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秋
……あかね雲の行方(9)
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「ほんに立ち寄っては貰えませなんだか。姉さまが御出になったと聞けば、さぞや小野宮さまもお歓びになりましょう。実は、在原中納言卿が御薨れなされてからというもの、小野宮さまはすっかり気落ちして御元気がないのです。どうでしょうか、見舞いついでに、一首手向けては貰えませんか、小野宮さまを励ましては下さりませんか」
わたしはこの日、在原業平さまの為だけにここまで来たのです。
それに今更、宮様にどんな顔をして会えばよいのでしょう。
ああ……解りません。
会いたいのに、会えないと拒む心の正体。わたしに出来たことは、せめて宮様へと、一首献じるくらいのことでした。
色見えでうつろふものは世の中の
人の心の花にぞありける
この歌はわたしなりの宮様への決別宣言でした。
未練に縛られる限り、わたしは世の中に背を向けて生きてしまう。これからは前を向いて生きていきたい。宮様が自活の道を見つけたように、わたしも、わたしの道を探したいと考えた、そのうえでの歌です。
逃げません。
逃げたりしません。
でも、今は胸を張って御目見えすることが出来ないのです。
だから……。
この日、宮様への一首を託して、妹ともそこで別れました。
しかし、年月が重なる度に、ひそかにこう思うのです。
この再会は、在原業平さまが最後に仕組んでくれた〈きっかけ〉だったのではあるまいか、と。
事実、二度と妹に逢う機会はござりませんでしたし、宮様と接するきっかけも巡ってまいりませんでした。
わたしはこの日、在原業平さまの為だけにここまで来たのです。
それに今更、宮様にどんな顔をして会えばよいのでしょう。
ああ……解りません。
会いたいのに、会えないと拒む心の正体。わたしに出来たことは、せめて宮様へと、一首献じるくらいのことでした。
色見えでうつろふものは世の中の
人の心の花にぞありける
この歌はわたしなりの宮様への決別宣言でした。
未練に縛られる限り、わたしは世の中に背を向けて生きてしまう。これからは前を向いて生きていきたい。宮様が自活の道を見つけたように、わたしも、わたしの道を探したいと考えた、そのうえでの歌です。
逃げません。
逃げたりしません。
でも、今は胸を張って御目見えすることが出来ないのです。
だから……。
この日、宮様への一首を託して、妹ともそこで別れました。
しかし、年月が重なる度に、ひそかにこう思うのです。
この再会は、在原業平さまが最後に仕組んでくれた〈きっかけ〉だったのではあるまいか、と。
事実、二度と妹に逢う機会はござりませんでしたし、宮様と接するきっかけも巡ってまいりませんでした。
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