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春
……萌える情熱(5)
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人の世とは、煌びやかな雅人と、地に寝食し河原に生活の場を求める貧しき民で、それこそ光と影のような相関で成り立っていることを、恥ずかしながら、都に出てきて初めて知ったものです。
だって、小原にいたときは、誰もが少しずつ不自由で、それを互いに支え合って生活してきたのですもの。
だから、わたしは世の中の
「光と影」
を、このときに知りました。
どうせ生きるなら、影よりも〈光〉のなかで生きていきたい。
いつしかわたしは、まばゆさの象徴である光に憧れ、その光の真ん中に佇むことを、心の片隅に切望するようになっていました。
そう望んで、都の水で肌を磨き、どうしたら宮様に愛されるものか。
わたしは、そのことだけを、ずっと考えながら生活しました。
宮様を訊ねるついでに、在原業平さまはわたしの歌を真剣に聞いて下さりました。
「小野の里で詠んでいた歌のほうが、雅であったと思うぞ」
「そうは思いません」
「お子さまだな」
「ひどいお言葉」
「ははは、すまぬ、すまぬ」
しかし、面と向かって呟いたその言葉の意味を、当時のわたしが心に留める筈などありません。だから、誰よりも輝きたいという、破廉恥で邪な野心が、詠む歌たちに散りばめられていたことに気づかなかったのです。
それが辛い仕儀に至る兆しとも知らずに……。
そうです。
あのときそれに気づいていたら……わたしは宮様の目にも、もっと可愛い女として映っていたことでしょう。
「小野の里で詠んでいた歌のほうが、雅であったと思うぞ」
それに気づいていたら……。
ああ、刻は決して戻らないのです。
だって、小原にいたときは、誰もが少しずつ不自由で、それを互いに支え合って生活してきたのですもの。
だから、わたしは世の中の
「光と影」
を、このときに知りました。
どうせ生きるなら、影よりも〈光〉のなかで生きていきたい。
いつしかわたしは、まばゆさの象徴である光に憧れ、その光の真ん中に佇むことを、心の片隅に切望するようになっていました。
そう望んで、都の水で肌を磨き、どうしたら宮様に愛されるものか。
わたしは、そのことだけを、ずっと考えながら生活しました。
宮様を訊ねるついでに、在原業平さまはわたしの歌を真剣に聞いて下さりました。
「小野の里で詠んでいた歌のほうが、雅であったと思うぞ」
「そうは思いません」
「お子さまだな」
「ひどいお言葉」
「ははは、すまぬ、すまぬ」
しかし、面と向かって呟いたその言葉の意味を、当時のわたしが心に留める筈などありません。だから、誰よりも輝きたいという、破廉恥で邪な野心が、詠む歌たちに散りばめられていたことに気づかなかったのです。
それが辛い仕儀に至る兆しとも知らずに……。
そうです。
あのときそれに気づいていたら……わたしは宮様の目にも、もっと可愛い女として映っていたことでしょう。
「小野の里で詠んでいた歌のほうが、雅であったと思うぞ」
それに気づいていたら……。
ああ、刻は決して戻らないのです。
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