猫舌ということ。

結愛

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動き

第65話

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「いやぁ~満足ですね」
「量の調整できるお店で良かったですよね」
「たしかに。25%とかもあったし、いろんな種類を食べることもできるんでしょうね」
「なるほどなるほど」
「お次はどこへ行きましょうか」
「あぁ~決めてなかった」
そう言いながらスマホを操作する妃馬さん。
僕もスマホをいじろうと思い、ポケットに手を伸ばすがやめて、何気なく空を見上げる。
道を挟んで向かいの建物とドアから2階、3階と視線を上げる。綺麗な空が目に入る。
青でもなく水色でもなく、空色というのが適切だと思うほど表現しようのない色。
そこに少しの雲。綿菓子というよりは
綿菓子機の丸い棒を入れて回すところにピロピロと出ている
これから綿菓子になる繊維のような柔らかさがあった。
隣では妃馬さんが「えぇ~と」と言いながらスマホを操作している。鼻から息を吸う。
まだパスタ屋さんの前なので文字通り美味しい空気が肺を満たす。
「じゃあ、ここ行きます」
とスマホの画面を見せる妃馬さん。
「えっとぉ~どこだここ」
2人で迷いながら、たまに立ち止まり妃馬さんがスマホで確認し、そのお店に辿り着く。
妃馬さんのスマホで見た通り、綺麗な内装のお店だった。
白ベースに装飾が淡いピンク。
基本的にお嬢様ファッションのアイテムが置いてあるお店だった。
姫冬ちゃんに似合いそうなアイテムは数点あった。
しかし値札の額を見て、目を丸くし2人で顔を見合わせた。
そっと元の位置に服を戻し、そっとお店を後にした。
「結局最初のとこが1番良かったかなぁ~」
「あぁあの2つですか」
「はい。値段も良心的だし、デザインも可愛かったし」
「じゃあ…」
行きますかと言いかけてやめる。
「あ、ちょっとトイレ行ってきても?」
と聞く。
「あ、じゃあ私も行ってくるので、ここで待ち合わせにしましょう」
「はい。じゃ、また」
と言いトイレに入る。しかし目的はトイレではなかった。

念のため手を洗いトイレを出る。待ち合わせのエスカレーター付近に妃馬さんはいなかった。
エスカレーターの側面のガラス部分に寄りかかり、スマホをいじる。
エスカレーターの動く音。エスカレーターを歩く人の足音。
人の動く音。フロアを歩く足音。様々な音が聞こえる。
スマホでホーム画面を眺めていたが、スマホから顔を上げ、辺りを見回す。
メガネ店や服屋さんなどが立ち並び
扉が1つだけ、1台だけのエレベーターが端にあった。
そんな辺りを観察するように見回しているとトイレのほうから足音が聞こえてきた。
足音のほうに視線を移すと妃馬さんが歩いてきた。
「お待たせしました」
「いえいえ。じゃ、最初のお店行きますか」
「はい」
と言いエスカレーターに乗り、1階まで下がる。
いろいろなお店が入っているそのビルを出て、駅の方向に歩く。
3時過ぎても人通りはさほど変わりなかった。
最初の服屋さんに戻り、僕はレジに向かって歩く。
「あのぉ~」
と少し小声で申し訳なさそうに店員さん声をかける。
「あ、はい!いらっしゃいませぇ~」
と元気な女性の店員さんに
「あ、先程お電話させていただいた暑ノ井なんですけどぉ~」
とまた申し訳なさそうに言うと
「あぁ!はい!今お持ちしますねぇ~」
と言いながら裏に入る店員さん。少しして、ハンガーにかかった2着の服を持ってきてくれた。
「こちらでよろしかったですかね?」
と僕に手渡してくれる。
「あぁ、これですこれです!ありがとうございます」
と言い受け取り妃馬さんの元へ行く。
「妃馬さん。これ」
と妃馬さんに渡す。
「あ、これ」
受け取りながら、半分嬉しそうな半分驚いたような顔をする。
「さっき電話で取り置いといてもらいました」

「はい。じゃ、また」
と言いトイレに入る。しかし目的はトイレではなかった。
小便器のほうへは行かず、洗面台の前でポケットからスマホを取り出す。
最初のお店を検索し、ホームページで電話番号を調べる。
そしてそのお店に電話をかけた。電話の向こうで呼び出し音が鳴る。4コール目ほどで
「はい、こちら3 o’clock snacks大吉祥寺駅前店です」
「あ、もしもしぃ~」
ともしかしたら女子トイレまで聞こえるかもしれないと思い
いつも話すときのボリュームより少し抑えて話す。
「はい。もしもしぃ~」
「あのお伺いしたいのですが」
「はいぃ~なんでしょうかぁ~」
「あのぉ~胸元にリボンのようなものがあしらってあって袖が膨らんでいる服と
肩の辺りにレース?みたいなのがついた服ってまだ売れてませんか?
すいません。説明がへたで」
「あ、いえ。ちょぉーっと確認して参りますので
少々お待ちいただいてもよろしいですか?」
「あ、はい。もちろんです。お手数おかけいたします」
店員さんがそう言い残し、電話の向こうが保留音に変わる。
1、2分ほどすると保留音がブツンと切れ
「お待たせ致しましたぁ~」
と電話先に店員さんが帰ってきた。
「あぁいえ」
「恐らくお客様がおっしゃられていた服はまだありました」
「あのぉ~そのどちらかを買おうと思っているので
2つとも取り置いていただくことってできますか?」
「あ、はい。お取り置きですね。いつ頃ご来店されるご予定でしょうか?」
「あ、今日の午前に伺いまして。今からもう一度伺おうかなって」
「あ、そうだったんですね。ありがとうございます。
お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「あ、暑ノ井です」
「はい。暑ノ井様ですね。ではお取り置きしておきますので
ご来店の際は従業員に一言おかけください」
「はい。ありがとうございます」
「いえ。それではご来店お待ちしております」
「ありがとうございます。失礼しまーす」
「失礼しまーす」
という会話を交わし電話を切る。念のため手を洗いトイレを出る。

「いつの間に」
とまた半分嬉しそうな、半分驚いたような顔をこちらに向ける。
「いつの間にしてました」
と微笑みかける。妃馬さんは僕の顔を見ると
「あぁーどっちにしよーかなー」
と妃馬さんは2着の服を掲げて悩む。2着の服で妃馬さんの顔が見えなくなる。
どちらも白の服なので決め手はデザインになる。
コーディネート次第では、どちらも大人っぽく見えると思うが…。なんて考えていると
「こっちにします」
と肩の辺りにフレア状のデザインがあしらってある服を残し
もう片方の服をハンガーラックに戻した。
「妃馬さんが選んだんだから間違いないですね。じゃあ僕そこで待ってます」
とお店を出たすぐのところを指指す。
「はい。じゃあ買ってきます」
レジのほうへ歩いていく妃馬さんを見てから、お店を出てすぐの壁にもたれかかる。
スマホを取り出し、意味がわかると怖い話を読む。
高校時代から読んでいるので大体の話はすぐにわかった。
2話解いて3話目を読んでいるときに
「ありがとうございましたぁ~」
と言う店員さんの声が聞こえたと思ったら
「お待たせしましたぁ~」
と紙袋を手にした妃馬さんが現れた。
「いえ、じゃっあぁ~…」
帰りますかと言おうとして言葉を飲み込む。この後どうしようかを考える。
「どうしましょう」
と妃馬さんが口を開く。そんな妃馬さんに釣られて
「どうしましょうね」
と2人で悩む。スマホで時間を確認する。3時43分。なんとも言えない時間だった。
「なんとも言えない時間ですね。帰るには…あれだし。ねぇ?」
と妃馬さんに聞くと
「ど う し ま しょう」
とまたも2人で悩む。
「とりあえず移動しますか。井の蛙公園行きます?」
「あ!いいですね。お散歩しましょう」
そして僕と妃馬さんは井の蛙公園に向かい歩き出した。
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