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秋
……あかね雲の行方(2)
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父の小野長友は、いい加減、わたしが権力者を婿とするのを望んでいるご様子。わたしは、うんざりです。全く男というものが信じられなくなっておりました。
放っておいて欲しいのです。
放っておいて下されば、わたしは静かに宮様のことも、思い出の中へ封じることが出来るというのに。
そんなわたしの心を、まるで逆撫でするかように、男達は通って参ります。わたしの磨かれた美貌を、肉体を、奏でる声を欲して。
そんな気忙しさから逃れるように、わたしは女官だけを伴い、小野家の所有する山科の別宅に引き籠もるようになりました。
ここは都を遠く離れた洛南の地。
奈良街道を往来する人影さえ疎らな、風光明媚なる鄙びた土地です。あろうことか、小原小野郷と同じ匂いのする処なのです。
これまで頂戴した煩わしき恋文の数々……。
捨てることも憚られたわたしは、それを張り合わせ型とし、わたし自身の煩悩を打ち払う術として、地蔵を造ることにしました。人々がわたしへ寄せる想いも無下に出来ませんから、一緒に供養できたら、どんなに素晴らしいことでしょう。そう思っての、まさに、一大発起でした。
ようやく訪れた心の平安。
独りで心の内を慰める刻。
しかし、そんな日々も、長くは続きませんでした。
わたしを求めて方々を彷徨い歩き、金に糸目をつけずに人を使い、遂に執念実らせこの山科まで追いかけてきた男がいたのです。
深草少将平義宜(たいらのよしのぶ)。
その御方は、平安遷都の功労者・桓武帝の御孫宮にあたり、賜姓平氏という身分でございます。姓を帝から下賜された者は、もはや皇族ではなく、わたしの敬愛する在原業平さまのように、自活の道を探らねばなりません。
ただし、この深草少将平義宜というその御方は、出生だけで扶持の約束された御人でした。
放っておいて欲しいのです。
放っておいて下されば、わたしは静かに宮様のことも、思い出の中へ封じることが出来るというのに。
そんなわたしの心を、まるで逆撫でするかように、男達は通って参ります。わたしの磨かれた美貌を、肉体を、奏でる声を欲して。
そんな気忙しさから逃れるように、わたしは女官だけを伴い、小野家の所有する山科の別宅に引き籠もるようになりました。
ここは都を遠く離れた洛南の地。
奈良街道を往来する人影さえ疎らな、風光明媚なる鄙びた土地です。あろうことか、小原小野郷と同じ匂いのする処なのです。
これまで頂戴した煩わしき恋文の数々……。
捨てることも憚られたわたしは、それを張り合わせ型とし、わたし自身の煩悩を打ち払う術として、地蔵を造ることにしました。人々がわたしへ寄せる想いも無下に出来ませんから、一緒に供養できたら、どんなに素晴らしいことでしょう。そう思っての、まさに、一大発起でした。
ようやく訪れた心の平安。
独りで心の内を慰める刻。
しかし、そんな日々も、長くは続きませんでした。
わたしを求めて方々を彷徨い歩き、金に糸目をつけずに人を使い、遂に執念実らせこの山科まで追いかけてきた男がいたのです。
深草少将平義宜(たいらのよしのぶ)。
その御方は、平安遷都の功労者・桓武帝の御孫宮にあたり、賜姓平氏という身分でございます。姓を帝から下賜された者は、もはや皇族ではなく、わたしの敬愛する在原業平さまのように、自活の道を探らねばなりません。
ただし、この深草少将平義宜というその御方は、出生だけで扶持の約束された御人でした。
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