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再会
第86話
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それは中学生のとき、当時の彼女と下校しているときの会話。
「萌佳は部活いいの?」
「いいのー。一緒に帰りたかったし」
僕の腕に抱きつく彼女。
「あ!そういえばね、私の友達にレンちゃんって子がいるんだけど
その子吹奏楽部なんだけどね、苗字がオトナシっていうの。
で漢字がね、音色の「音」に成就の「成」って書いて「音成」なの!すごくない!?
吹奏楽にめちゃくちゃピッタリじゃん!って」
「あぁ!」
つい大きな声が出て、周りを見回し、申し訳なさから肩を窄める。
「あ?吹奏楽部の音成さん?」
今度は普段の話し声より少し抑えた声でそう聞く。
すると音成さんは目を丸くして驚いたような、嬉しいような表情を浮かべ、コクコク頷く。
「あぁ、あぁ~…」
元カノの名前を言いそうになるが妃馬さんを見て口が止まる。
「あぁ~友達が名前言ってて、特徴的だったので思い出しました」
と言うと
「ありがとうございます」
と一瞬嬉しそうな顔を浮かべた後
「まぁ特徴的だったなら、すぐ思い出してほしかったですけど」
と言われ、また肩を窄める。
「特徴的ってどう特徴的で思い出したんですか?」
妃馬さんが僕に聞く。
「あぁ、えっと音成さん、吹奏楽部で、で名前が「音」を「成す」って書いて
「音成」って吹奏楽部にピッタリの名前だよねって話で」
「あぁなるほど!」
「ちなみに母は「静かな」「歌」って書いて「静歌」で
オーケストラでファゴットっていう楽器やってます」
「スゲー」
「すごーい」
妃馬さんとハモった。そんな話をしていると車内にアナウンスが流れ
いつの間に次が妃馬さんと音成さんの降りる駅だった。
僕、妃馬さん、音成さんは降りる準備をし、扉の前に移動する。
次第に電車の速度が落ち、止まり、扉が開く。
時間も時間なだけあり、ホームで電車に乗るのを待っている人は少なかった。
妃馬さん、音成さん、僕の順番で降り、その順番のまま改札を通って外に出る。
もう覚えてしまった妃馬さんの家までの道を
妃馬さんと音成さんが並び、その1、2歩後を僕が歩いてついていく。
「そういえばレンちゃんと怜夢さん、1回も同じクラスになったことがないとか?」
「うん。ですよね?」
「あぁ~たぶん?僕割とクラスみんなと仲良かったと思うので
一緒のクラスだったら覚えてるはず」
「私もカースト上位の暑ノ井くんがクラスにいたら目立ってただろうし」
「え!?あぁ!やっぱり怜夢さんて人気だったんですか!?」
妃馬さんが驚きの声と共に入ってきた。
「いえ、そんなことは」
「はい。人気でしたね」
音成さんと同時に喋る。
「どっちですか」
そう聞く妃馬さんに
「人気じゃなかったです」
「人気でした」
また同時に話す。
「ん~…。怜夢さんは自分のことだから否定すると思うので
客観的意見としてレンちゃんから聞きます」
「そんなぁ~」
マンガのようなオチがつく。しかしオチがついても話は続く。
「暑ノ井くんはこう、クールな感じだけど話してみると優しいし
すごく気遣いできる人って有名で
なにか探してたら十中八九探してたものをスッって渡してくれるしで
私のクラスとか、私の友達でも隠れファンはいましたよ」
初めて聞いた。
まぁたぶん盛ってるだろうけど。そう思い半分嬉しく、半分苦笑いで聞いていた。
「へぇ~随分と人気だったようで」
妃馬さんが振り返り僕に視線を送る。その表情は不貞腐れた子供のように
不満を持つ子供のように軽く頬を膨らませ、目を細めていた。
僕の心臓がドクンッっと跳ねた。
それをキッカケに、思い出したように鼓動が大きくなった。
「あ、いえ…いえいえ全然全然!音成さんの話もたぶん嘘ですよ!」
妃馬さんが音成さんを見る。音成さんは無言で首を横に振る。
また妃馬さんの視線が僕に戻ってくる。
「あぁ…だって聞いたことないし」
「そりゃ隠れファンなんだから知るわけないでしょ」
音成さんに論破される。
「…あぁ!でも匠のほうが人気だったよ!でしょ!?」
音成さんに話を振る。
「小野田くんはぁ~…たしかにすごかったですね」
「あの端正な顔立ちだから、さぞかしファン多かっただろうな」
「それに優しいし、考えが大人だし
元気で明るい面も静かで大人しい面もありましたし」
匠が大人?少し笑いそうになる。それにしても随分語るな。そう思い、音成さんを見る。
なぜか匠の話をしている音成さんはいつもより明るい表情になっている気がした。
「あ!そうだ!レンちゃん卒業アルバムある?」
「ん?あるけど」
嫌な予感しかしなかった。
「今度さ、見せてよ」
案の定すぎた。
「音成さん!ダメっすよ」
「レンちゃん!みーせーてー」
僕と妃馬さんに視線を送り、音成さんが妃馬さんの右手首を掴み、右腕をバッっと挙げ
「さきちゃんの勝ちー」
と言い放った。
「やったぁ~さすがレンちゃん!大好きぃ~」
酔っ払っているようなテンションで音成さんに抱きつく妃馬さん。
これが女子ノリというやつか。と体感する。
そんなこんなをしているといつの間にか、いつもの曲がり角に来ていて
その曲がり角を曲がると根津家が入っているマンションが見えた。
相変わらずエントランスは煌々と照らせれていた。
「あ、え。ほんとに道同じなんですね」
2人に投げかける。
「そうなんですよ。
だから高校の頃とか中学の頃とか会ってたかもねぇ~って話したり。ねぇ~?」
「ねぇ~?」
女子ノリが続く。
「たしかに」
「そのお陰か、初めて会ったその日に仲良くなれました」
「あぁ、あれ初日だったっけ?」
「そうだよ~。で、そっから2ヶ月くらい後にフィンちゃんを紹介したんだよ」
「あぁ~フィンちゃんはビックリしたね。
意味わかんないくらい美人だったから気絶するかと思った」
「ん?音成さんって森本さんのこと知らなかったんでしたっけ?」
「ですよー。レンちゃんともの凄く仲良くなったからフィンちゃんを正式に紹介して」
「例のことも?」
「はい!てかフィンちゃんから言ってなかったっけ?」
「うぅ~ん…。たぶん?正直美人すぎて、住む世界違うなぁ~。
仲良くなれないだろうなぁ~って思ってたら、全然気取ってないし
優しいしイメージと全然違くて。
私の好きなゲームもやってたし、おすすめしたマンガも読んでくれて」
「あぁ、僕のイメージとも全然違う。
なんかもっとこう、なんていうのかな?クールなイメージ?目もキリッってしてるし」
「え、暑ノ井くん会ったことあるの?」
「いや、ないけど。音成さん聞いたんじゃないの?あのぉ~…」
「芸能のこと?」
「そうそう」
「聞いたけど?」
「オレめざめのテレビ見てたからさ、イマカラガールで知ってた…ってか覚えてたんよ」
「あぁ~…うちLOCK!派だったから」
と朝の情報番組「LOCK!」の決めポーズをする音成さん。
「あぁ~なるほどね?」
「そうそう」
「まぁ会ったことはないけど、目がキリッってしてたから
クールな感じかなぁ~って。イマカラガールではさすがに元気な感じだったけど」
と話していると根津家の入っているマンションのエントランスを
通り過ぎていることに気がつく。
「あ、過ぎちゃってますよ妃馬さん」
と言うと
「あ、ほんとだ」
と音成さんも振り返る。すると妃馬さんは
「いいんです!レンちゃん家まで送ります!」
とどことなく不機嫌そうな声で言う。頭の上に「?」を浮かべて歩き出す。
音成さんは妃馬さんの右腕を掴み
早足で2、3歩前に出て、左手で口元を隠し、なにかヒソヒソ話をしているようだった。
頭の上にもう1つ「?」が追加される。
ヒソヒソ話を終えると妃馬さんは先程よりは、なにか安心したような
不機嫌さが解消されたように感じた。
「ていうかさきちゃん、暑ノ井くんにも話してたんだね」
「あぁフィンちゃんの芸能のこと?」
「うん」
その後2人は目を合わせてテレパシーを送ったのか、音成さんが
「あぁ~はいはい。なるほど?」
と言った。
「え!マジで!?伝わった?」
驚く妃馬さんに
「んん~たぶん?」
となんともいえない表情をする音成さん。
すると妃馬さんが自分の右耳を右手で隠すようにして
クイズの解答を耳打ちするようにして音成さんに耳打ちを促す。またヒソヒソ話をする2人。
「んん~…。まぁ…?大方正解っ!」
「やたー」
音成さんが手を挙げる。2人とも酔っ払っているようなテンションだった。
しばらく他愛もない話をしていると
「ありがとうございます」
と音成さんが立ち止まり言う。
「うん!」
と笑顔の妃馬さん。
「え、あ!ここ!?」
と驚く僕。
「うん。そーだよ」
「え、めっちゃ近いじゃん!」
「だから言ったじゃないですか」
と笑う妃馬さん。
「いや、帰りが同じ方向だとは、聞いてましたけどまさかここまで近いとは」
振り返れば根津家が入っているマンションが見える。
根津家が入ったマンションのエントランスから、おおよそ200メートルほどだろうか。
とにかく近い。
「あ、たしかに、ここまで近いとは言ってなかったか」
「音成さん家ここなんだぁ~」
「6年も同じだったのに忘れたくせに」
「さーせん」
「あ、そうだ。暑ノ井くんのLIME教えてよ」
「あぁ!だね!えぇ~ちょっと待ってねぇ~」
ポケットからスマホを取り出し、ロックを解除し
LIMEのアプリで友達追加のマークをタップする。
「あ、私QR出すから読み取って」
「あいあい」
音成さんが差し出したスマホの画面に映し出されたQRコードを僕のスマホで読み取る。
出てきたアイコンには吹奏楽部やオーケストラでよく見る
黒に銀の金具がついた楽器が写っていてその楽器の背景は夕焼けだった。
追加ボタンをタップする。
「あ、なんだっけこの楽器」
「クラリネットね」
「あぁ、へぇ?あ、これがクラリネットなのね?」
「今の反応知らんかったやん」
そんなやり取りをしながら僕は今追加した音成さんとのトーク画面に行き
とりあえずのフクロウの「よろしく」スタンプを送った。
「はい。追加完了!6年越しのよろしくね」
「たしかに。よろしく」
「じゃまたね~ありがとねぇ~」
「じゃね~!」
「またぁ~」
そう手を振って5階建てのマンションへ帰っていった。
「じゃ、まぁ少しですけど、送ります」
「たしかに。ほんの少しですね」
笑う妃馬さん。
「いやぁ~まさか同級生だったとは」
最後のほうは気付けばタメ口で話せるほど受け入れていたが、思い出すと今でも驚く。
「いや私のほうこそ驚きましたよ」
「いやぁ~なんか奇跡的だな」
その「奇跡」にはいろんな意味が含まれていそうだと自分で言っといて小っ恥ずかしくなる。
「たしかに「奇跡的」」
妃馬さんも噛み締めるように言う。
ほんの少しの沈黙の後、煌々に照らされたマンションのエントランスが見えた。
「マジですぐでしたね」
「ほんと。すぐ着いちゃった」
どこか寂しげな、つまらなそうな表情の妃馬さんに
「同じ中学だったら音成さんが休んだら、プリント届ける役はほぼ確実に妃馬さんですよね」
と言う。すると
「たしかに」
と笑う。なんとなく安心する。
「じゃ、また大学で」
と右手を軽く挙げる。
「はい!また大学で!」
と妃馬さんも右手を軽く挙げる。僕は挙げた右手を握りしめ下ろす。
そして踵を返し、駅までの道を歩き出す。
なんとなく根津家の入っているマンションのエントランスのほうを振り返ってみる。
妃馬さんが斜め上を見ていた。すると僕の視線に気づき笑顔で手を振ってくれた。
なぜだか心臓が跳ねる。僕も手を振り返す。振り返り、また駅への道を歩き出す。
陽は落ち、今日の夜は割と涼しい。なのになぜか顔が熱を帯びたように熱かった。
角を曲がり、立ち止まる。バッグからイヤホンを取り出し
ポケットからスマホを出し、スマホにイヤホンを接続し耳に入れ
スマホで音楽アプリを起動し、「お気に入り」のプレイリストをシャッフル再生し
また駅への道を歩き出す。駅につき、電車に乗り、自分の家の最寄り駅で降りる。
家までの道のりを歩き、何事もなく家に帰る。
扉を開け、家族の「おかえり」が聞こえ、僕も「ただいま」と返す。
手を洗い、うがいを済ませ、自分の部屋に荷物を置き、部屋着に着替え
今日着たTシャツと靴下を丸めて洗面所の洗濯籠に入れる。
今日は父も帰ってきており、家族全員で夜ご飯を食べる。
夕食後もしばらく家族全員リビングで寛ぎ
それぞれのタイミングでお風呂に入って、それぞれのタイミングで部屋に帰っていった。
僕も部屋に帰り、今日も今日とて鹿島と実況を撮る。
3時まで実況を撮り、その日は編集をせず眠りについた。
「萌佳は部活いいの?」
「いいのー。一緒に帰りたかったし」
僕の腕に抱きつく彼女。
「あ!そういえばね、私の友達にレンちゃんって子がいるんだけど
その子吹奏楽部なんだけどね、苗字がオトナシっていうの。
で漢字がね、音色の「音」に成就の「成」って書いて「音成」なの!すごくない!?
吹奏楽にめちゃくちゃピッタリじゃん!って」
「あぁ!」
つい大きな声が出て、周りを見回し、申し訳なさから肩を窄める。
「あ?吹奏楽部の音成さん?」
今度は普段の話し声より少し抑えた声でそう聞く。
すると音成さんは目を丸くして驚いたような、嬉しいような表情を浮かべ、コクコク頷く。
「あぁ、あぁ~…」
元カノの名前を言いそうになるが妃馬さんを見て口が止まる。
「あぁ~友達が名前言ってて、特徴的だったので思い出しました」
と言うと
「ありがとうございます」
と一瞬嬉しそうな顔を浮かべた後
「まぁ特徴的だったなら、すぐ思い出してほしかったですけど」
と言われ、また肩を窄める。
「特徴的ってどう特徴的で思い出したんですか?」
妃馬さんが僕に聞く。
「あぁ、えっと音成さん、吹奏楽部で、で名前が「音」を「成す」って書いて
「音成」って吹奏楽部にピッタリの名前だよねって話で」
「あぁなるほど!」
「ちなみに母は「静かな」「歌」って書いて「静歌」で
オーケストラでファゴットっていう楽器やってます」
「スゲー」
「すごーい」
妃馬さんとハモった。そんな話をしていると車内にアナウンスが流れ
いつの間に次が妃馬さんと音成さんの降りる駅だった。
僕、妃馬さん、音成さんは降りる準備をし、扉の前に移動する。
次第に電車の速度が落ち、止まり、扉が開く。
時間も時間なだけあり、ホームで電車に乗るのを待っている人は少なかった。
妃馬さん、音成さん、僕の順番で降り、その順番のまま改札を通って外に出る。
もう覚えてしまった妃馬さんの家までの道を
妃馬さんと音成さんが並び、その1、2歩後を僕が歩いてついていく。
「そういえばレンちゃんと怜夢さん、1回も同じクラスになったことがないとか?」
「うん。ですよね?」
「あぁ~たぶん?僕割とクラスみんなと仲良かったと思うので
一緒のクラスだったら覚えてるはず」
「私もカースト上位の暑ノ井くんがクラスにいたら目立ってただろうし」
「え!?あぁ!やっぱり怜夢さんて人気だったんですか!?」
妃馬さんが驚きの声と共に入ってきた。
「いえ、そんなことは」
「はい。人気でしたね」
音成さんと同時に喋る。
「どっちですか」
そう聞く妃馬さんに
「人気じゃなかったです」
「人気でした」
また同時に話す。
「ん~…。怜夢さんは自分のことだから否定すると思うので
客観的意見としてレンちゃんから聞きます」
「そんなぁ~」
マンガのようなオチがつく。しかしオチがついても話は続く。
「暑ノ井くんはこう、クールな感じだけど話してみると優しいし
すごく気遣いできる人って有名で
なにか探してたら十中八九探してたものをスッって渡してくれるしで
私のクラスとか、私の友達でも隠れファンはいましたよ」
初めて聞いた。
まぁたぶん盛ってるだろうけど。そう思い半分嬉しく、半分苦笑いで聞いていた。
「へぇ~随分と人気だったようで」
妃馬さんが振り返り僕に視線を送る。その表情は不貞腐れた子供のように
不満を持つ子供のように軽く頬を膨らませ、目を細めていた。
僕の心臓がドクンッっと跳ねた。
それをキッカケに、思い出したように鼓動が大きくなった。
「あ、いえ…いえいえ全然全然!音成さんの話もたぶん嘘ですよ!」
妃馬さんが音成さんを見る。音成さんは無言で首を横に振る。
また妃馬さんの視線が僕に戻ってくる。
「あぁ…だって聞いたことないし」
「そりゃ隠れファンなんだから知るわけないでしょ」
音成さんに論破される。
「…あぁ!でも匠のほうが人気だったよ!でしょ!?」
音成さんに話を振る。
「小野田くんはぁ~…たしかにすごかったですね」
「あの端正な顔立ちだから、さぞかしファン多かっただろうな」
「それに優しいし、考えが大人だし
元気で明るい面も静かで大人しい面もありましたし」
匠が大人?少し笑いそうになる。それにしても随分語るな。そう思い、音成さんを見る。
なぜか匠の話をしている音成さんはいつもより明るい表情になっている気がした。
「あ!そうだ!レンちゃん卒業アルバムある?」
「ん?あるけど」
嫌な予感しかしなかった。
「今度さ、見せてよ」
案の定すぎた。
「音成さん!ダメっすよ」
「レンちゃん!みーせーてー」
僕と妃馬さんに視線を送り、音成さんが妃馬さんの右手首を掴み、右腕をバッっと挙げ
「さきちゃんの勝ちー」
と言い放った。
「やったぁ~さすがレンちゃん!大好きぃ~」
酔っ払っているようなテンションで音成さんに抱きつく妃馬さん。
これが女子ノリというやつか。と体感する。
そんなこんなをしているといつの間にか、いつもの曲がり角に来ていて
その曲がり角を曲がると根津家が入っているマンションが見えた。
相変わらずエントランスは煌々と照らせれていた。
「あ、え。ほんとに道同じなんですね」
2人に投げかける。
「そうなんですよ。
だから高校の頃とか中学の頃とか会ってたかもねぇ~って話したり。ねぇ~?」
「ねぇ~?」
女子ノリが続く。
「たしかに」
「そのお陰か、初めて会ったその日に仲良くなれました」
「あぁ、あれ初日だったっけ?」
「そうだよ~。で、そっから2ヶ月くらい後にフィンちゃんを紹介したんだよ」
「あぁ~フィンちゃんはビックリしたね。
意味わかんないくらい美人だったから気絶するかと思った」
「ん?音成さんって森本さんのこと知らなかったんでしたっけ?」
「ですよー。レンちゃんともの凄く仲良くなったからフィンちゃんを正式に紹介して」
「例のことも?」
「はい!てかフィンちゃんから言ってなかったっけ?」
「うぅ~ん…。たぶん?正直美人すぎて、住む世界違うなぁ~。
仲良くなれないだろうなぁ~って思ってたら、全然気取ってないし
優しいしイメージと全然違くて。
私の好きなゲームもやってたし、おすすめしたマンガも読んでくれて」
「あぁ、僕のイメージとも全然違う。
なんかもっとこう、なんていうのかな?クールなイメージ?目もキリッってしてるし」
「え、暑ノ井くん会ったことあるの?」
「いや、ないけど。音成さん聞いたんじゃないの?あのぉ~…」
「芸能のこと?」
「そうそう」
「聞いたけど?」
「オレめざめのテレビ見てたからさ、イマカラガールで知ってた…ってか覚えてたんよ」
「あぁ~…うちLOCK!派だったから」
と朝の情報番組「LOCK!」の決めポーズをする音成さん。
「あぁ~なるほどね?」
「そうそう」
「まぁ会ったことはないけど、目がキリッってしてたから
クールな感じかなぁ~って。イマカラガールではさすがに元気な感じだったけど」
と話していると根津家の入っているマンションのエントランスを
通り過ぎていることに気がつく。
「あ、過ぎちゃってますよ妃馬さん」
と言うと
「あ、ほんとだ」
と音成さんも振り返る。すると妃馬さんは
「いいんです!レンちゃん家まで送ります!」
とどことなく不機嫌そうな声で言う。頭の上に「?」を浮かべて歩き出す。
音成さんは妃馬さんの右腕を掴み
早足で2、3歩前に出て、左手で口元を隠し、なにかヒソヒソ話をしているようだった。
頭の上にもう1つ「?」が追加される。
ヒソヒソ話を終えると妃馬さんは先程よりは、なにか安心したような
不機嫌さが解消されたように感じた。
「ていうかさきちゃん、暑ノ井くんにも話してたんだね」
「あぁフィンちゃんの芸能のこと?」
「うん」
その後2人は目を合わせてテレパシーを送ったのか、音成さんが
「あぁ~はいはい。なるほど?」
と言った。
「え!マジで!?伝わった?」
驚く妃馬さんに
「んん~たぶん?」
となんともいえない表情をする音成さん。
すると妃馬さんが自分の右耳を右手で隠すようにして
クイズの解答を耳打ちするようにして音成さんに耳打ちを促す。またヒソヒソ話をする2人。
「んん~…。まぁ…?大方正解っ!」
「やたー」
音成さんが手を挙げる。2人とも酔っ払っているようなテンションだった。
しばらく他愛もない話をしていると
「ありがとうございます」
と音成さんが立ち止まり言う。
「うん!」
と笑顔の妃馬さん。
「え、あ!ここ!?」
と驚く僕。
「うん。そーだよ」
「え、めっちゃ近いじゃん!」
「だから言ったじゃないですか」
と笑う妃馬さん。
「いや、帰りが同じ方向だとは、聞いてましたけどまさかここまで近いとは」
振り返れば根津家が入っているマンションが見える。
根津家が入ったマンションのエントランスから、おおよそ200メートルほどだろうか。
とにかく近い。
「あ、たしかに、ここまで近いとは言ってなかったか」
「音成さん家ここなんだぁ~」
「6年も同じだったのに忘れたくせに」
「さーせん」
「あ、そうだ。暑ノ井くんのLIME教えてよ」
「あぁ!だね!えぇ~ちょっと待ってねぇ~」
ポケットからスマホを取り出し、ロックを解除し
LIMEのアプリで友達追加のマークをタップする。
「あ、私QR出すから読み取って」
「あいあい」
音成さんが差し出したスマホの画面に映し出されたQRコードを僕のスマホで読み取る。
出てきたアイコンには吹奏楽部やオーケストラでよく見る
黒に銀の金具がついた楽器が写っていてその楽器の背景は夕焼けだった。
追加ボタンをタップする。
「あ、なんだっけこの楽器」
「クラリネットね」
「あぁ、へぇ?あ、これがクラリネットなのね?」
「今の反応知らんかったやん」
そんなやり取りをしながら僕は今追加した音成さんとのトーク画面に行き
とりあえずのフクロウの「よろしく」スタンプを送った。
「はい。追加完了!6年越しのよろしくね」
「たしかに。よろしく」
「じゃまたね~ありがとねぇ~」
「じゃね~!」
「またぁ~」
そう手を振って5階建てのマンションへ帰っていった。
「じゃ、まぁ少しですけど、送ります」
「たしかに。ほんの少しですね」
笑う妃馬さん。
「いやぁ~まさか同級生だったとは」
最後のほうは気付けばタメ口で話せるほど受け入れていたが、思い出すと今でも驚く。
「いや私のほうこそ驚きましたよ」
「いやぁ~なんか奇跡的だな」
その「奇跡」にはいろんな意味が含まれていそうだと自分で言っといて小っ恥ずかしくなる。
「たしかに「奇跡的」」
妃馬さんも噛み締めるように言う。
ほんの少しの沈黙の後、煌々に照らされたマンションのエントランスが見えた。
「マジですぐでしたね」
「ほんと。すぐ着いちゃった」
どこか寂しげな、つまらなそうな表情の妃馬さんに
「同じ中学だったら音成さんが休んだら、プリント届ける役はほぼ確実に妃馬さんですよね」
と言う。すると
「たしかに」
と笑う。なんとなく安心する。
「じゃ、また大学で」
と右手を軽く挙げる。
「はい!また大学で!」
と妃馬さんも右手を軽く挙げる。僕は挙げた右手を握りしめ下ろす。
そして踵を返し、駅までの道を歩き出す。
なんとなく根津家の入っているマンションのエントランスのほうを振り返ってみる。
妃馬さんが斜め上を見ていた。すると僕の視線に気づき笑顔で手を振ってくれた。
なぜだか心臓が跳ねる。僕も手を振り返す。振り返り、また駅への道を歩き出す。
陽は落ち、今日の夜は割と涼しい。なのになぜか顔が熱を帯びたように熱かった。
角を曲がり、立ち止まる。バッグからイヤホンを取り出し
ポケットからスマホを出し、スマホにイヤホンを接続し耳に入れ
スマホで音楽アプリを起動し、「お気に入り」のプレイリストをシャッフル再生し
また駅への道を歩き出す。駅につき、電車に乗り、自分の家の最寄り駅で降りる。
家までの道のりを歩き、何事もなく家に帰る。
扉を開け、家族の「おかえり」が聞こえ、僕も「ただいま」と返す。
手を洗い、うがいを済ませ、自分の部屋に荷物を置き、部屋着に着替え
今日着たTシャツと靴下を丸めて洗面所の洗濯籠に入れる。
今日は父も帰ってきており、家族全員で夜ご飯を食べる。
夕食後もしばらく家族全員リビングで寛ぎ
それぞれのタイミングでお風呂に入って、それぞれのタイミングで部屋に帰っていった。
僕も部屋に帰り、今日も今日とて鹿島と実況を撮る。
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※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
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