神眼のシンボロジア【Symbol Logia】

カマゾーマ

文字の大きさ
4 / 8
酒の街「ヘイヨータウン」

ヘイヨータウンの風

しおりを挟む

新しい街――ヘイヨータウンは、これまで天斗と陽が訪れたどの場所とも違っていた。道端に並ぶ古びた建物はどこか懐かしいが、人々の活気がその街に特別な生命力を与えている。酒樽を運ぶ屈強な男たち、通りを笑い声で満たす飲み客たち、そして忙しそうに走り回る子どもたち。その全てが二人を新たな冒険の始まりとして迎え入れているようだった。

「なあ陽、ここって酒の街だろ?あの辺りの建物とか、樽ばっかりじゃないか?」
天斗が目を輝かせながら周囲を見渡す。陽は軽くため息をついて応じた。
「そうみたいだな……けど、酒なんて俺たちには関係ないだろ?」
「いやいや、酒はいいもんらしいぜ!オヤジがよく言ってた!」
「それ、全部記憶喪失になる前の話だろ?」

ー 街の探索とお金の仕組み ー

街を歩き回るうちに、天斗が懐から所持金を取り出した。銀色の硬貨と銅の小さなコインがキラリと光る。
「陽、これで何か買えないかな?」
「おいおい、金の価値も分からないのか?説明してやるからちゃんと覚えとけよ」

陽は天斗の手元のコインを指しながら話し始めた。
「まず、この一番大きいのが1キラ。1キラは10ギラで、1ギラは100ドラに分かれる。」
「ってことは……俺たちの所持金、16ギラあるってことか?」
「正解。だけど無駄遣いするなよ。この旅、どれくらい続くか分からないんだから」
陽が釘を刺すと、天斗は不満げな表情を浮かべたが、すぐに他の店に目を向けた。

ー レンジ酒造とオーブン親子 ー

しばらく街を歩き回った後、二人は立派な看板の前で足を止めた。そこには「レンジ酒造」と書かれている。店の奥からは楽しげな声と酒樽を叩く音が聞こえてきた。

「ここ、ちょっと面白そうじゃないか?」
天斗が興味津々で店の中を覗き込むと、中から威勢の良い声が響いた。

「おい、そこの兄ちゃんたち!さあ、入ってきな!」
笑顔で迎えたのはがっしりとした体格の男、オーブン・レンジだった。その陽気な雰囲気につられ、天斗と陽は店内に足を踏み入れた。

店内は酒樽が並び、木の棚には色とりどりの瓶が並んでいる。天斗は目を輝かせて見渡したが、陽の視線は奥で控えめに座っている少女に向けられた。

「そっちの子は?」
天斗が指さすと、レンジが笑いながら答えた。
「こいつは俺の娘、オーブン・スイレンだ。ちょっと恥ずかしがりだけど、よろしくな!」

スイレンは大きな瞳を伏せ、恥ずかしそうに頭を下げた。長い髪を手で整える仕草に、天斗は興味津々で近づこうとしたが、陽が止めた。

「やめとけ。緊張してるだろ」
「だって、あの目……“酔の目”ってやつだろ?」
スイレンの瞳は淡い紫色で、どこか神秘的な輝きを持っていた。その目には、他人の感情を高揚させる力が宿っていると言われている。

「へえ、それが本物の“酔の目”か!すげえな!」
天斗が興奮している横で、スイレンはますます顔を赤くしてしまった。

「まあまあ、あんまり騒がないでやってくれ。こいつはこう見えて繊細なんだ」
レンジが優しくフォローすると、スイレンは小さな声で「ありがとう」と呟いた。その控えめな仕草に、陽は少し興味を持ったようだった。

ー 質素な宿でのひととき ー

その後、二人はレンジ親子に別れを告げ、街を探索した。夜が近づき、ようやく安い宿を見つけることができた。宿は外観こそボロボロだったが、中は意外に清潔で、温かみのある空間だった。

「ここでいいだろ?値段も4ギラだし、無駄遣いじゃない」
陽がそう言うと、天斗も納得して頷いた。部屋は質素だが、温かい布団と湯気の立つお茶が用意されていた。それだけでも十分にありがたかった。

夜、二人は布団に横になりながら、その日の出来事を振り返った。
「スイレン、あの子さ……何か面白いよな」
天斗が天井を見上げながら言うと、陽も同じように天井を見つめた。
「確かにな。あの控えめな感じ……でも、あの目には本当にすごい力が宿ってるんだろうな」

天斗はニヤリと笑いながら言った。
「次に会ったときは、もう少し話してみたいな!」
陽はそれに答えず、静かに目を閉じた。しかし、その心の中には同じようにスイレンの姿が浮かんでいた。

こうして、ヘイヨータウンでの1日は幕を下ろした。街の温かさとスイレンとの出会いは、二人にとって忘れられないものとなり、次の冒険への期待を膨らませていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...