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出会い
第8話
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母は洗濯だろうか?廊下への扉を開いた音がする。
チラッっと後方を確認する。リビングに母はいない。
まるで思春期の男の子がそういうビデオを見るときのようにこっそりとキッチンへ向かう。
こんなにこっそりとキッチンへ向かうのは
ダイエット中だけど夜中こっそりと戸棚のカップ麺を手に取るときくらいだろう。
でも僕はダイエットはしていない。割と普通の体型だ。
自慢ではないがダイエットは必要ない。
ならなぜ僕がキッチンでコソコソしているのか。それは食器を洗うためだ。
「食器を洗うためなら別に悪いことしてる訳じゃないし
なんならお手伝いしてるんだからコソコソする必要ないじゃん」
きっとそう思うことだろう。もちろん悪いことをしている感覚はない。
ただ母に気を遣わせたくないのだ。「ありがとう」と言われて悪い気はしない。
ただ「ごめんね、やってもらっちゃって」と言われるのは好きではない。
家族や親友には本当に悪いことをしたとき以外は基本的に謝ってほしくないのだ。
なぜなら謝らせてしまったという罪悪感が少し心に生まれてしまうからだ。
コソコソしている理由はもう一つ存在する。それは大学のことだ。
僕は今大学三年生で何個も単位を落としている。
大学三年なら数個単位を落としていても不思議じゃないと思うかもしれない。
しかしその想定の数より遥かに落としているのである。
なんの努力もせずバイトもせず遊び
単位を落としているこの現状に両親への莫大な申し訳なさを感じている。
その莫大な申し訳なさを少しでも薄めるため
自分のできる家事は誰の目にも触れないときにすることにしているのである。
こっそりキッチンへ向かいながら考える。
きっと母は、妹や父、僕が出掛けてから、洗濯物を洗濯機に入れて
そのあと部屋の掃除をしてゆっくりしていたのだろう。
そのゆっくりしているときに僕が帰ってきて
そして今、お昼ご飯が終わってから洗濯し終わった洗濯物を
干すために洗面所に向かったのだ。
…あれ待てよ。
そう思った瞬間、ガチャ。扉の開く音が聞こえる。
僕は咄嗟に冷蔵庫を開く。母は洗濯物の入った籠を手に持ちリビングに帰ってきた。
案の定だった。洗濯をし終わったのならもちろん洗濯物を干すだろう。
うちの家には小さいながらも庭がある。よく考えたら洗濯物を干す場所は庭だ。
母は一度リビングに帰ってくるのは当たり前のことだった。
思い出して良かった。そう思った。
母はキッチンを通り過ぎリビングの奥へ進む。ソファーも通り過ぎた。
母は一度床に洗濯物の入った籠を置くと
テレビの横のスレイド式のガラスのドアを右にずらし開く。
洗濯物の入った籠を持ち、洗濯物を干すために庭に出た。
僕はその庭に出た母の姿を確認し終えてから、キッチンの流しにあるスポンジを手に取った。
音をあまり出したくないため
水の出し方はシャワータイプではなく太い一本が出るタイプにする。
スポンジを濡らし、食器用洗剤を少し垂らす。
泡立てるようにスポンジを揉むと白く細かな泡が立つ。
まず母と僕、二人分の箸をまとめて洗う。
箸についた泡を洗い流すと水切りラックに立てる。
次に自分のどんぶりを手に取る。
汚れを浮かすために入れておいた水を流し、縁からスポンジを当て洗っていく。
チラッっと庭の方を確認する。
父、母、妹、僕、4人分の洗濯物なため、少ないということはない。
ここ、キッチンから見ても、まだ籠に洗濯物が入っているのが分かった。
庭の洗濯物を干す棒に裸のハンガーがいくつか並んでいる。
その裸のハンガーがある端のほうにTシャツやYシャツがかけられているのが確認できた。
母は空を見ていた。天気の確認だろうか。朝のニュースで
「今日は一日春らしい気温になりそうです」
と言っていたし僕たちのこの家のある地域に雨マークは出ていなかったはずだ。
妹は早めに家を出たが父、母、僕の3人は割とゆっくりとテレビを見ていた。
なので母も本日の天気に雨マークがなかったことは確認しているはずである。
確認したからこそ、洗濯をしたのだろう。
ではなにを見ているのだろう。
まさか…UFO?とかそんなことを思いながらも手を動かす。
自分のどんぶりの泡を洗い流し、水切りラックにどんぶりを置く。
少しスポンジの泡が少なくなってきたため
少し水を垂らし泡を立て直す。
母のどんぶりにも水が入っていたため、まずその水を流し、洗い始める。
きっと母は「春らしい気温」を感じているのだろう。
先程の光景に自分なりの考察を加えその物語を閉じた。
もうそろそろ母のどんぶりも洗い終わるなと思いしっかりと底まで洗う。
泡を洗い流せば終わりなのだが
スポンジに入り込んだ洗剤もしっかりと落としたいため
母のどんぶりに水をためその水の中でスポンジを揉む。それを数回行った。
しっかりと水を絞ったスポンジをスポンジ置きの元の位置に戻す。
最後に母のどんぶりについた泡を洗い流し、水切りラックにどんぶりをおいて洗い物を終えた。
チラッっと後方を確認する。リビングに母はいない。
まるで思春期の男の子がそういうビデオを見るときのようにこっそりとキッチンへ向かう。
こんなにこっそりとキッチンへ向かうのは
ダイエット中だけど夜中こっそりと戸棚のカップ麺を手に取るときくらいだろう。
でも僕はダイエットはしていない。割と普通の体型だ。
自慢ではないがダイエットは必要ない。
ならなぜ僕がキッチンでコソコソしているのか。それは食器を洗うためだ。
「食器を洗うためなら別に悪いことしてる訳じゃないし
なんならお手伝いしてるんだからコソコソする必要ないじゃん」
きっとそう思うことだろう。もちろん悪いことをしている感覚はない。
ただ母に気を遣わせたくないのだ。「ありがとう」と言われて悪い気はしない。
ただ「ごめんね、やってもらっちゃって」と言われるのは好きではない。
家族や親友には本当に悪いことをしたとき以外は基本的に謝ってほしくないのだ。
なぜなら謝らせてしまったという罪悪感が少し心に生まれてしまうからだ。
コソコソしている理由はもう一つ存在する。それは大学のことだ。
僕は今大学三年生で何個も単位を落としている。
大学三年なら数個単位を落としていても不思議じゃないと思うかもしれない。
しかしその想定の数より遥かに落としているのである。
なんの努力もせずバイトもせず遊び
単位を落としているこの現状に両親への莫大な申し訳なさを感じている。
その莫大な申し訳なさを少しでも薄めるため
自分のできる家事は誰の目にも触れないときにすることにしているのである。
こっそりキッチンへ向かいながら考える。
きっと母は、妹や父、僕が出掛けてから、洗濯物を洗濯機に入れて
そのあと部屋の掃除をしてゆっくりしていたのだろう。
そのゆっくりしているときに僕が帰ってきて
そして今、お昼ご飯が終わってから洗濯し終わった洗濯物を
干すために洗面所に向かったのだ。
…あれ待てよ。
そう思った瞬間、ガチャ。扉の開く音が聞こえる。
僕は咄嗟に冷蔵庫を開く。母は洗濯物の入った籠を手に持ちリビングに帰ってきた。
案の定だった。洗濯をし終わったのならもちろん洗濯物を干すだろう。
うちの家には小さいながらも庭がある。よく考えたら洗濯物を干す場所は庭だ。
母は一度リビングに帰ってくるのは当たり前のことだった。
思い出して良かった。そう思った。
母はキッチンを通り過ぎリビングの奥へ進む。ソファーも通り過ぎた。
母は一度床に洗濯物の入った籠を置くと
テレビの横のスレイド式のガラスのドアを右にずらし開く。
洗濯物の入った籠を持ち、洗濯物を干すために庭に出た。
僕はその庭に出た母の姿を確認し終えてから、キッチンの流しにあるスポンジを手に取った。
音をあまり出したくないため
水の出し方はシャワータイプではなく太い一本が出るタイプにする。
スポンジを濡らし、食器用洗剤を少し垂らす。
泡立てるようにスポンジを揉むと白く細かな泡が立つ。
まず母と僕、二人分の箸をまとめて洗う。
箸についた泡を洗い流すと水切りラックに立てる。
次に自分のどんぶりを手に取る。
汚れを浮かすために入れておいた水を流し、縁からスポンジを当て洗っていく。
チラッっと庭の方を確認する。
父、母、妹、僕、4人分の洗濯物なため、少ないということはない。
ここ、キッチンから見ても、まだ籠に洗濯物が入っているのが分かった。
庭の洗濯物を干す棒に裸のハンガーがいくつか並んでいる。
その裸のハンガーがある端のほうにTシャツやYシャツがかけられているのが確認できた。
母は空を見ていた。天気の確認だろうか。朝のニュースで
「今日は一日春らしい気温になりそうです」
と言っていたし僕たちのこの家のある地域に雨マークは出ていなかったはずだ。
妹は早めに家を出たが父、母、僕の3人は割とゆっくりとテレビを見ていた。
なので母も本日の天気に雨マークがなかったことは確認しているはずである。
確認したからこそ、洗濯をしたのだろう。
ではなにを見ているのだろう。
まさか…UFO?とかそんなことを思いながらも手を動かす。
自分のどんぶりの泡を洗い流し、水切りラックにどんぶりを置く。
少しスポンジの泡が少なくなってきたため
少し水を垂らし泡を立て直す。
母のどんぶりにも水が入っていたため、まずその水を流し、洗い始める。
きっと母は「春らしい気温」を感じているのだろう。
先程の光景に自分なりの考察を加えその物語を閉じた。
もうそろそろ母のどんぶりも洗い終わるなと思いしっかりと底まで洗う。
泡を洗い流せば終わりなのだが
スポンジに入り込んだ洗剤もしっかりと落としたいため
母のどんぶりに水をためその水の中でスポンジを揉む。それを数回行った。
しっかりと水を絞ったスポンジをスポンジ置きの元の位置に戻す。
最後に母のどんぶりについた泡を洗い流し、水切りラックにどんぶりをおいて洗い物を終えた。
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