小町のひとりごと

夢酔藤山

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……あかね雲の行方(1)

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 宮様が小野へ去ってからのわたしは、歌に没頭しました。
 好きなものを、好きなことで打ち消す、それはいつの時代も、きっと変わらぬ所業なのでしょうね。正直、そうしている間だけが、煩悩を払える刻でもあったのです。
 そうそう、宮様が都を出て間もなく、あのおぞましい良房が死んでしまいましたよ。
 なんでも、世情では、祟りとか云ってますが、あながち嘘ではないと思います。生きている人でさえ、あの良房には、好い想いを向けていないのですもの。そのせいで生命奪われた者にしてみれば、呪っても呪い足りないでしょうね。
 そうそう。
 丁度この年、都では疫病が流行ったのです。あるお屋敷に亡き伴大納言さまの亡霊が立って、行疫流行神に成り果てて怨みを晴らしているのだと、そう語ったらしいのです。良房もその疫病で死んだのだから、伴大納言さまも、さぞや本懐を遂げて、安堵なされていることでしょう。

 わたしの歌は、宮様への想いで支えられています。
 その真意は、到底余人に知ることなど出来ないことでしょう。
 にも関わらず、近頃は多くの男達から
「歌の如く夢のなかに姿を認めたし」
などと恋文などを貰ったりします。
 そりゃあ、人に好意を寄せられて悪い気はしませんよ、わたしとて、女の端くれですもの。さりとてわたしの心は、宮様から解放されることはありません。
 そのような煩悩に呵むわたしが、人の心を受け止められるでしょうか。

  想ひつゝぬれば人のみえつらん
   夢としりせばさめざらましを

 この頃に詠んだ一首は、せめて夢の中だけでも宮様に恋し恋されたい。わたしのささやかな想いが込められております。
 わたしは宮様を想い、とみに夢を詠む作風を得手としておりましたゆえ、云い寄る男どもも、何を誤解するのやら、夢をちらつかせて口説いてきます。
 そのたびに、わたしは気のない意思を明ら様に示します。
 にも関わらず、男達は執拗にわたしを口説くのです。
 本当に、厭になります。
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