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酒の街「ヘイヨータウン」
ヘイヨータウンの風
しおりを挟む新しい街――ヘイヨータウンは、これまで天斗と陽が訪れたどの場所とも違っていた。道端に並ぶ古びた建物はどこか懐かしいが、人々の活気がその街に特別な生命力を与えている。酒樽を運ぶ屈強な男たち、通りを笑い声で満たす飲み客たち、そして忙しそうに走り回る子どもたち。その全てが二人を新たな冒険の始まりとして迎え入れているようだった。
「なあ陽、ここって酒の街だろ?あの辺りの建物とか、樽ばっかりじゃないか?」
天斗が目を輝かせながら周囲を見渡す。陽は軽くため息をついて応じた。
「そうみたいだな……けど、酒なんて俺たちには関係ないだろ?」
「いやいや、酒はいいもんらしいぜ!オヤジがよく言ってた!」
「それ、全部記憶喪失になる前の話だろ?」
ー 街の探索とお金の仕組み ー
街を歩き回るうちに、天斗が懐から所持金を取り出した。銀色の硬貨と銅の小さなコインがキラリと光る。
「陽、これで何か買えないかな?」
「おいおい、金の価値も分からないのか?説明してやるからちゃんと覚えとけよ」
陽は天斗の手元のコインを指しながら話し始めた。
「まず、この一番大きいのが1キラ。1キラは10ギラで、1ギラは100ドラに分かれる。」
「ってことは……俺たちの所持金、16ギラあるってことか?」
「正解。だけど無駄遣いするなよ。この旅、どれくらい続くか分からないんだから」
陽が釘を刺すと、天斗は不満げな表情を浮かべたが、すぐに他の店に目を向けた。
ー レンジ酒造とオーブン親子 ー
しばらく街を歩き回った後、二人は立派な看板の前で足を止めた。そこには「レンジ酒造」と書かれている。店の奥からは楽しげな声と酒樽を叩く音が聞こえてきた。
「ここ、ちょっと面白そうじゃないか?」
天斗が興味津々で店の中を覗き込むと、中から威勢の良い声が響いた。
「おい、そこの兄ちゃんたち!さあ、入ってきな!」
笑顔で迎えたのはがっしりとした体格の男、オーブン・レンジだった。その陽気な雰囲気につられ、天斗と陽は店内に足を踏み入れた。
店内は酒樽が並び、木の棚には色とりどりの瓶が並んでいる。天斗は目を輝かせて見渡したが、陽の視線は奥で控えめに座っている少女に向けられた。
「そっちの子は?」
天斗が指さすと、レンジが笑いながら答えた。
「こいつは俺の娘、オーブン・スイレンだ。ちょっと恥ずかしがりだけど、よろしくな!」
スイレンは大きな瞳を伏せ、恥ずかしそうに頭を下げた。長い髪を手で整える仕草に、天斗は興味津々で近づこうとしたが、陽が止めた。
「やめとけ。緊張してるだろ」
「だって、あの目……“酔の目”ってやつだろ?」
スイレンの瞳は淡い紫色で、どこか神秘的な輝きを持っていた。その目には、他人の感情を高揚させる力が宿っていると言われている。
「へえ、それが本物の“酔の目”か!すげえな!」
天斗が興奮している横で、スイレンはますます顔を赤くしてしまった。
「まあまあ、あんまり騒がないでやってくれ。こいつはこう見えて繊細なんだ」
レンジが優しくフォローすると、スイレンは小さな声で「ありがとう」と呟いた。その控えめな仕草に、陽は少し興味を持ったようだった。
ー 質素な宿でのひととき ー
その後、二人はレンジ親子に別れを告げ、街を探索した。夜が近づき、ようやく安い宿を見つけることができた。宿は外観こそボロボロだったが、中は意外に清潔で、温かみのある空間だった。
「ここでいいだろ?値段も4ギラだし、無駄遣いじゃない」
陽がそう言うと、天斗も納得して頷いた。部屋は質素だが、温かい布団と湯気の立つお茶が用意されていた。それだけでも十分にありがたかった。
夜、二人は布団に横になりながら、その日の出来事を振り返った。
「スイレン、あの子さ……何か面白いよな」
天斗が天井を見上げながら言うと、陽も同じように天井を見つめた。
「確かにな。あの控えめな感じ……でも、あの目には本当にすごい力が宿ってるんだろうな」
天斗はニヤリと笑いながら言った。
「次に会ったときは、もう少し話してみたいな!」
陽はそれに答えず、静かに目を閉じた。しかし、その心の中には同じようにスイレンの姿が浮かんでいた。
こうして、ヘイヨータウンでの1日は幕を下ろした。街の温かさとスイレンとの出会いは、二人にとって忘れられないものとなり、次の冒険への期待を膨らませていた。
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