機人転生 転生したらターミネーターになってしまったんですけど、どなたか人間に戻る方法、知りませんか?

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第一章 これは魔法ですか? いいえ、高度に発達した科学です。

no.002 落下、落下、落下! 前編

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 メカーナの研究用山岳森林区画のひとつ、フォレスト3。
 コウタはそこに墜落、もとい着陸していた。

 ――パラシュート無しの絶体絶命のスカイダイブは、アークから発した不思議なエネルギーバリアにより、~墜落のち爆裂四散そして死~という悲劇は免れた。
 しかし、ろくに立つことも出来ず、うつ伏せのまま大地に感謝の頬擦りをするくらいには、死を感じた。


「ありがとう大地……」


 ――本物の悪アミスがギリギリで出した不思議なバリアのおかげで助かった。
 が、そもそもそのバリアの存在を直前まで言わず、大丈夫ですよとだけ繰り返していたアミスは意地や性格や、そもそも人が悪い。あとついでに多分頭も悪い。
 おそらく悪魔の親戚かなにかだろう。


『いやー、いい雄叫びでしたね!』
「悲鳴ですけど!? な、なんであんなアホみたいなことを……!?」


 怒りで膝の震えを押さえつけながら、コウタはなんとか立ち上がる。押さえつけても膝は相変わらず産まれたての子鹿だが、それでも復讐心により決して倒れない。
 そこには絶対にこのアホ女をとっちめるという、確固たる意思があった。


『あそこを正面から出るのは面倒なんですよ。ほら、コウタさん見た目が……』
「これあなたのせいなんですけど!?」


 ――見た目のせいでこうなったと言うが、そもそもこの見た目になったのはアミスのせいだ。棚上げにも程がある。

 コウタは生まれて初めての殺意を抱いて、頭上で浮いているクリオネもどきを睨みつけた。


『そうカッカしないでください。カッコイイメタルフェイスが台無しですよ?』
「表情筋ないんですけど。アミスさんみたいなアホとマトモに話そうとした僕が悪かったです」
『そうなんですよ、私みたいなアホと……あほ?』
「それで、ここはメカーナって科学大国なんですよね? それにしては文明の気配すらありませんけど」


 辺りの木々を眺めながら、コウタはそう言う。

 ――落ちている間は景色を見る余裕もなく、気付けば見渡す限りの木、木、岩、自然の中にいた。

 ホログラムで隠されているわけではない、ホンモノの自然だ。ここが科学大国ですと言われてもピンと来ない。


『現在地はメカーナのフォレスト3という研究用森林区域ですね。こう見えて砂漠地帯に土壌からなにまで、人の手によって造られたものなんですよ』
「砂漠を……凄いですね。全く砂漠感ないのに。行ったことないけど」


 踏みしめる大地は、素人のコウタからも土壌の豊かさがわかるほどだ。生い茂る草花は瑞々しく、木々は堂々と佇んでいる。すぅとひと息吸えば心地よい空気と土の香りが鼻腔をくすぐってくる。


『街まではそう遠くないはずなので、こっそり街に忍び込んで……その後のことはその時考えましょう。もし捕まっても私はシステムハックくらい出来ますし、コウタさんならたぶん力づくでも脱獄できます』
「つまり成り行きに任せようってことですね」
『そうとも言いますね!』


 元気よく返してきたアミスに、コウタはいっそう不安になる。
 たとえアシストする相手に前科がつこうとも不法であろうと違法であろうと脱法であろうと、どんな手を使ってでも入国させてみせるという確固たる意思だ。
 手助けと言うよりはむしろ、助長や教唆に近い。


『メカーナは科学大国なだけあって、見た目だけはコウタさんと似たような、一般的にオートロイドと呼ばれる人型のマシンはそこら辺にうじゃうじゃいます。木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中、メカを隠すならメカの中なのです。大丈夫です、私に全て任せてください!』


 自信満々にどんと胸を叩いていそうな声音で、アミスはそう言い切った。
 メカーナは科学大国と評されるだけあり、その国内において、警備などの危険な仕事はその殆どが機械化されており、機械依存の懸念がされているほどだ。
 今回はそれを逆に利用してやり、機械化そのものの穴を突く算段だ。
 しかし、コウタにはどうしても払拭できない懸念があった。

  
「……この人に任せるとろくな事にならないって僕の本能が言ってる気がする」


 既に前科二犯、信用なんてものは微塵もなく、コウタが不安になるのも無理はなかった。


『コウタさん、普通に聞こえてますからね?』
「聞かせてるんですよ」
『……そんなに私は頼りないですか? くすんくすん』


 アミスはわざとらしい嘘泣きを披露し、あわよくば同情を買おうとするが、既に彼女を敵と認識しているコウタには効かない。


「そんなに気落ちしないでください。頼りないってよりは信用が出来ないだけです」
『そっちの方がよりショックなんですが!?』
「そういうのは信用にたる行為をしてからほざきやがってください」


 コウタは厳しくそう吐き捨て、続ける。


「ともかく、当面は拠点の確保を目標にして動きます。もちろん合法的な手段を用いて。生身に戻る云々は色々落ち着いてからにします。一億回徳を積むなんて検討もつかないですし」
『そんなに戻りたいものなんですか? 説明したとおり、人間にできるほぼ全てのことができますよ? わざわざ弱くなるなんて……』
「いや、だってどんな無茶させられるかわかりませんし」
『あははははー……そこまでさせませんよ』


 ――初っ端から全裸スカイダイブを喰らわせてきたので、今後も何度か命がいくつあっても足りない展開になる可能性が高い。
 本当になんてことをしてくれたんだこの人は。
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