹴り転がされるような心地になった。
「主様は」
 琴浦が慌てて大きな柱にしがみついた。金太郎もしがみついた。そして、ゆうらゆらと、柱に合わせて身体も波打った。
 大門が、音を立てているのが聞こえる。悲鳴も聞こえる。誰かが、閉じている門をこじ開けているのだ。悲鳴が階下に響いた。どの楼からも悲鳴が溢れ、仲見世のどこかがぺしゃんこに押しつぶされる音もした。
「こりゃあ、いかん」
 金太郎は着る物片手に、琴浦の手を引いて、ごった返す階段を掻き分けて表に出ると、ようやく揺れは収まっていた。
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