3 / 30
第一章 これは魔法ですか? いいえ、高度に発達した科学です。
no.002 落下、落下、落下! 前編
しおりを挟むメカーナの研究用山岳森林区画のひとつ、フォレスト3。
コウタはそこに墜落、もとい着陸していた。
――パラシュート無しの絶体絶命のスカイダイブは、アークから発した不思議なエネルギーバリアにより、~墜落のち爆裂四散そして死~という悲劇は免れた。
しかし、ろくに立つことも出来ず、うつ伏せのまま大地に感謝の頬擦りをするくらいには、死を感じた。
「ありがとう大地……」
――本物の悪がギリギリで出した不思議なバリアのおかげで助かった。
が、そもそもそのバリアの存在を直前まで言わず、大丈夫ですよとだけ繰り返していたアミスは意地や性格や、そもそも人が悪い。あとついでに多分頭も悪い。
おそらく悪魔の親戚かなにかだろう。
『いやー、いい雄叫びでしたね!』
「悲鳴ですけど!? な、なんであんなアホみたいなことを……!?」
怒りで膝の震えを押さえつけながら、コウタはなんとか立ち上がる。押さえつけても膝は相変わらず産まれたての子鹿だが、それでも復讐心により決して倒れない。
そこには絶対にこのアホ女をとっちめるという、確固たる意思があった。
『あそこを正面から出るのは面倒なんですよ。ほら、コウタさん見た目が……』
「これあなたのせいなんですけど!?」
――見た目のせいでこうなったと言うが、そもそもこの見た目になったのはアミスのせいだ。棚上げにも程がある。
コウタは生まれて初めての殺意を抱いて、頭上で浮いているクリオネもどきを睨みつけた。
『そうカッカしないでください。カッコイイメタルフェイスが台無しですよ?』
「表情筋ないんですけど。アミスさんみたいなアホとマトモに話そうとした僕が悪かったです」
『そうなんですよ、私みたいなアホと……あほ?』
「それで、ここはメカーナって科学大国なんですよね? それにしては文明の気配すらありませんけど」
辺りの木々を眺めながら、コウタはそう言う。
――落ちている間は景色を見る余裕もなく、気付けば見渡す限りの木、木、岩、自然の中にいた。
ホログラムで隠されているわけではない、ホンモノの自然だ。ここが科学大国ですと言われてもピンと来ない。
『現在地はメカーナのフォレスト3という研究用森林区域ですね。こう見えて砂漠地帯に土壌からなにまで、人の手によって造られたものなんですよ』
「砂漠を……凄いですね。全く砂漠感ないのに。行ったことないけど」
踏みしめる大地は、素人のコウタからも土壌の豊かさがわかるほどだ。生い茂る草花は瑞々しく、木々は堂々と佇んでいる。すぅとひと息吸えば心地よい空気と土の香りが鼻腔をくすぐってくる。
『街まではそう遠くないはずなので、こっそり街に忍び込んで……その後のことはその時考えましょう。もし捕まっても私はシステムハックくらい出来ますし、コウタさんならたぶん力づくでも脱獄できます』
「つまり成り行きに任せようってことですね」
『そうとも言いますね!』
元気よく返してきたアミスに、コウタはいっそう不安になる。
たとえアシストする相手に前科がつこうとも不法であろうと違法であろうと脱法であろうと、どんな手を使ってでも入国させてみせるという確固たる意思だ。
手助けと言うよりはむしろ、助長や教唆に近い。
『メカーナは科学大国なだけあって、見た目だけはコウタさんと似たような、一般的にオートロイドと呼ばれる人型のマシンはそこら辺にうじゃうじゃいます。木を隠すなら森の中、人を隠すなら人の中、メカを隠すならメカの中なのです。大丈夫です、私に全て任せてください!』
自信満々にどんと胸を叩いていそうな声音で、アミスはそう言い切った。
メカーナは科学大国と評されるだけあり、その国内において、警備などの危険な仕事はその殆どが機械化されており、機械依存の懸念がされているほどだ。
今回はそれを逆に利用してやり、機械化そのものの穴を突く算段だ。
しかし、コウタにはどうしても払拭できない懸念があった。
「……この人に任せるとろくな事にならないって僕の本能が言ってる気がする」
既に前科二犯、信用なんてものは微塵もなく、コウタが不安になるのも無理はなかった。
『コウタさん、普通に聞こえてますからね?』
「聞かせてるんですよ」
『……そんなに私は頼りないですか? くすんくすん』
アミスはわざとらしい嘘泣きを披露し、あわよくば同情を買おうとするが、既に彼女を敵と認識しているコウタには効かない。
「そんなに気落ちしないでください。頼りないってよりは信用が出来ないだけです」
『そっちの方がよりショックなんですが!?』
「そういうのは信用にたる行為をしてからほざきやがってください」
コウタは厳しくそう吐き捨て、続ける。
「ともかく、当面は拠点の確保を目標にして動きます。もちろん合法的な手段を用いて。生身に戻る云々は色々落ち着いてからにします。一億回徳を積むなんて検討もつかないですし」
『そんなに戻りたいものなんですか? 説明したとおり、人間にできるほぼ全てのことができますよ? わざわざ弱くなるなんて……』
「いや、だってどんな無茶させられるかわかりませんし」
『あははははー……そこまでさせませんよ』
――初っ端から全裸スカイダイブを喰らわせてきたので、今後も何度か命がいくつあっても足りない展開になる可能性が高い。
本当になんてことをしてくれたんだこの人は。
0
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる